迷宮探索 5
昨夜の見張りは何もなく無事終えることが出来た。
周りに張られたモンスター避けの結界のおかげで一切の危険もなくただ焚火の前で座っているだけで済んだ。
その後もぐっすりと寝ることが出来たおかげで、火が昇ると同時にスッキリとした目覚めを迎えることが出来たのである。
それから俺達は、テイルさんの指示に従いテントをしまい出発の準備をしていく。
朝食は昨夜の残りの携帯食料を食べて終了。
「では、これから迷宮へと突入する。その前にだ、皆自分の持っているスキルについては確認してもらったと思う。だが、君達はまだスキルの名前を知っただけでその効果については何も知らないんじゃないか」
テイルさんに言葉に対して、お互いの顔を見合わせた後頭を縦に振って答えた。
「そうだろうな。ならまずは皆が持つスキルの効果について知ってもらおう。まず自分のステータスを確認して欲しい」
各々、ステータスへと意識を集中していく。
「ここまでは昨日もやっているから問題ないだろう。まだレベルの低い君たちにはスキルは一つしかないかと思う。そのスキルへ意識を集中してみてくれ」
その言葉の後、驚きの表情を見せる皆。
「今君たちの前にスキル効果が表示されているだろう。それをしっかり頭にインプットするんだ。戦闘時、ただスキル名を発するだけでは発動することはできない。その効果しっかりと頭において理解することが大切なんだ!」
皆、ぼそぼそといきなり何かをつぶやき始める。
「テイルさん一つ質問良いでですか?」
「なんだい」
たぶんこれはここにいる全員が疑問に思っていることだろう。
「テイルさんは自身のスキルについてはどのように知ることが出来たのですか? 俺達は自身でステータスやスキルについて確認することが出来ますが、それが勇者だからと言うことですよね。ではそうじゃないテイルさんはどのようにしることが出来たのですか?」
「もっともな疑問だな! 君達の中には街の中に教会があるのを見た者がこの中にいると思う。この世界で生まれた者を達はその教会に行くことで一日一回のみ自分のステータスやスキル効果の確認をすることが出来るんだ」
納得であった。
神である俺達も同じように自分自身のステータスなどの確認を行っていた。それはこの世界でも適応されているようだ。
スキルを確認している他のメンバー達も俺とテイルさんとの会話に耳を傾けていた。
それからも暫くの間、スキルの効果を理解する時間となった。
一時間。
やっと全員のスキルの習得が終了。
「なかなか、難しいわね」
「ああ、これもなれなんだろうな」
などと周りから声が聞こえてくる。
確かになれないことをしているんだからしょうがないとも思うが、実践で使っていくならもっと早く理解しないといけないであろう。
「全員習得できたみたいだな。ではこれより迷宮に入るぞ」
テイルさんが先頭を歩き迷宮へと向かって出発した。
元々迷宮近くにテントを張っていたため、出発して物の数分で目的に迷宮へと到着した。
周りを植物のつたで覆われた洞窟。テイルさんはこの迷宮のことを『植物迷宮』と呼んでいた。
見た目通りなのだが、中に生息しているモンスターも植物系のモンスターだけらしく地階一階から地下三階までは初心者ゾーンと言われており、冒険者になりたての者が修行に来る場所とされているらいし。
そして、今回はこの初級ソーンでの戦闘訓練をすることになる。
「よし、まず戦闘するパーティーの順番を決めておこうと思うのだが、俺は順番通り一班から行っていくような形でいいと思うんだが皆の意見はどうかな?」
「いいです」
「大丈夫です」
二つ返事で返した。
「では、一班のメンバーが先頭を歩いてもらおうか」
テイルさんの指示に従い一番前に出る俺達一班。
滝を先頭に、村西、俺とレナの順番で並んでいる。
「まず皆に知っておいて欲しいのは、絶対に気を抜かないこと。これは冒険者として一番大切な事だから忘れないでいてくれ。この言葉を知っているといないとでは生存率が雲泥の差だからな。そのためにもまずは周りによく気を配り、モンスターを発見したらいち早く他のメンバーに知らせるんだ! そうすることで危険に対していち早く対処できる」
無言で頷く皆。
そして、そんな中俺達の目の前に一匹のモンスターが姿を現した。
「ラッキーだな。相手は一匹だ!」
目の前にいるのは根を足のように使って移動している、全身が緑で葉っぱのような手に、花の顔を持つモンスター。
動き自体はのろい。
「戦闘の練習には良い相手だ」
俺達は戦闘態勢へと入る。
迷宮へと入る前に一時間、スキルについて理解を深めていると同時にテイルさんは魔法やスキルの使い方についても説明していた。
魔法やスキルはまず頭の中でイメージを固めることが大切になる。そのために必要なのがスキルについて理解することであった。理解が出来てないとイメージを固めることが出来ずに発動することが出来ない。
その次に必要になってくるのは自分の体の中心、心臓の近くにあるエネルギーを感じることが出来るかである。これが出来ないと、魔法やスキルを発動の際に必要なエネルギーを持ってこれずに不発に終わってしまう。そのため、出発前にスキルの理解する際にこのエネルギーを感じるトレーニングも同時に行っていたために少し時間がかかってしまったのである。
だがそのかいがあり、村西はモンスターに向かって、
「イグニス!」
火の魔法中でも初級魔法に位置する魔法を放った。
村西の放った魔法は真っすぐモンスターと飛んでいき直撃した。ただ、初めてだったこともあり、倒し切るにはいたらなかったが、しっかりと弱点を突いた攻撃は見事であった。後ろから見ているテイルも満足という顔をしていた。
そして、
「滝君、今がチャンスです! とどめを刺して下さい!」
俺は自分の役目を果たすため指示を出す。
「分かってんだよ! お前が入れに指図するんじゃねーよ!」
両手でもった剣をモンスターに向かって振り下ろしながら言ってきた。
(誰も好きでやってんじゃね~よ)
などと言いながらも自分の中でその気持ちを抑える。
「優輝、あいつ殺す」
たまに怖いことを言うレナ。
感情をあまり表に出さないために本気なのか、冗談なんかよくわからなん。
だが、レナが怒るのは基本的に俺のためであり、それ以外のことで起こるところを見たことがない。
「やめとけ、あんな奴でも俺のクラスメイトだ」
一応、なだめておく。
「お前達よくやった! 初めての戦闘としてはいい出来だったぞ。 他の者達も彼らを見習うようにな! よし、次は二班が先頭を行け!」
俺達と二班のメンバーと位置を入れ替わり迷宮探索が続いていく。
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