第19話 第二章 『さあキスをしよう! 話はそれからだ』(10)

「そなた」

 彼女の声で、どこかに飛んでいた俺は戻ってきた。

「え?」

「なぜそのように妾をじろじろ見るのだ? さすがに恥ずかしいではないか」

 やべぇ・・・。

「ご、ごめん!」

「それより・・・そなたが『大王の血脈』なのか・・・?」

 俺はポカンとした・・・今日は意味不明の台詞が多すぎるよ。

 そんな俺の困惑をよそに、

 まったく唐突に、


 救世主は優雅に微笑み、そして・・・

 こう言ったのだ。


「さあキスをしよう! 話はそれからだ」


 いきなり、彼女の美しい顔が迫り、俺の唇を奪う。

 ・・・キスは、甘かった。

 どこかで読んだけど・・・ホントに甘かった。


「えええ~! ええと! あの! え? いや、キミ! ☆▽〇□・・・・」

 完全にパニクったよ、俺は!

 そりゃそうだろ!

 アタリマエだろ!


 人生全ての幸運を使い果たしたのか? この瞬間に?

 いや! 使ったってこんな美女とキスなんて、出来るわけねぇよ!

 あるいは、なにかの美人局?

 ええ、おい?

 繰り返すけど、初対面の超絶美女とがっつり(やめろこの下品な表現)チューですよ?

 だがまたしても、俺のそのパニック模様をよそに、

 凛とした佇まいの彼女も・・・さすがに・・・真っ赤になりながら呟く。

「そなた・・・まごうことなく『大王の血脈』だ・・・さすが大王直々編纂の『跳躍術式』・・・見事に遥かなる時を超えて血脈に引き合わせてくれるとは・・・ああ・・・アレクサンドロス大王陛下・・・このクレオパトラ、深く深く感謝いたします」


 ようやく若干の平常心が戻った俺は、話題を戻す。

「ところで、その・・・何から聞いていいか・・・」

 彼女は、相変わらず優しい微笑みを浮かべ(何度見てもとんでもない美人さんだ!)、

「はじめまして『大王の血脈』よ」

「?」

「妾の名は、クレオパトラ七世・フィロパトル。プトレマイオス朝のファラオであると共に、マケドニア騎士団最強の魔術師だ」「・・・そして遥かなる時を超え、そなたを護りに来た」

「?」

 え?

 これだけクリアに言葉が通じて、ちゃんと会話をしているのに・・・こんなに意味不明な事ってあるのか?

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