第44話 第三章 『護衛するのだぞ? 同居生活は当然であろう!』(3)

「なんですって? クレオ・・・あ、あなた・・・まさか・・・も、もう『判定儀式』をしてしまったの・・・?」

 見るとセクメトは顔面蒼白で、髪の毛だって逆立ちしそうな勢いで、妾とハチを交互に睨みつけているではないか!

 台詞まで震えて、


「クレオ・・・あなた・・・なんてことを・・・わたしが奪うはずだった唇なのに!」

 ぎりぎりと歯ぎしりまでするセクメト。


 おい!

 何を言い出しているんだ、セクメトナーメン!


「・・・嘘よね?」

 いや、そこまで深刻ぶることか?

 他人のキスだぞ?

 っていうか、『奪うはずだった唇』だと?

 まったく! 女同士なのに!

 いや、問題はそこじゃない。


「した! 確かにした! 悪いか?」そして、

「仕方ないだろう! 大王の術式記録によれば、この方法が唯一の確認方法なのだから!」


 妾は、堂々と宣言した!

 半分は開き直りだったが。


 だって!

 そもそも『大王の血脈』の『判定儀式』なのだから、なにもおかしなことは無いだろう?


「・・・そんな、クレオ・・・あなた恥ずかしげも無く・・・」

 セクメトのやつは、ショックのせいか既に床にへたり込んでいる・・・マジか・・・このリアクション、そこまで妾のことが好きなのか?

 だが、ここで怯んでいる場合でもない。


「あのな! 妾だって! その・・・恥ずかしいに決まっているだろうが!」


 女二人で、ぎゃーぎゃーと言いあっている最中にも、ハチはまだ赤くなって俯いたままだ。

 そなたもなにか説明しろ。

 まったく・・・おまえは乙女か!

 こういう場合、恥ずかしがるのは女のほうであろうが!

「西郷殿・・・乙女の唇を奪ったのですから、かくなるうえは・・・」

 ヤバい。

 セクメトの眼が座ってきた。

 こうなると美形なだけに、凄んだ表情は陰影がくっきりついて・・・かえって怖い。

 こうアツくなられると、どっちが年上なのか分からんではないか。

 あ、今度はハチの胸ぐらを掴んで、詰め寄っている。

「いや! ちょっと待ってくれ・・・俺だって・・・キスするつもりなんて・・・無くってだな・・・その・・・クレオパトラのほうから・・・」

「なんですって? それが男子の言い分ですか?」

 いかん!

 セクメトのヤツ、さらにヒートアップしてるじゃないか。

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