第23話 第二章 『さあキスをしよう! 話はそれからだ』(14)

 ・・・いったいどういう仕掛けなのだ?

 まさか、この時代は全員が魔術師で、妾も分からぬ術式を使役しているのか?

 ばかな。

 いろいろ思いを巡らせているうちに、ちょうど料理が出てきた。

「さあ、クレオパトラ。遠慮せずに食べてくれよ」

 いい匂いの料理の数々。

 さすがの痩せ我慢にも限界が来ていた。

 だがもちろん妾は・・・この時代の通貨など持っていない。

 思わずもじもじしていると、

「あれ? おなか・・・空いているよね?」

「その・・・」

 意を決して重い口を開く。

「妾には・・・いま・・・謝礼がなにも出来ぬ・・・だから・・・」

 彼はピンときたようだった。

「お金ならいらないよ、助けてもらったお礼なんだから」

「いや、礼が欲しくて助けたわけではないし・・・ファラオたる者、施しを受けるわけにも」

 彼は、ちょっと困った顔をした。

 あれ? もしかして妾のこと、ちょっとめんどくさい奴だと思ったか?

「いいじゃないか。まずは空腹を何とかしないと、だろう?」

「そうだな・・・そなたの言うとおりだ・・・では! 遠慮なくいただくぞ」

 まずはサラダ、大豆と・・・あとは分からぬ野菜が豊富なやつだ。かかっているソースが、王宮では見たことのないもので興味深い。

 だがそんなことは、どうでもいい。

 気がつくと、妾は貪るように食べた。

 恥ずかしかったが、とにかく空腹で堪らなかったのだ!

 ・・・ぶっちゃけ、ファラオの面子では腹は膨れぬ!

 自分でも美味しそうに食べているだろうな、と思う。

「豆料理が大好きなのだ。ここのサラダは本当に美味い。あとで店主を誉めなければな」

 あまりの美味さに興奮してしまったが、彼はちょっと困った顔をしている。

 うーむ、余計なこと言わなくていいから、ってところなのか?

 サラダをたくさん頬張り、少し落ち着いてきた。

 思わず彼に微笑みかけた。

 そのまま妾は・・・ボールいっぱいに出てきたサラダを平らげてしまった。

 我ながら見事な食べっぷりだと思う。

 殿方を前にして・・・恥ずかしい。

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