迷宮探索 2
テイルによって倒されたスライムからは小さな結晶とグミのような物が落ちてきた。
「これがドロップアイテムだ」
スライムから落ちた物を俺達に見せてくる。
「この結晶だとどれくらいの価値なんですか?」
「大体銅貨一枚か、半銅貨は七、八枚くらいだな。だからスライムはいくら倒しても稼ぎにはならね~んだよ」
その話に対して、この世界に通貨のことを理解していない俺達二人にとってはどれくらいなのかよくわからない。
皆の後ろで頭を捻っている俺達に、
「そういえば後ろの二人は通貨の話を聞いていないんだったな」
「はい」
「この世界の通貨は全部で六種類だ。半銅貨、銅貨、半銀貨、銀貨、金貨、白金貨だ。半銅貨は十枚で銅貨一枚と同じ価値になる。銅貨は十枚で半銀貨一枚、半銀貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨、金貨十枚で白金貨って具合だ。冒険者が一日の生活を送ろうと思うと銅貨が六枚から半銀貨一枚位は必要と言われてるな」
一応は理解できた。
後は俺達が受けれる依頼の報酬がどれくらいかによるかだが、今貰っている金なら一か月くらいならギリギリ生活も可能である。
その間に、どうにかすればいいだろうと考えていた。
「よっし! これで戦闘に関しての説明は終了だ! 一旦街に帰るぞ」
「ええ! 帰るんですか?」
全員が声をそろえる。ただし俺とレナ以外。
「そうらそうだろ。お前達はまだ武器を持っていないだぜ。そんな丸腰の状態でどうやって戦闘訓練をするっていうんだよ。それに今夜は迷宮近くにある森で野宿を体験してもらうんだ。そのための準備も必要ってもんだ」
「……」
驚きで声を失っている皆。
「どうしたんだ?」
「なんで野宿なんかするんだ! 一度街に帰るんだったら宿に泊まって明日の朝向かえばいいじゃないか!」
他の全員もその通りだと頷いている。
まあ、この世界に来たばかりで、いきなり野宿。そんなことあんな都会育ちのこのメンバーには無理だろうな。
「何を言ってるんだ。この迷宮探索はお前達の戦闘訓練のために行われているが、冒険者にはそれ以外にも大切なことがある。その一つが依頼途中の野宿だ。これに慣れていると、いないとじゃ雲泥の差が出るんだぜ」
俺もこのテイルの案には賛成だ。依頼途中の野宿。それは大抵の場合森の中で行わえることが多い。
その際にはパーティー内での役割分担をしての食事の準備に、寝床の用意など様々な仕事がある。それに、真夜中には誰かが監視役になり決めた時間で交代。といったいろいろな役割がある
俺達も未開の星へ行く長期的な依頼の際にはよく野宿などをやっていた。未開の地なのもありかなり強力な獣なども存在しており、夜の監視役はかなり重要な役割をになっていた。
そのことを今のうちに学んでおけるのはかなり貴重な機会であると言える。
「……」
全員下を向いてかなりテンションを落としていた。
「よし、ではまず四人一チームに分かれてくれ。どう分かれてもいいぞ」
「テイルさん! 何故四人のチームに分かれるのですか? ここにいる全員で戦えばいいじゃないですか!」
「そのことか、基本的に冒険者がパーティー組むとき四人~五人でパーティーを組むことが多いんだ。今回は全員で十二人いる。だから四人チームを三チーム作ろうと思ってるんだ。この迷宮探索ではパーティー内での役割分担なども学んでもらいたいと思っている」
納得のいく回答。俺はそう思った。
これからの生活ではどうしても四人一組での行動に自動的にシフトしていくだろう。そのとき、今回の経験が生きてくるんだと俺は思った。そしてこの中に俺やレナ以外にも同じ考えを持つ者がいた。
「じゃ皆、四人チームにさっさと別れちゃおう。じゃないと、日が暮れちゃうよ」
クラスのリーダー、村西亜理紗が皆に声を掛ける。
「そうだな。で、どう分けれるんだ、亜理紗」
「そうだね。適当に組んでもしょうがないし、まずは皆のスキルを聞いていってバランスよく組んでいこうかな」
村西亜理紗の一言で皆がそれぞれの持つ能力について発表していく。
近接戦スキルを持つ者、魔法を使える者、支援が出来る者と様々ではあったがバランスよく前衛、中衛、後衛と別れていた。
そして最後に俺達の二人の番がやってきた。
「音無君の持っているスキル聞いてもいいかな」
レナと二人でいた元までやってくる村西。
「ああ、俺のスキルは戦闘全体を把握する能力だ。だから後衛に立って指示を出したりすることになると思う」
「そっかー、頭がいい音無君にあったスキルだね。あと、レナさんも聞いても、い、いかな?」
「私のスキルは回復。ある程度の怪我なら治せる」
「教えてくれてありがとう。そっか二人共後衛系のスキルなんだね。う~ん、どうしようかな~」
西村が頭を悩ませている。どのようにチーム分けをすればバランスの取れたパーティーになるのか?
それから、しばらく頭を悩ませた西村。
そして、
「この三チームに分かれようと思います。まず第一チームは、前衛に
村西によって発表されたチームに対して文句が出ることはなく皆納得していた。
「よーし、チーム分けも出来たみたいだし、一旦チームごとに集まって役割分担をきめようか。そこまで出来たら一旦街に戻るぞ」
テイルの掛声で、それぞれがチームごとに別れて集まる。
俺達四人も同じであった。
「亜理紗! なんでもこの二人を俺達のパーティーに選んだんだよ!」
滝が西村に噛みつく。
「こんななんの力にもならない足手まといを二人も入れてどうするんだ!」
「そうかな~? 私はそう思わないけどな。音無君達もそう思うよね」
何故こっちに話を振ってくる。
「どうかな? 僕達は自分にできることを精一杯やるだけかな?」
「私も優輝と同じ」
西村は俺達のことに何か気づいたような様子がある。
別に気づかれても今更どうでもいいのだが、まだ知られたくはない。
「まあいいや。どうせ組むのは今回だけだ、足手まといだけにはならないでくれよな」
「分かったよ。よろしく」
俺は手を差し出すがその手を握ってはくれない。歓迎をされていないようだ。
「これで一件落着だね。じゃあ」
村西は俺と滝、それにレナの手を取って無理やり握手させる。
何とか、パーティー内の仲を取り持とうとしてくれているようだ。
「よしよし、じゃあ役割決めて行こうかな、まずリーダーからだね」
「俺は、西村が良いと思うぜ。クラスでもリーダーだったしよ」
「私は、優輝がいい」
何故か滝に歯向かうように言うレナ。
レナは神での俺のことを知っているからそう言っているんだろうけど今は力や存在を隠している状態だってこと分かってるんよな。
「音無君はどう思う?」
「西村さんでいいよ。いつも皆を引っ張てくれてるしぴったりだと思うよ。それに副リーダー滝君でいいんじゃないかな。僕達はこのチームでは足手まといいならないようにするだけでいっぱいいっぱいだからね」
「わかったわ、その代わりモンスターとの戦闘のときは指示だし任せたからね」
などと言ってくる。
「分かったよ。俺にできる限りで頑張らせてもらうよ」
こうして俺達の役割分担は決まった。俺やレナの本当の能力を隠したままに。
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