第133話 第四章 『カノジョ宣言して、なにが悪い!』(51)

「・・・本当なんだ。し、正直言うと、この間のメイクだってあんまり綺麗なもんで、もう動悸がしちゃったくらいだし、俺だけに見せてくれているみたいなのがうれしくて」

「・・・・」

「クレオは、好きでもない男の彼女になってくれているワケだから・・・こんな俺の気持ちの変化を聞かされても・・・迷惑なのは承知している・・・でも」


「迷惑ではない!」

 思わず口を突いてしまった。


 これは・・・妾の本心なのだろうか?

 ハチは真っ赤な顔のまま驚いてこっちを見る。


 あ、あまり見ないでくれ・・・妾もめちゃめちゃ顔が赤いはず。

 だってそうだろう?

 これではまるで・・・そなたに告られているみたいではないか!


「え?」

「・・・迷惑じゃない・・・その、楽しいと言ってくれたのは本心なのだろう?」

「・・・そうだ」


「よかった。妾もうれしい・・・本心だ・・・だから、ちっとも迷惑なんかじゃないんだ・・・」


 そういって満面の笑みを彼に向ける。

 そう、妾も本心だ。

 彼と生活しているのが楽しいのだ。

 ふたりして、真っ赤になって黙りこくってしまった・・・。

 ◇◇

 うーむ。

 冷静に分析してみても、たしかに妾の中で心境に変化が出ている。

 はじめはどちらかというと、『カノジョを演じてあげよう』という気持ちだった・・・。

 だが途中から、どんどん気持ちがのめり込んできている・・・褒められたい、綺麗だと言われたい、美しい自分を見せたい、ハチを喜ばせたい・・・。


 なんだろう?

 やはり恋・・・なのだろうか?

 わからない。


 なにせ妾は、恋をしたことがないから・・・。


 でも、この気持ちの変化を意識してから、一層恋愛に興味を持つようになった。

 恋愛・・・ネットで調べてみる。片っ端から。

 恋愛・・・胸が痛くなる、食欲が落ちる、彼のことばかり考える・・・とか、いっぱい出てくるなぁ。

 ・・・あれ? ヤバイ! みんな当てはまるではないか!

(食欲だけは落ちていないのだが)


 いや・・・まてよ。別にヤバくはないだろう。


 ・・・・

 ・・・こ、これって、世の中的には、やはり『恋』なのかもしれない。


 でもでも!

 本当か?


 いかん! いったん落ち着こう・・・。

 たしかにカノジョに立候補したが(それも無理矢理)、そもそも恩返しがきっかけだったし。

 それに、冷静にハチを恋人として見た場合、研究しかしていない堅物ではないか。

 実際のところ・・・女の扱いにも慣れていないし。

 顔だって人並みで、体格もかなり貧弱だ(古代エジプトではこんな男は役に立たないのだ、なにせ力勝負の世界なので)。

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