第45話 第三章 『護衛するのだぞ? 同居生活は当然であろう!』(4)

 彼女はそのまま立ち上がり、ハチに宣告する。

「西郷殿! かくなるうえは責任を取ってもらわないと!」

「そんな理不尽な!」

 セクメトがとうとう自らの手に聖槍を出現させ、そのままハチに切りかかろうとする。

「!」

 ハチが頭に手をかざして、避けようとする寸前、

 パァン!

 甲高い音と激しい閃光を残して、妾の聖槍がセクメトの聖槍を撥ね退ける。

「・・・落ち着け、セクメト」

「はっ」

 まるで憑き物が落ちたかのように、瞳の色も戻る。

「・・・・」

 ハチが腕を頭の上にかざしたまま、腕の隙間から恐る恐るこちらを見る。

「こほん・・・ごめんなさい・・・ちょっと冷静さを失ってしまって」

 いつものセクメトナーメンに戻り、咳払いで誤魔化しつつ謝罪する。

 ちょっと、じゃないだろ・・・妾は内心突っ込みつつ、苦笑する。

 セクメトもいい加減「好き好きクレオパトラ」から、脱却してもらわねばな。

 まあ。

 とんだ茶番はさておき。

「・・・まだ信じられないよ」

 ハチは、かぶりを振って大袈裟にため息をつく。

 それはそうだろう。

「俺がアレクサンドロス大王の直系で、しかも世界を滅ぼす『闇の粘土板』を封印した、『血の封印』解除を可能にする存在だと・・・?」

 彼に限らず誰だって、まさか自分が世界の破滅を防げるかどうかのキーアイテムだなんて、想像もしないからな。

「とにかく、そういうわけで、今日からここに世話になる」

「はぁ、ええ?」

 ハチは素っ頓狂な声を上げると、

「いや・・・だって、今日からずっとなんて・・・俺だって健康な男子だぞ」などとぶつぶつ呟いている。

 そこへセクメトのやつが、待ってましたとばかりに、

「西郷殿、その点は心配いりません。そのためにわたしも同居するのです」

「ええ? セクメトナーメン、君もか?」

 この点については、妾も予定外だったため・・・こほん、あえてコメントするのはやめておく。

 世話になる者が増えてしまって申し訳ない・・・ハチ。

「もちろん、お世話になりますとも! もし、あなたが『わたしのクレオパトラ』に不埒な真似をしようものなら・・・ふふふ・・・その場で、一刀両断にして差し上げます」

「あーセクメト、もう、そーいうのはいいから!」

 またしても再燃しかけている茶番を、その場で終わらせる。

 っていうか、ドサクサに紛れて『わたしのクレオパトラ』ってなんだ!

 妾はノーマルだ!


 カノジョではなく、素敵な彼氏が欲しい!

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