迷宮探索 3
それぞれのチームで役割も決まり一度街へと戻ることになった。
街へと着くとすぐ、
「まずは武器が売っている商業区へと移動するぞ! そこでチームごとに相談して自分たちに合ったものを選ぶんだ。リーダーは自分達の持っているお金の管理もしっかりするんだぞ!」
「はい!」
テイルの言葉に元気な返事を返す皆。
武器選びはかなり重要な要素の一つ。自分の戦闘スタイルに合った物を選ぶんのはもちろんの事だが、それ以外にも、手の大きさや力の強さ、身長など様々な要素を相互的に合わせて武器を選ぶ必要がある。ただ、細かいところまで求めようとすると、オーダーメイドの物しかなくなってしまう。そのためある程度の妥協は必要だろう。ただ今回はそれに加えて予算もある。
などと考えている間に、街の東側にある商業区へとやってきた。
それぞれチームごとに別れてまず誰の武器を購入するかを相談している。
「俺達はどうする?」
「全員分は欲しいよね~。メインを一人決めてそれ以外は最低限の物をそろえる形かな?」
「それなら俺達二人の分は気にしないでください。自分達で何とかしますので」
「そうだな、お前達は俺達に守られるんだから装備なんて必要ないわな」
「ダメだよ! 迷宮探索なんて何があるか分からないんだからちゃんと揃えないと」
俺の言葉に対して、滝と村西で別々の反応が返ってくる。
「村西さん。俺達は装備をそろえないとは言っておりませんよ。自分達の予算でどうにかしようと思っているだけです」
嘘であるが。俺やレナは元の世界より自分達の装備を全て宝物庫にしまって持ってきている。そのため、こちらで買う必要がないだけである。それに、俺達は四人で何とか一か月生活できるくらいしかお金を貰っておらず、村西達とはもらっているお金にかなりの差がある。そんな状況で俺達の装備まで買うとなれば確実に二人の装備の質が落ちることになる。
「本当に?」
「本当ですよ。だから、まずは前衛ポジションの滝君の装備から見に言ってはどうでしょうか? 彼がやられては元も子もないですから」
「音無君達がそれでいいなら私は良いけど……レナさんはそれでいいの?」
「優輝がいいなら私もそれでいい」
「分かったわ。じゃあ滝君の装備から見に行きましょうか」
村西が納得してくれて助かった。意外と心配性で意地っ張りなところがあるからこのまま自分の意見を曲げないんじゃないかと思ってしまった。
それから俺達は、滝の防具に武器となる剣を選び購入。メインアタッカーに相応しいと言える物を買えたんではないかと俺は少し自身があった。
武器選びの際にはある程度助言をさせてもらった。ただ、素直に俺の言葉を信じるとは思えなかったので、あえて逆のことを伝えて、狙いの物を購入するように仕向けた。
そして、村西はと言うと、何故か俺の言葉を素直に信じ、武器選びについて徹底的に聞いてきた。何故こいつはそこまで俺のことを信じているのか不思議ではあったが頼られること自体悪い気がしないので素直に答えてやり、俺達の装備は整った。
そして、集合時間には少し時間もあり、なおかつ少し安く装備をそろえることが出来お金があった俺達は、近くにあったカフェよっていた。
全員コーヒーを注文。
「思ってたよりも防具が安くてびっくり!」
「そうだな。それにすごく手に馴染むぜこの剣」
「分かる! 私もこの杖すごくいい感じだよ~。ありがとうね音無君」
「そんなことないですよ」
そこまで言われると少し照れる。だが二人共、お店の中で剣や杖を出すのはやめてくれ。周りにいる人達が怪しい目でこちらを見ているから。
「それでは、後は野宿用の道具をかうだけですね」
「……」
あれ? 二人からの反応が返ってこない。
「ちょうどいいのがこの近くにあった」
冷静に店を見ていたレナだけが答えてくれた。
二人は完全に得忘れていたという表情だけが出ていた。
「では俺達で買ってきますので二人はここでお茶をしててください。後ついでに自分達の装備も買ってきちゃいますね」
「分かりました」
俺とレナは店の外へとでて残りの野宿用の道具を買いに行く。
それから、三十分。
「お待たせしまた。とりあえず、二人用のテントを二個、寝袋四個に携帯食料と水を人数分。それと携帯魔法陣(火)を買ってきました」
「ありがとう。これでもう完璧に準備完了でいいのかしら?」
「大丈夫だと思いますよ。後は集合場所に戻るだけかと思います」
「分かったわ」
いつの間にか俺が主導で準備が進んでいるように感じる。
「なんでお前が仕切っているんだ!」
滝が俺に噛みついてくる。
「このパーティーのリーダーは村西さんだろ! 何もできない出来損ないのお前が出しゃばってんじゃね~よ!」
かなり俺のことを嫌っているように思えるこの口調。一体何が原因なのか? 思い浮かべて見ると、一つだけ思い浮かぶ節がある。それは、レナ達レインボーガールズとの仲ぐらいだろうな。それに合わせて学年のマドンナともいえる村西までも俺を慕っているように見えるからこそ余計に腹立たしいのだろう。
「そんなつもりはなかったのですが、滝君の気分を害したのなら申し訳ない」
俺は頭を下げる。
だがそれが余計に頭にきたのだろう。
ドーン!
椅子を思いっきり倒しながらその場に立ち上がった。
そんなとき、
「もう、二人共やめなよ。私達はパーティーの仲間なんだよ。だからこそ助け合いが大事。音無君には音無君の、滝君には滝君の出来ることがある。今回の買い物は音無君がそういう知識を持っていたから私は任せただけだよ。それに戦いになれば音無君達に私も滝君に頼ることになるんだよ。適材適所ってやつだよ」
俺達の二人の間に立ち、仲裁する村西。
そのことで頭が冷えたのか椅子を起こし椅子に座りなおす滝。
だが、それ以降会話がぶつりと途切れてしまった。
それから、暫くして日が傾き始め、俺達は集合場所である南門へと到着した。
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