第9話 作戦会議


  三日後、[FRANZ]のホームにある円卓会議室に俺とみおみおとペラーさんはいた。二人とも戦闘用の服装に着替えて来ており、ペラーさんに至ってはメインウエポンの刀まで腰に携えてある。


 13人が座れるようになっている円卓には集合時間の十分前という事もあってか一席を除いて他全ての席それぞれに上位ギルドのギルドマスターが座っていた。


 入り口から一番遠い席である俺たちの隣にはフローズンが座っており、忙しそうに束になった書類に目を通しながら隣に立つ[FRANZ]サブリーダーMemorialiceメモリアリスと話をしていた。


 そのフローズンから一つ席を開けて逆時計回りの順で


ギルドランク14位[メビウス]のギルドマスター マッシュルームボーイ

ギルドランク 7位[雨のち晴れ]のギルドマスター 雨天の空

ギルドランク 4位[因幡の白うさぎ]のギルドマスター moon_lightムーンライト

ギルドランク 8位[KKDケーケーディー]のギルドマスター king65216キング

ギルドランク 9位[ODINオーディン]のギルドマスター long-nightロングナイト

ギルドランク 6位[臥竜がりょう]のギルドマスター 宋江そうこう

ギルドランク13位[Vsブイズ]のギルドマスター v_gallonガロン

ギルドランク10位[ふらふら帝国]のギルドマスター octopusオクトパス

ギルドランク11位[HTTエイチティーティー]のギルドマスター わかめごはん

ギルドランク12位[real escapeリアルエスケープ]のギルドマスター teen35ティーン


と各ギルドのギルドマスターが座っていた。


 俺はペラーさんと一緒にみおみおの後ろに並んで立ちながら辺りを見回す。


 他のギルドもギルドマスターの他に2人ほど中心メンバーを連れてきており、部屋の中の人口密度は結構高いが部屋の天井が高く広い為かそこまでの圧迫感は感じない。


 そんな事を思っていると隣の席から急にピピピッっとタイマーのような音が聞こえてきた。音の出所はフローズンの後ろに立つメモリアリスで、その手には音とは似つかわしくない銀の懐中時計が握られている。


 時計の音に呼応し「時間ですか」とフローズンが呟くと同時に、部屋のドアが勢いよく開いた。


「どや、ギリギリ間に合ったんちゃうか?」


 声とともに入ってきたのは[noob11]のアカミンとノンである。

「間に合ってはいませんがまあいいでしょう。席は私の隣ですのでどうぞ」


「フローズンの隣かいな。もう片方は[メビウス]のマッシュか。まあええわ。その席で我慢したる」


 アカミン達が座ったのを見てフローズンは再び口を開く。

「さて、まずは私のギルドハウスに集まって頂きありがとうございます。2位の[unknown-glow]アンノウングロウを除いた上位13チーム。本当に感謝します。では、時間もないので早速ですが本題に入りましょうか。クエスト首都制圧をどう行うのか」


「まどろっこしいのは抜きにしようやフローズン。お前はどっちや?」


 フローズンの話が終わるのを待たずに椅子に深く腰掛けたアカミンが話を始める。


「どっちとは?」


「トボけるな阿呆。クエストの性質上最大ギルドである[FRANZ]の規模は必須や。どうあがいても[FRANZ]がメインになる。やから早よ意見出さんかい。それに納得できなきゃ俺らは俺らで行動することにするさかいに」


 アカミンのその言葉と共に皆がフローズンに視線を向ける。


 ここにいる全員がこのクエストには[FRANZ]が必須という事を理解しているのである。


 クエストを行うという事は既に決定しており、問題は穏便に進めて解決策を模索するのか、力押しでそれこそ侵略してしまうのかという事だ。そしてどちらを選ぶにしフローズンの求心力や[FRANZ]の人数は欠かせない。


 そのためまずフローズンがどちら側の思考なのかをハッキリさせろと言うアカミンの提案は悪くはなかった。どちら側なのかをハッキリさせた上で擦り合わせていくのが合理的だ。


