第12話 第二章 『さあキスをしよう! 話はそれからだ』(3)

「並の研究者なら三日はかかるだろうけど、あなたならあと半日くらいでイケるでしょ? 期限を延ばしてあげるから、あすの昼までに全部終わらせといてね」

 手をひらひらと振って、笑いながら去っていく。

 こういうときの教授って、実年齢よりかなり若く見えるんだよなあ。

 精悍な感じだと先ほど言ったが、間違いなく美女なのだ。日本的に言うと『美魔女』ってやつだ。

 さて。俺は、食堂で一息つこうと思ったが、予定を変更してキャンパス内の売店に向かった。

 サンドイッチとコーヒーとバナナを買うためだ。

 なんでバナナかって? アタマの養分補給には糖分が一番だからさ!

 すぐにでも研究室に戻ってリファレンスチェックを再開しねぇと、明日にはマジで間に合わんからな。これから籠城だぜ。

 売店で食料を買い込むと、大きめの紙袋を抱えて研究室に急ぐ。

 ◇◇

 エルサレム工科大学。

 ご存じ中東国家イスラエルの都市、エルサレムにある、世界的に抜きんでた技術力を持つ大学だ。

 特に光学関係や制御関係・AIが得意だが理工学全般に強く、世界中に提携企業を持つ。

 地元のイスラエル国防軍とも深い提携関係を持ち、最先端兵器の開発に寄与しているといわれている。

 そのため資金は潤沢で、広大なキャンパスには、講義に使う棟や講堂、実験設備が整った棟、といったジャンルごとにビルがいくつも集まっており、移動には一苦労だ。

 構内のインフラや、実験設備なども超一流だ。

 俺から見ても、それはまあカネがジャブジャブに使われており、うらやましい限りだ。

 その他、生活に必要な物品を扱う商店・カフェテリア・病院・体育館・銀行・学生寮などなど、このキャンパスで暮らしていけるように大抵の設備は揃っている。

 大したもんだ、と言いたいところだが、要はエルサレム市街の中でもやや外れた場所にあるため、キャンパスの周辺に店舗とかがロクにないのだ。

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