第7話 ギルド会議
街に戻ると入り口である門の所には街の探索に出ていたギルドメンバーの三人、長身の男キャラであるガチャゴチャ、リアル女性であるロリキャラの
「よう。ギルドチャットで状況は知ったけど面倒な事になってんなみおみお」と、いの一番に声を掛けてきたのはロンリーロリータことロンロリである。真っ黒な腰まで伸びた長い髪に露出の少ない黒の魔術師装備。少女キャラだった頃は完成度の高い可愛いキャラだったがこのアバターから直接男の声が出ているのを見ると違和感がすごい。
「本当にな。マジでめんどいわ。てかお前の低い声でショタアバターは気持ち悪いわ。声高くしてくれ」
「無理無理。これ以上高くならないって。恨むならいるかも分からない運営を恨んで」
言いながら笑うロンロリだが、その笑い声も低い。
「他のメンバーはみんなもうペラーさんの所に集まってるよー。案内するからついて来て」と、話が途切れたのをみてから少し高めの可愛らしい声でミミミが話し出し、俺たちは彼女について行った。
ギルドは基本、ホームと呼ばれる家を持っている。十人以上のギルドメンバーが居るギルドに限り、会館でNPCに申請すればコインを払って街にある家を借りる、もしくは買う事ができるのだ。
そして俺たち[NEO.MION]のホームは町の南側にある一軒家である。
ホームに着き玄関の先にある部屋に入ると縦長の大きな机があり、その前には5人のギルドメンバー、手前から巨漢の男
「大変だったなぁお前ら。まあ座れ」と、ペラーさんが口を開き、俺たちは気絶したままの軍人たちを入り口近くに寝かせ、所定の位置にそれぞれ座った。
15人が座れる机に現在計12人が座っており、こうして一人称の視点で見るとなかなかに威圧感のある光景だなあと思う。
「12人。この島に来てるのは16人やから残りは4人か。誰やろ?」
入り口から見て奥の席に座るきょーすけが頬杖を付きながら誰ともなしに言葉を投げる。
「ギルドメンバーの上から順にリザキンTV、カナリン、
「誰も見てない上に連絡も取れないのは変だな。あいつらも初心者って訳じゃないんだしインしてるならここに来るだろう。何よりあいつらだけが連絡取れないのは気になるが、まあ取りあえずそれは置いといて今はこの軍人と現状の話を詰めていこうか」
少ししてみおみおがそう切り出した。
こう言う時は決まってみおみおが仕切ると決まっている。
ギルマスだからと言うのもあるが結局の所、メンバーの殆どがみおみおの集めたメンバーであり、皆みおみおと仲の良かったフレンドで彼を通して知り合った為、こうして仲介として話を纏める事が多いのだ。
「ペラーさん達の報告を聞かせて貰ってもいい?」
「了解」と、みおみおの言葉にペラーが返す。
「ただこっちは言うほどの情報もないんだよなあ。俺とブラストが結構早めの段階で目が覚めて誰よりも先に会館に着いてたが、みおみおからのチャットにあった首都制圧クエストは始まってて、その後できょーすけと会館で合流して、フローズン達がそこに来てクエストを誰かが始めた可能性を考慮して会館の入り口を封鎖してから中に居た人の名前を控えていったって感じだな。会館自体は機能していたからゲームの頃と変わらず使えるんじゃないか」
「協会は? 協会はどうなってるか分かりますかペラーさん」
そこに俺は口を挟む。
「俺たちは確認してないが協会も使えるって話だ。アカミンとフローズンがそれぞれ試したらしい」
なるほど。それならばあの場面でアカミンが迷わず技を放ったのも、それをいち早く察知してギルドメンバー全員を守れるほどの壁を出したフローズンの動きの速さも納得だ。
「ゲームで使えた物は殆ど使えると思って良いかもね。で、どーするみおみお」
ミミミのその問いかけにみおみおは少しだけ考える素振りを見せる。
「……そうだな、まずは多数決を取ろうか。意見の割れる話題は多数決だ。クエスト首都制圧を遂行するかどうか。する派は手を上げてくれ」
みおみおのその言葉を聞くと同時に一人また一人と手を挙げ出し、最終的にきょーすけ以外のメンバー全員が手を挙げた。
「なるほどな」と、きょーすけが呟き、椅子に深くもたれ掛かって大きく溜息を吐いた。
「条件がある。まず戦わない選択肢を極力選び元の体に戻る道を探し続ける事。そして俺の妻を安全な場所に連れて行く事。その二つを守ってくれるなら俺も協力しよう」
「女々しいな。人を殺すんだ、しっかりと腹決めて割り切って戦わねぇと戦力にならねぇだろ」
「あ? なんつったおい?」
ロンロリがきょーすけに突っかかり、即座にきょーすけも反応する。
急に場の空気が重くなり、二人以外のそれぞれがそれぞれに対し目配せを始めた。こう言う事はたまにある。少人数の仲良しギルドと言っても皆、所謂ガチ勢と呼ばれるタイプの人間であり、特にロンロリときょーすけは昔から意見が合わないことが多かった。
今回もそれを察し、どこまで本気の喧嘩なのかを探っていたのである。
「はいそこまで」
バチバチと火花が散る二人の睨み合いを遮るようにしてみおみおが手を叩いて鳴らした。
「[NEO.MION]で最もリアルを大事にしていたのはきょーすけだ。だからきょーすけの条件も十分に納得できる。それに、いつものゲームの状況なら良いがこの状況で煽って喧嘩になるのは宜しくないなロンロリ。仲良くいこうぜ」
「ちょい待ち。ロンロリに賛成する訳じゃないがきょーすけの案も納得はできないぞ。東京を本当に制圧するならかなりの犠牲が出るのは間違いないし、そもそもお前の妻を助けるのが難易度高すぎるかな。せめて案を出してくれないと。話はそれからだ」
ブラストが参戦し三つ巴になった状況を見てめんどくさい事になったと俺は思った。
ブラストもきょーすけもロンロリも、口を出す奴は決まって我が強い。
その場その場で自分の考えをはっきり言って方針を決めてくれるし、別に悪意があるわけではないためそれが悪い事とは言わないが、こうなった場合納得するまで誰も引かないため非常に面倒なのも確かなのだ。
この三人は特にそれが目立つ。
そんな言い争いを続ける彼らに板挟みにされ戸惑っているみおみおの姿を見るだけで胃が痛くなるが、こんな時に助け舟を出すのは最年長のペラーさんかみおみおと最も付き合いの長い俺くらいであり、ペラーさんが動く気配のないのを見るに、俺が動かなければならないのだろう。
俺がちらっとペラーさんの顔を見ると、目があったペラーさんは顎をクイッとみおみおの方に動かしお前が行けと促した。
やっぱりかと思いながら俺は小さく溜息を吐き、「はいそこまで」とみおみおの真似をして手を叩いて鳴らした。
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