第6話 ひと段落
「そのこっちの中には私も入っているのかな?」
睨み合う俺とアカミンの間で言葉を発したのはフローズンであった。
氷の壁は上部から徐々に光の粒子となって散り、その背後からは数十人の人々が現れる。利益など関係なく守れるものは全て守るとは彼らしく、その上あの爆発からあれだけの人数を守るとは流石だ。
「ちゃうやろ。あんたはこっちやフローズン。重要なのは日本と戦うかどうか。こいつらはまだ迷ってんのや。平和的解決いうのを望んどるんやろ。平和ボケや平和ボケ。でもあんたは違うやろフローズン」
静寂が訪れる。
皆フローズンの出方を待っていたのだ。最大のギルドがどちらに付くかでこの島、〈アンリヴァル〉の今後の動きが決まる。
安全に行くか、強引に行くか。フローズンだからこそ読めないのだ。もしも強引に行くとなった時に問題となるのは人を殺さなければならないかもしれない事と自分が死ぬかもしれないと言う事だ。先ほどの爆撃でのプレイヤーの死に方を見るに実際に死ぬと言う事はなさそうだが、一度体験すると戦えなくなるプレイヤーも出てくるだろう。
普通のギルドなら戦いは望まないが、フローズンを中心に統率のとれた[FRANZ]に関しては何とも言えない。
「責任というのは面倒なものですね」
そしてゆっくりと彼は口を開いた。
「私の一言である程度の道筋が決まってしまうとは、いやはや、百人規模のギルドのマスターとしてはそう簡単に応えることは出来ませんが、とにかく情報が少なすぎます。私たちの元の肉体がどうなっているのか。この世界は本当に私たちの知る地球なのか。そしてこの島は、私たちは一体何なのか。戦うかどうかはまず状況を判断してからがいいでしょう。そして、そうですね。三日後くらいがいいでしょうか。上位ギルドを集め会議を開きましょう。その会議で全てを決めるということでどうですか?」
フローズンは言いながら俺とアカミンの顔を交互に見る。
合理的で至極正当な意見。これもまたフローズンらしいと言えばらしいが、最大ギルドのマスターにそれをやられると頷くしかなくなってしまう。
暫し俺は考えた。
今の所白うさぎは味方だがギルマスのムーンは気分屋だ。次の機会まで味方とは限らない。少しでも有利を持っている今の内にある程度有利な条件を設けておきたいが、先ほどから上を取ろうとして中々取れていない所を見るとここは変に意識せず流れに身を任せた方がいいのかもしれない。
それに、どうせ[NEO.MION]のメインメンバーなら殺す殺されるの問題で立ち止まる事はないだろう。
問題は既にクエストが始まってしまっていると言う事だが、それも含めて調べる時間が必要なのは確かだ。
「俺はフローズンの提案に賛成だ」と、ため息交じりに俺はつぶやいた。
「ありがとうございますねじまきさん。さてアカミンさんはどうですか?」
「……しゃーなしやで。今回は見送るわ。ただフローズン。あんたを信用した訳ちゃうからな」
数秒の沈黙の後、アカミンは口を開き、他の二人を連れてその場を後にした。
「いいのかねじまき? 分かってると思うがフローズンはあれで相当腹黒だぞ。ここはアカミンを味方にしてフローズンを孤立させても良かったんじゃないか?」と、俺の耳元でみおみおが小さく囁いた。
「俺たちが今一番避けるべきは何も分からないこの状況のまま戦闘になる事だからな。その意味ではアカミンは危険すぎる。とりあえずフローズンに恩を売って時間を稼ぐよ。幸い人質はこっちが持ってるからな。ペラーさんの意見も聞きたいし」
「りょーかい。それじゃ俺たちも街に戻るか」
「おう」
そうして軍人たちを肩に担ぎ俺たちは街へ向かった。
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