第11話 閑話


「連れてきたぞ。並べお前ら」


 ペラーと共にザークライルは島の北端に現れた。見晴らしのいい丘となっているその場所には既に[NEO.MION]のあいろん、クマ、ミミミ、そして[FRANZ]のcitymanシティマン、夏日、deperonデペロンの6人が集まっている。


「ペラー、俺はこいつらを見るからそっちの指揮は任せるぞ。少数精鋭で突破しろという話だから失敗するなよ」


「前身ギルドの[カーペンター]で出会ってからだからお前との付き合いももう8年になる訳だが、未だに俺の失敗を気にするとはお前は一体何を見てきたんだ。俺は絶対に失敗しないし、時間にも遅れない。連れてきた3人も優秀だから安心しろ」


「いや、お前は一度だけ時間に遅れた。だから言っているんだ阿呆。後進育成も兼ねているんだ。足を引っ張るんじゃないぞ」


「相変わらずで何よりだ。それじゃあ時間に遅れないようにそろそろ始めるかぁ」


 ザークライルとペラーは雑談が終わると同時に並んで立つ6人に目をやった。


「それじゃまずクマ、ペラーを運ぶ。次にあいろん、シティ。そして夏日、デペロンだ。向こうに着いてからは二手に分かれて中央合同庁舎2号館と防衛省庁舎を制圧する。その後、その二つから生きてる人間全員を退けて破壊、機能を停止させる。それで俺たちの任務は完了だ。フローズン曰く、思わぬ伏兵がいるかも知れないという話だったが、まあお前らは気にしなくてもいい。その為に個人ランク5位6位の俺とペラーがいる訳だから俺たちを呼べ。分かったな。……あぁ、それともう一つ言っておこうか。迷ったら死ぬぞ。死にたくなかったら殺せ。いいな? では行こうか」

 そうして彼れらは作戦行動を開始したのであった。







「取りあえずフローズン。お前の算段を聞かせぇや」


 ザークライルが消えた部屋でアカミンが話を切り出す。


 作戦は始まったがここにいる全員を完全に納得させられたわけではなく、依然としてフローズンは作戦に対する説明を求められていた。


 特にアカミンは食い入るようにフローズンの話を聞いており、おそらく欠陥でも探しているのだろう。やはりアカミンだけはしっかり警戒しておかなければならない。


「そうですねぇ。先ずは相手の攻撃手段を潰します。その為にザークさんとペラーさんには警察と自衛隊の上を叩きに行っていただきました。上手く叩ければ私たちの上陸も簡単になるでしょう。日本本土に上陸さえしてしまえば私たちに負ける要素はありません。上が混乱している状態では、上陸した敵に対して戦闘機での攻撃や爆撃の判断は出来ないでしょうし、自衛隊から戦車が出てくるのにも時間がかかりますので、そうやって相手が慌てふためいている所を轢き殺すだけです。正直今の戦力ならば余裕だと思いますよ。ただ……」


「ただ?」


 歯切れの悪いフローズンにアカミンが続きを促す。


「[noob11]は見つかっていないメンバーが何人くらいいますか?」


「俺の所は4人やな」


「私の所は14人です。因みに[NEO.MION]も4人見つかってないそうです」


「……それがなんや? まさか相手方に回ってるとでも言うんか?」


「私の思い過ごしならばいいんですがこういう考えはよく当たるものですからね。ザークさんとペラーさんが居れば流石に大丈夫だとは思いますが念には念を入れたいのでアカミンさんには今から第二陣として向かって欲しかったという感じですかね。どうですか?」


「お前が行けばええんとちゃうんか?」


「本隊は分厚く行きたいですしそれを動かすのは私以外には務まりませんので私が動くわけには行きません」


 少しの沈黙が訪れる。


 アカミンは首を椅子の背もたれに預け、天井を眺めながら何かを考えているようで、数分後口を開いた。


「なあ宋江。お前もどうせ暇してるんやろ? なら俺らと競争しようや。目標はそうやな……都庁でええやろ。先に都庁取った方の勝ちや、お前はザークライルの方で俺はペラーの方を経由でな」


「私は自由に動けるなら何でもいいが、邪魔だと思ったらザークライルたちを見捨てるぞ。それでいいなら受けよう」と、宋江がアカミンの提案に付け加えてフローズンの顔を見る。


「それでええかフローズン。お前は嫌いやけど俺も勝ちたいから、しゃーなしでお前の策に乗ったるわ。それに、もしメンバーが相手にいるなら俺が直々に叩き潰さないとあかんやろやっぱ」


「それで十分です。邪魔になったのなら見捨てていただいて結構。邪魔になる方が悪いですからね。ザークさんが居れば死ぬことはないでしょうし」


「よっしゃ、それでいこか。ほなまたな」


 言い残してアカミンと宋江はこの場を去る。


「さて、残ったみなさんには私の率いる本隊に加わっていただきます。ムーンさんもそれでいいですか?」


 ここまでずっと黙っていた因幡白うさぎのギルドマスター、ムーンは退屈そうに長い赤の髪の毛を弄りながら「私は戦闘ができれば何でもいいわよー」と、一言だけ呟いた。


「それと、[Vs]と[ODIN]はこの島の防衛に残ってください。恐らく役割的にあなたたち2つがベストだと思います。では、作戦開始です。みなさん頑張りましょう」


 こうして第一次東京攻略戦は幕を開けたのであった。





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