第52話 第三章 『護衛するのだぞ? 同居生活は当然であろう!』(11)

 いっぽうのセクメトナーメンは、やや余裕というところだろうか。

 それはそうだ。セクメトナーメンは侍従長、あくまで王族ではない。

 だから日常の身の回りのことは、自分でこなすスキルを持つし、侍女を監督指導する立場だから、むしろ当時の家事のエキスパートのはずなのだ。

 普段から、侍女にすべて・・・そう化粧までしてもらう王族とはワケが違う。

 現にセクメトナーメンは、器具の使い方・現代の食材・調理法を覚えれば、すんなり自炊に進めるだろう。

「このベーコンを炒めるときの油は?」

「あと、このレタス、外側を一皮剝いた後・・・」

「むむむ! 包丁ってこんなに難しいのか・・・これなら戦車操縦のほうが、はるかに簡単だぞ!」

 やってるやってる。

 凛々しい戦闘モードのクレオはホントに美しいが、家事に苦戦しているときは、なんだかかわいらしいし・・・うん、微笑ましい。

 こんな感じで、クレオのほうは一歩一歩ゆっくり前進中・・・といったところか。

 今朝は、サラダとサンドイッチが完成。

 さっそく、三人でいただいている。

 なかなか美味い!

 やればできる子?

 ・・・この調子ならば、近日レパートリーが増えていきそうで楽しみだ。

 なんたって、女の子の手料理だぜ?

 人生初の体験だ・・・感涙モンだぜ・・・。

 たとえ失敗作であっても、全部いただきますとも!

 俺は、イルミナティに狙われている緊迫感もそっちのけで、そんな能天気なことを思っている。

 どうやら、クレオに救われて以来、襲撃が一度も無いので緊張感が薄れちまっているらしい。

 ・・・いかんな。

 もっとも彼女自身は、自分が作ったとあって、たとえ全部でもひとりで食べてしまいそうな勢いだ(笑)。


 と、そのとき。

 フォークが落ちて、床に転がった。

 クレオは席を立ち、落ちたフォークまで歩み寄ると、足を伸ばしたまま上半身だけ折って(しゃがまずに)それを取ろうとする。

 おお~見事な前屈!

 体、柔らかいなあ・・・だが次の瞬間、俺は慌てた。

 クレオ自慢のファラオの衣装は、木綿のチュニックドレスで、こう・・・スカート部分の丈がかなり短い。

 だから彼女が足を伸ばしたまま、上半身だけ前にかがめた今この瞬間、引き締まった太腿がどんどんあらわになり、下着が見えそうになる!


 ちょ!

 ああ、もうショーツとか見えちゃうじゃんか(指摘したほうがいいのか・・・俺の中で一秒間だけ猛烈に迷った)!


 しかし・・・スカートから太腿が次々にあらわになるのだが・・・だが・・・ショーツはいっこうに現れない。

 どういうことだ?

 あれ?

 ・・・・

 まさか・・・。

 まさか・・・。

 穿いて・・・ない?

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