 この後に仕掛けようと練っていた考えにもマッチしているし、そうと決まれば話に乗った方がいい。


「俺も先に答えておいた方がいいと思うぞフローズン。時間が無駄だ」


 考えるそぶりを見せていたフローズンに俺も声をかけた。


「なるほど。そうですね、皆さんが望むなら先に答えておきましょうか。……私は力押しで制圧してしまっていいと思っています。話し合おうとしても、私達がどんな存在なのかを知っているのは私達だけですので相手側からからしたら侵略者にしか見えないでしょう。突如現れたよく分からない奴らが東京を明け渡せと言っても到底聞き入れてくれるとは思えません。そのまま話し合いを重ねた結果、タイムリミットが迫り結局力押しで戦う事になるのがオチでしょう。ならば先手先手を取って仕掛けていくのが正解だと私は思いますが、さて皆さんはどうでしょうか。私の考えに反対の人はいますか?」


 場に静寂が訪れた。


 それもそのはずで、[noob11]のアカミンと白うさぎのムーンは戦闘狂な為に話し合いを選択する事はまずない。そこにフローズンも加わってしまえば誰にも止められないのだ。


 ここで手を挙げるのは孤立を意味し、今後の行動に支障が出る可能性があったのである。


「申し訳ないが一つ」


 そんな中で[臥竜]の宋江が声とともに手を挙げた。


 ギルドランク6位にして上位ランク最小のギルドである[臥竜]は個々の能力が異常に高いギルドでもある。9人という人数である為、ギルドバトルでは力負けしてしまい6位となってしまっているが、だからこそ厳選されたメンバーは全員がトップレベルの力を持っており、間違いない最強の一角だ。特にギルマスの宋江はアカミンと個人ランク一位を競う実力者である。


 その男の発言に皆が注目する。


「日本に攻め入るのは大いに結構。しかし、私達[臥竜]は別行動を取らせて頂きたい。勿論戦闘には参加する。ただ[臥竜]は別で動く。別働隊とでも思ってくれればいい。よろしいか」


「理由を聞いてもいいですか?」


「単純明快、邪魔だからだ。全員が私達と同じレベルなら問題ないがそうではないだろう。求める事を確実に遂行できないのなら居ない方がいい」


「……なるほど。まあいいんじゃないでしょうか。それだけの力があなた達にあることは皆分かっていますからね。個別で行動して頂いても大丈夫です。ただ分かってはいるとは思いますが、成果は残してくださいね」


「無論だ。では、そういう事で私はここで失礼するよ。ここには戦うという意思を確認しにきただけなのでね。後の作戦会議などは勝手にやってくれて結構」


「ちょい待ちいな」


 立ち上がりその場から立ち去ろうとする宋江をアカミンが呼び止めた。


「おいフローズン。[臥竜]がいいなら俺らも別行動をとらせてもらうで。お前と仲良く作戦会議なんて無理な話や」


「いや、[noob11]にはやって頂きたい事がありますので残ってください。[臥竜]にはギルドの性質上任せられる仕事がありませんので許可しただけですので」


「なんや、お前は俺らに命令しようとしてんのか?」


「命令ではなくお願いです」


「笑かすなや阿呆。お願いだ? 馬鹿も大概にせえよ」


 笑ってはいるがアカミンの語気は強く、フローズンを見るその目は鋭い。


「……ふむ、そうですね。一応全員の了承も得ている訳ですし、この流れでは結局私の出す意見をみんなで擦り合わせることになりそうなので先に言っておきましょうか。私は、今ここで全員の了承が得られるならばこのまま直ぐに日本に攻めていきたいと考えているんですよ」


「それは一体」と、フローズンの言葉に[雨のち晴れ]のギルドマスター雨天の空が疑問を返したが、さらにそれを「まあ待ちいや。とりあえず説明せえよ」と、アカミンが遮った。










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