第132話 第四章 『カノジョ宣言して、なにが悪い!』(50)

 さてさて、シャワーを終えると、キッチンに入りコーヒーを淹れる。

「クレオ、こっちの洗濯物もう畳んじゃっていい?」

 脱衣場から顔を出して、セクメトがこちらに聞いてくる。

「ああ、そしたら隣のカゴを第二弾で洗濯機回しちゃってくれ。こっちは洗い物を片付けておくから」

「わかったわ」

 このとおり、妾たちもいまやすっかり現代の家事に慣れてきているのだ(えっへん!)。

 そうそう。

 ハチのやつ、最近判明したのだが実はすごい甘党なのだ。

 なので、これも砂糖とミルクをたっぷり入れる。

 う~ん、太らせちゃうかな? ヤバい?


 ハチに差し出すと、パソコンから顔を上げた瞬間の『疲れたぜ~』という表情が、甘々コーヒーの香りを嗅ぎつけ、一瞬にして目が柔和になる。

「お~甘そうだなぁ・・・さんきゅ!」

「礼などいらぬ。たしかに警護を務めてはいるものの・・・実態は居候と同じだ、せめてそなたの役に立たねばな」

 と言うと、ハチは鼻の頭を弄りながら、

「まあ・・・・そうかもしれなけどさ。俺はおまえのこと居候だなんて思ってないぞ?」

 ちょっと意外だった。

「え? そうなのか? でも・・・妾は・・・」

「本当だよ。だって二度も命を救ってくれたじゃないか・・・俺にとってはかけがいのない救世主を居候だなんて思うわけがないだろう!」

「・・・・」

「それに、もうひとつ大事なコトがある」

「?」

「君が彼女になってくれたことだよ・・・はじめは強引に言ってきたから、『おしかけ彼女』って思っていたのは事実で、所詮『本物彼女』ではないと思っていた」

「・・・・」


 これは、ハチの本心だ。

 ちょっとショック。

 でも考えてみれば、仕方のないことなのだな・・・。

 恩着せがましくパートナーを名乗られても、愛が急に芽生えるわけでもない。


 妾の身勝手な発想であった・・・恥ずかしい。

 これでは、ファラオ失格だな。


 だが。

「けど・・・最近さ、会話とか食事とか・・・一緒に過ごす何気ないことが、なんかうれしいんだよ」

「!」


 そうだ、妾も実はそうなんだ!


 なんか顔が熱くなってきたかも。

 ハチも同様で、どんどん俯きだして、なんか耳も赤いような・・・。

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