第8話 第一章 『世界を統べる騎士団長は、決断を下す』(6)

 ◇◇

 いったん王都アレクサンドリアの王宮に戻った妾たちは、それから丸二日考えた。

 砂っぽい市の中心部から、やや奥まった位置にある王宮は、大理石に覆われた白亜の宮殿であり、地中海からの日を浴びて美しいことこの上なかった。

 全身で、文明先進国である誇りと、大国の国力を誇示している雄大な姿。

 妾のお気に入りの建築物だ。

 これで・・・イルミナティの問題さえ無けりゃ、言うこと無しなんだが!

 とかいいながら美しい王宮の中で、妾はあまり美しくなかった。

 いや!

 顔だって、ボディーだって自慢の美女だよ?

 美しくないっていうのは、過ごし方というか、生活態度というか。

 ただ、ちょーっとだらしないというだけで。

 執務室は、脱ぎ散らかした服が大量にあって。

 ・・・気分転換したかったんだよな。

 呑み散らかした酒壺や食事の皿がそこら中に転がって。

 ・・・ストレス、発散したかったんだってば。

 思えばいまも結局、全裸に近い・・・うう・・・。

 せっかくだからイケメンでもいればよかったのに(こればっか)。

 そもそも「考え事に集中したいから!」・・・とか言って、この二日間侍女を一切立ち入らせなかったんだから、しょーがない。

「クレオ! どーするの?」

 だが悩む妾のナーバスな心情を、容赦無く蹴散らすかのようにセクメトナーメンが執務室にずかずかと入ってくる。

「うわ・・・クレオ、あなた家事能力ゼロね」

 ずかずか入ってくるくせに、さらに気にしていることをザックリ抉る。

 ぐぬぬ・・・自分でもそう思う。

 だが、君主らしい国事はちゃんと出来るんだから、いいじゃないか。ふん!

 いやいや、いまはそんな事どうでもいい。

 妾は大きく息を吸って、

「セクメト、妾は決めたぞ!」

「?」

 セクメトは何を急にと言わんばかりに首を傾ける。


「二千年後に赴き、『大王の血脈』を護る!」


「は?」

「そして、アレクサンドロス大王の意志を継いだ世界を護る!」

 腰に手を当てて、片手はびしりとセクメトを指さし、敢然と宣言する。

 全裸に近かったが。


 さすがにセクメトは驚き、

「誰が?」

「妾自ら」

「どこへですって?」

「だーかーらー、二千年後だ」

「どうやって?」

「騎士団の魔力を結集して『跳躍術式』を使う」

 セクメトは、こめかみを指で押さえつつ、

「クレオ・・・なぜあなたが自ら行く必要があるの? 王朝や騎士団はどうするの?」

「最強の魔術師が行かねば意味が無いだろうが。我らが始祖である大王の意志を継いだ未来を護るのだぞ? 絶対に負けられぬ闘いなのだから手駒を惜しむ意味は無い」

 それに・・・と、妾は続ける。

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