第46話 第三章 『護衛するのだぞ? 同居生活は当然であろう!』(5)

 ・・・いかん。

「あー・・・とにかく、ハチよ。今日からよろしくな」

 妾のほうが先ほどのハチを真似て、握手とやらをすべく手を差し出す。

 ハチも照れながら握り返してくる。

「ああ・・・こちらこそよろしく」「本当はこちらとしてもありがたいよ・・・ほら、イルミナティがまた来たらどうしようって想像すると・・・恐ろしいのも事実なんだ」

 先ほどのイルミナティどもの凄惨な死に様を思い起こしたのか、ハチの唇がやや蒼褪めている。

 でも、よかった。

 そう思ってくれると、妾たちもたいへんな覚悟をして、時空を超越してまでやって来た甲斐があるというもの。

 ◇◇

 妾たちが同居して、彼の護衛をすることがようやく決まった。

 まずはこの時代の拠点が出来て、やれやれだ。

 彼は淹れ直したコーヒーを妾たちに振舞いつつ、ぽつりと呟く。

「しかし、本物の魔術師に会えるとはな・・・」

「?」

「言ったかどうか忘れたが、俺の考古学者という表の顔の裏側は、古代から続く様々な秘術を研究している神秘学者というヤツでもあるんだ・・・だが、さすがにこの眼で実在の魔術師に会ったことは無いんだよ」

 妾は、眼を真ん丸にして彼の顔を覗き込んだ。

「なんと・・・では・・・この時代に魔術師は?」

「考古学で世界を飛び回る合間に、さまざまな裏世界に首を突っ込んできたつもりだが・・・この時代に魔術師は・・・いないような気がする」

 妾は思わず、セクメトナーメンと顔を合わせる。

 セクメトも言いたいことは同じらしい。

 ・・・やはり無念なことに、もしかしたら、マケドニア騎士団はこの時代まで存続出来なかったのかもしれない。

 もちろんマケドニア騎士団も秘密結社であるから、ハチとの接触が無かっただけという可能性も充分ある・・・のだが、もし存在しているなら・・・当然『大王の血脈』と接触を図っているはず。

 ・・・となると、どうやら覚悟を決めて『彼=大王の血脈』を護りに来た甲斐があったようだ。

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