第6話 祭り
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戦後にこの地に入った時には
隣までの距離は2キロあったと祖父から聞いた。
水道もガスも電気も全てのライフラインはなかったという。
山を切り開き
道を通し、人々が暮らせる土地を開拓した生活を
私は幼い頃から聞いて育った。
最近、私が生まれてはじめて新しいご近所さんが出来た。
それも一度に5軒も。
無駄に広がる雑草地が住宅地になりました。
50年もの間変化のなかった土地に新しい風が入りました。
そんなわけで
私が暮らす地域には古くからの歴史がなく
ここは比較的新しい住宅地です。
歴史がないので
その土地に根付くお祭りなどの催し物はなく
幼い頃の私は、たくさんのお店が並ぶお祭りに
少なからず憧れがありました。
最近になり、桶狭間古戦場でのお祭りが春に催されるようになりましたけど、祭り慣れしていない為かそこに行く事も子供達を連れていく事もなく、数年前に1度だけ連れて行ったきりでした。
春
この時期に、催される祭りがあり
それは大々的にTVでも放送されている
「このお祭りに行きたい」
「ここに連れて行って欲しい」
「だってみんなも行っているもん」
まだ1年生か2年生の息子に
何度もお願いされた
「そうか、、行きたいのか」
「でも、連れて行ってやれないわ」
「ごめんな」
息子は困った子供だったが
嘘をつくような子ではなかった。
同じクラスの奴らがふざけて息子をからかっていたのか
単に同じクラスの奴らが嘘をついていたのか
本気の馬鹿だったのか、、、もしくはその全てなのか
今更になってはどうでもいい話だが
当時の私は息子になんて説明していいのかわからなかった。
言っても理解出来ないだろうと思ったからだ。
今年も例外なく
そのお祭りは催され
TVでも流れているし
のぼりを見る事も多い。
あれから月日は流れ
高校生になった息子
そろそろ伝えてもいい頃だろう。
もう理解できるはずだ。
【ヤマザキ春のパン祭り】
この祭りには連れて行ってやれない。
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