第138話 第五章 『みせてやろう! おしかけ彼女の本気というヤツをな』(3)
向こうから、大学の保安要員が駆けつけてきた。
イスラエル国防軍と協同で最先端技術を扱うような、極めて機密度の高い大学なので保安要員と言ってもイスラエル陸軍が大学に進駐している。
要はプロの軍人だ。
手際よく野次馬の整理にあたりつつ、突撃銃を構えて有無をも言わさぬ雰囲気で俺たちに向かってくる。
おかしな行動をとると、即座に射殺されかねない。
まずい、これは厄介なことになっちまった。
もちろんクレオ達に非は無い・・・まさかイルミナティが、この大学の構内にまで潜入しているとは。
・・・すぐ先の研究室から騒動を聞きつけて、教授も駆け寄ってきた。
◇◇
「で? いきさつを話して頂戴」
俺たち三人は研究室に招かれ、教授を囲んで車座に陣取っていた。
保安要員が迅速に対応したおかげで、いまキャンパスは表向き平静を取り戻している。
駆けつけた時、現場を一目した教授はただちに状況を察し、携帯からどこかに電話をかけ、真剣な表情で何やら話し込んでいた。
十分ほど話し込むと、その場にいる保安要員に何か指示を出した(客員の教授が現地の保安要員に指示を出すこと自体変なのだが)。
まもなく現場は隔離され、野次馬が一か所に集められ何やら指示を受けていた。
おそらく大学から強権を発動して、目撃者たちに箝口令を敷いたのだろう。
どうやら教授は持ち前の闇コネクションで、大学の首脳と直接話して取引をしたらしい。
どんな取引かって?
想像にすぎないけれど・・・イルミナティの死体や遺留品(おそらく現生人類未到達技術の塊!)の一部を提供する代わりに、本件を一切不問とさせた・・・ってカンジだ。
ったく、恐ろしい実力者だ。
さすがにこの大学への短期留学を勝ち取るだけのことはある。
だが、今は感謝しないとな・・・なにせ尋問なんて受けてしまったら、面倒なことこの上ないからだ。
そもそもクレオとセクメトナーメン、さらにイルミナティだなんて、説明したって精神病棟行きに違いない。
「・・・いきさつも何も、今日は予定通り、イルミナティの遺留品の分析結果をお聞きしようと思って来たわけですが」
俺は、たどたどしく説明を始める。
「それは、分かってるわ」
教授はすらりとした足を組み替えながら、先を促す。
「・・・キャンパスに着いて、この棟の廊下を歩いていたところで・・・襲われたんです」
「・・・まさか、それだけなの?」
ちょっと拍子抜けの表情になる教授。
「それだけです・・・だから、俺達もなぜやつらがここにいるのか・・・ましてやここに誘い込むような事前の接触があったか・・・とか・・・まったく心当たりが無くて」
「教授、ハチの言うとおりなのだ。我らもさすがにここはセーフゾーンと思っていたのだが・・・奴らはすでに浸透していた。これは紛れもない事実なのだ」
みかねて隣のクレオが、補足してくれる。
すると、教授は溜息をつきながら、
「ここのセキュリティを突破するって・・・ちょっと半端じゃないわね・・・いい? ここのセキュリティはほとんどイスラエル国防軍並みなのよ」
イスラエル国防軍並み・・・ということは、ことこのジャンルにおいては米軍にも比肩しうるレベルということだ。
そのセキュリティ防壁を完全に突破してしまう奴らは、いったい何者なのか?
俺は、クレオやセクメトナーメンと顔を見合わせながら、相手の技術レベルにちょっと寒気を覚える・・・。
「つまり、イルミナティはここの人間の生体情報を盗み取って、そいつを偽装してなりかわっていたということになるわ。いいこと? 指紋のみならず網膜や虹彩までコピーして再現するなんて、現代の技術ではほぼ不可能なのよ?」
参った・・・という顔をしながら、コーヒーサーバーから俺たちにコーヒーを振舞う。
そして、デスクの巨大なPCディスプレイをこちらに見せる。
「さあ、それじゃ本日のメインイベントに進みましょうか。先日預かった腕の一部と、レーザー兵器と思われる箱の解析結果よ」
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