第18話 襲撃!
一瞬静寂が訪れ全員顔を見合わせる。
「アリスさん敵です! 攻撃が始まりました!」と、会議室の扉を勢いよく開けて[FRANZ]のギルドメンバーが現れる。
急の出来事にその場のほとんどがまだ理解が追いついておらず、そんな中で立ち上がって真っ先に外を確認しに行った[KKD]のキングを見て全員が一斉に外に向かって走り出した。
外に出ると再び爆撃音が響き、その音の方向、上を見上げると戦闘機と思わしき影が勢いよく音を立てて過ぎ去っていった。
そしてまた爆撃音。
音の正体は戦闘機から放たれたミサイルであった。
勢いよく発射されたミサイルはエリアシールドにぶつかり宙で爆発する。
「ガロン、早く指示を出してくれ」と、皆が上を見上げる中でキングがガロンに言葉を投げる。
「え、いやだから無理ですよ僕に指揮なんて。勝手に話を進めないでください」
「とは言ってももう敵の攻撃は始まってるんだから話し合っている時間はないぞ」と、口を挟むのは[ふらふら帝国]のオクトパスである。
「そんなこと言われても無理なものは無理ですよ。皆さん上位勢なんですから各々で対処してもいいんじゃないですか?」
「了解した」
ガロンから言質を取るやいなやそう言い残しキングはその場から一瞬にして消え去った。
「は? マジであいつ行ったのか?」と、苦笑いを浮かべるマッシュルームボーイとケラケラと笑うオクトパスを見ながら俺は頭を抱えた。
まるで協調性がない。いや、そもそも俺たちは元々仲間でも何でもないのだったと俺は再認識する。
上位ギルドでも一線を画す[FRANZ]のフローズンが指揮を執っていたからこそ誰も文句を言わず従っていたが、そのフローズンが居なくなってしまえば所詮は烏合の衆。敵対しあっていたライバルたちなのだ。
協力出来るはずもなかった。
「こうなってしまったら仕方ないだろう。各自、自分のできる事をやれ。以上だ」と、言い残し去っていくザークライルとメモリアリスを機に次から次へとその場からプレイヤーが離れていき、気づくと既に半数以上がその場からいなくなっていた。
残っているのは[雨のち晴れ]、[Vs]、[HTT]そして[NEO.MION]の4ギルドのみで、[Vs]はギルドマスターのガロン1人だが、[HTT]と[雨のち晴れ]は俺たちと同じくサブリーダーのおかゆごはんと晴天の空を連れている。
「これ僕のせいですか?」
「いや、ガロンくんは悪くないと思うわ。上手いこと誤魔化してるけど形だけ作って急に消えたフローズンの戦犯」
困惑するガロンをみおみおがフォローするが現状は最悪とも言える。
誰がどこへ向かったのかも分からなければ、攻撃と防衛の役割も決めていない。さらに相手は[unknown-glow]という三拍子。
どうしたものかと俺は頭を捻った。かなり危機的な状況であるはずなのに思った以上に他のプレイヤーが楽観的であり、どうにかなると思っている。
[NEO.MION]もあまり他人の事は言えないが酷いものだ。
「どうするねじまき?」と、みおみおは俺に話を振ってくる。
「取り敢えず俺たちは防衛に力を入れたほうが良いだろうな。どうせ他の奴らは撃退しようと前線に出て行ってるだろうしここに残っているメンバー的にも防衛系のスキルが多いし……てか、わかめは全然喋らないけど何考えてんだ?」
全員を見回しながらどんな立ち回りが良いのかを考えていた俺はふと目があった[HTT]のわかめごはんに声をかけた。
シロと同じで解散した元上位ギルド[神様の贈り物]出身の古参プレイヤーであるわかめごはんは掴み所がないプレイヤーである。アーティファクトも保有しており強い事は間違いないのだが、何を考えているのかが本当に読めない。
戦闘でも奇策を好み、その独特な読みづらい戦闘スタイルには悩まされたものだ。
しかし、今回ばかりはしっかりと意見を聞かなければいけないだろう。
「特に何も考えてはないけど、強いて言うなら取り敢えず君達についていこうかなぁと思ってるくらい。[HTT]は僕含めて5人しかログインしてなかったから色々と厳しいんだよね。シロくんたちも自分のギルドのことで忙しそうだし、失敗したと言っても力持ってて安定してるフローズン側についていた方が何かと安心出来そうだから」
「なるほど」と、俺は呟く。
思ったよりも柔軟に物事を考えているのが分かったが、それを包み隠さず言う辺りが天然なのかわざとなのか。まぁしかし、しっかりと冷静に考えて立ち回れるプレイヤーである事は理解できた。
「てか[HTT]はついてくるみたいだけど[雨のち晴れ]と[Vs]はどうすんだ?」
横で話を聞いていた4人にみおみおが問う。
「僕も責任負わされるの嫌だから君達についていこうかな」
「こっちも同意。というかこのくらいの中隊で動くのが伝達速度や齟齬を考えてもベストだと思うよ。勝手に動く奴らとはどうせ分かり合えないだろうし俺的にはこうして分かれてくれて有難い」
ガロンに続いて雨天の空も意思を示すが、果たしてそれは本心なのかと俺は考える。
受け入れられる為にあらかじめ用意しておいた答えである可能性。
本来ならばそこまで考えなくてもいいのだが、もしかしたら敵勢力がスパイとして混ざっているのではないかという思いが俺をいつも以上に神経質にしていた。
ギルドの責任を持っている以上、慎重にならざるを得ないのだ。
「まあ気軽に行こうや。内部分裂するのが一番駄目だからここだけでもしっかり信用しあって協力していかないと」
俺のその雰囲気を感じ取ったのかみおみおが伸びをしながら屈託のない笑顔を浮かべた。
流石と言うべきか、いつもギルドマスターとして[NEO.MION]を纏めているだけあってバランスを取るのが非常に上手い。しかし、こうしてわざわざみおみおが言葉を挟むと言うとは、どうやら自分が思っていた以上に猜疑心が態度に出てしまっていたらしい。
俺は深呼吸して思考を一旦リセットさせる。
真偽をつけられない今の状況では誰かを疑っても切りがなく意味がないため、ある程度割り切って進めていくのが正解だ。
「よし! そんじゃぁ取り敢えずこの4ギルドは協力しようか。一応一番ギルドランクが高いから俺らが仮で仕切らせてもらうけどいいか?」
その言葉に全員が頷くのを確認して俺は話を進める。
「他のギルドが外で応戦してる間に[Vs]は【ネスト】で街を強化。[HTT]は後方支援に回って貰って、[雨のち晴れ]は俺たちと一緒に遊撃。簡易だけど役割が決まってないよりはマシだろ。どう思うみおみお、ギルマスとして最終決定してくれ」
「……1つだけ。俺たちはペラーさんという主戦力を失ってるから、ペラーさんの支援するために日本に数人送りたいと思っているんだが、それは納得してもらえるか?」
その相談にギルドマスターの3人は頷き、「なら良かった」と、みおみおは呟く。
「じゃあ解散だ。どれだけの戦力がこの島に来るのかは分からないがまた全員無事に出会えることを願ってる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます