第55話 第三章 『護衛するのだぞ? 同居生活は当然であろう!』(14)
「クレオ。次は新市街のショッピングモールに行こうか」
「しょっぴんぐもーる?」
「ああ、今の商店の何十倍も品揃えのある巨大店舗だ。そこなら洒落た衣服もあるから、なにか見繕おう」
「そうか!」
クレオも(以外にもそういうオシャレに興味無さそうな)セクメトナーメンも、『洒落た衣服』のところにすかさず反応し、期待に胸を膨らませているようだ。
こういうところは、時代を経ても、まだ俺と同じ年代の女子だよな。
ゆっくり時間をかけて二十分ほど歩くと、旧市街の古く背の低い商店街の景色が変わって、あたかも東京の都心のような新しいビル群が姿を現す。
ここがエルサレムの新市街だ。
さて、女物をどう調達するか。
◇◇
俺は悩んだ末、モールフロアのマネージャーに掛け合って、案内係の女の子をひとり『チャーター』した。
ありていに言えばチップをかなりはずんで(日本には無い習慣だから中東で助かったぜ)、フロアの女の子に付きっきりになってもらい、ふたりの女性用品をすべて選んでもらったのだ。
もちろん衣服から、女性特有の品々まで。
そもそも、化粧品売り場や下着売り場なんて、男の俺は恥ずかしくて立ち入ることも出来ないからな。
・・・・
四時間ほど経った頃、クレオ達が結構な荷物を抱えながら出てきた。
その品々の支払いを終え、マネージャーに礼を言うと、クレカの支払い額を見て思わず溜息をついてしまった。
いや、今月どうやって暮らそう?ってほどじゃないが・・・女の子っていろいろたいへんなんだな。
まあ普段浪費する趣味も無く、給与は貯まる一方だったのが、こんなところで役に立とうとは。
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