迷宮探索 10
私達が迷宮に入って数時間が経っていた。
その間見える光景は全て石だらけ。
さすが、石の迷宮と呼ばれるだけのことはあると思う。
現在は石の迷宮地下二層の中間地点へと来ていた。
そろそろ、私とリナでソロでの戦闘試すための打診をしようと指導のために一緒に来ている冒険者のアキナさんへ声を掛けようとした時、
「フィート! ここから二十メートルの範囲にかなり強力なモンスターの反応があるよ!」
リナの慌てた声を聞き私も探索をしてみる。すると、確かに私達の向かっている道筋にモンスターの反応がある。
しかもその反応はここまで戦ってきたモンスターのそれとは全然違う。
「アキナさん! 皆に出口へ戻るように指示をしてください!」
私は、大声でアキナさん目掛けて叫んだ。
「??? フィートさん急に大声出してどうしたの?」
頭にはてなマークを浮かべた様子で訊き返してくる。
「この先にモンスターがいます。しかも、先ほどまでのものとは全く違うかなり強力な個体です」
「何言っているの? そんなモンスターなんて見えないわよ」
「Aランクの冒険者なのに探索を使えないんですか!」
その言葉に少し怒ったのか、目が急に真剣な物をへと変わった。
次の瞬間、顔が真っ青になった。
「皆、ダッシュで元来た道を戻るわよ!」
全員に指示を出す。
「こっちに向かって下層にいる上位種がこっちに向かっている来ているわ! 急いで!」
目に焦りを感じる。
さすがにかなり強力なモンスターみたい。
アキナさんの指示に従い、元来た道をダッシュで戻る皆。
その後ろを着いていくアキナさんに、
「今向かってきているモンスターはそれほど強力なんですか?」
前で息を切らせながら全力で走っている皆と違い、私やリナは息一つ切らせずに走っている私達を見て、かなりびっくりされた。
「え! ええ、あれは地下四階層よりも下の階層に存在している上位種のモンスターよ。私一人なら余裕で勝てるけど、あなた達を守りながら戦うのはさすがに厳しいと思うわ、だからあなた達も急いで逃げないさい」
相手としては申し分ない。
「アキナさん、私達二人に任せてもらってもいいですか!?」
「何を言っているの、あのモンスターはあなた達では決して勝てない相手でだと言ったでしょ」
「そうですね。だからこそ相手にとって不足がないとかんがえたのです。」
何を言っているんだと言う顔をされた。
「ダメよ。あんた達の戦闘を見ていたけど殆ど戦闘に参加してなかったわよね。そんなあなた達に何が出来るというのかしら?」
最もな意見。
だが、
「その答えは先ほど見せましたよ。そうモンスターを見つけてときです」
私はにこりとしたかわいらしい笑顔で言う。
そのことを少し考えてからはっとした顔をした。
「あなた達、探索を受かってあのモンスターのことに気づいたの? 私よりも早く」
「ええ、基本的に常時使用していますのでどんなモンスターであろと見逃しません」
私のセリフにかなり驚きを見せるアキナさん。
ただ私は、少し気を抜いて探索を使っていなかった。
「分かりました。あなた達を信じてみましょう。ただし私が危険だと判断したら助けに入りますからね」
「分かりました」
それだけ答えてその場で足を止める。
既にモンスターは私達の後方、数メートルの距離まで近づいてきていた。
「リナ、行きますよ!」
「オッケー! やっと本気で戦える!」
「ダメです! 精々全力の五パーセントくらいにしときなさい」
「は~い」
少しテンションを落とすリナ。
「スキルは好きなように使っていいですよ! この世界で私達がどの程度戦えるか試すのですから」
「オッケー! 任せといて」
嬉しそうな顔。
(勇気もリナのこういうところがいいのかな~)
リナを見ながら心の中でそんなことを思ってしまった。
そんな中、モンスターが私達目の前に現れた。
全体が石でできたトラ。
モンスターを見ての印象はそんな感じであった。
サイズ的には私達より少し大きい程度。
ただ、重たそうな体のわりにトラの形をしているところから、素早く動いてきそうなイメージが浮かぶ。
「リナ! 最初にあれをお願いします」
「分かった~~! 城壁」
リナはフィートの指示に答えてスキル城壁を後方へ使用し、他のメンバーの所にモンスターが行かないようにする。
このスキル城壁はその名の通り、城などの城壁を模した防御用スキル。初級から中級程度の威力の魔法などを防ぐことの出来る範囲系の上位防御スキル。
リナの真骨頂は範囲系の防御スキルを自由自在に操り、いかなる攻撃からも仲間を守ることを得意としている。そして、それと同時にこの防御スキルを利用して攻撃を行ったりも出来る。
「フィートやっちゃって!」
「分かったわ」
私は宝物庫より剣を取り出す。
優輝と同じ戦法を今回は取ることに。
剣に対して水属性を付与し弱点を突く攻撃を狙う。
そして、それと同時にもう一つ狙いたいことがある。
私は、こちらへと近づいてくるモンスターと一直線の場所に剣を構える。その場で意識を集中。
そして、後数センチの所まで迫ってきたところえで私、地面を思いっきり蹴りモンスターへと向かって行く。
その速度はリナ以外の者では目にも止まらない速度であった。
私と交差したモンスターは真っ二つ斬られてその場で消滅した。
それと同時に、私の持っていた鉄の剣も攻撃の威力に耐え切れずに粉々になって壊れてしまった。
「フィートずるい!」
私の元へとやってきたリナがそんなことを言ってきた。
「何がずるいのよ! リナがやっちゃえっていったんでしょ」
「そうじゃないよ! 私には全力を出すなって言ったくせに自分だけ出してた!」
「全力じゃないわよ。向こうの世界で使ってたあれを試しただけ。意識して使うとさすがに力のコントロールに失敗しちゃったけどね」
「あれ使えるの?」
「ええ、問題なくね。これで私達の目的は達成かしらね。後は優輝達の方であのスキルを試してもらえれば今回の目的は達成ね」
「うんうん、早く優輝達に会いたいよ~~!」
などと言いながら私達はアキナさん達と合流し、迷宮を出て街へと戻るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます