迷宮探索 1

 試合も終わり、これでやっと終わりかと一安心した。


 三人も少し遊んできたみたいな感じに涼やかな表情で話している。


 何はともあれこれでやっと冒険者になれるのかと思ったその時、


「適性検査お疲れさまでした。それでは迷宮試験へと移らせていただきます」


「は~~~~!」


 思わず大声を出してしまった。


「これで終わりではなかったのか?」


「私は次はと言いましたが、終わりだとは一言も言っておりません」


 ふと先ほどのことを思い浮かべて見る。


 確かにこの人はこれで終わりとは言ってなかった。


 俺の後ろにいる三人の顔を見てみると明らかにめんどくさそうな顔をしている。


「それでは一度上に、他の皆さまも説明を終えられて集まられているはずです」


「???」


 頭を捻る俺。


 ここで他の皆と言うと俺達と一緒にこの世界に来たクラスメイト達しか思い浮かばないが、まさかそんなことはあるまいと思った。


 だが、その予感は見事に的中した。


 地下よりギルド一階へと移動すると、他のクラスメイト達もギルドロビーへと集まっていた。


 その前方に髭の生えた男が一人。


「あの人は?」


「ギルドマスターになります。それと隣にいる三人はこれからの迷宮探索へと着いていく付添人のAランク冒険者三人になります」


 お姉さんの言う通り、ギルドマスターの隣に男性二人に女性一人がいた。


 女性は杖を持っているところを見ると魔導士だろ。後の二人は腰や背中に剣を持っているところからも剣士と見える。


 それに、力的にも先ほどの試合で戦った冒険者達と同じくらいの実力と見える。


 つまりは俺達の試合の相手はAランク冒険者だったのだ。


(さっきの試合もう少し手を抜くべきだったかもしれないな)


 などと思ってしまった。


 だが、適性試験でAランク冒険者と戦わすとか絶対負けさせるつもりだったとしか思えん。しかも適性を認める条件が勝つことってありえないよななどと考えていた。


「これで全員そろったようだな。ではこれからのことを話すからよく聞いておいてくれ」


 それに皆頷く。


「これから君達はまず三つチームに分かれてもらう。まずはそのチーム分けを発表する」


 それから、クラスメイト達の名前が次々に呼ばれていく。


「優輝どう思いますか?」


 小声でフィートが話しかけてきた。


「何とも言えない。だが、あの国王は俺達四人をどうしても冒険者にはしたくないように見えるな」


「何故ですか?」


「受付のお姉さんが持っていた紙、そこそこ良質な物だった。そのことから城から届けられた物であるとわかる。それに城での執事の俺達への態度、明らかに何かを企んでいたようにも見えた」


「でも私たちのステータスは隠蔽で変更して気づかれていないはずでは?」


「ああ、だが雰囲気か何かで怪しいと思われたのかもしれないな。だからこそ先ほどの無理難題的な検査をしたのだろうしな」


「では今回の迷宮探索もなにかあるかもしれませんね」


「ああ、だからそこの二人も良く気を引き締めて取り掛かるようにな」


「了解」


「分かってるよ~」


 リナは本当にわかテイルのか? などと思ってしまったが、確かに何かを企んでいることは間違いがないだろう。


 だからこそ気を引き締めてかからないと俺達でも痛い目に合うかもしれない。


「次に、音無優輝はA、レナはA班。フィート、リナはC班。以上だ。それぞれの指導教官の元へと集まってくれ」


 俺達はAと書かれた旗を持つ男の元へと近づいていった。


 それぞれの班に十二名ずつ振り分けられた。


 俺が選ばれたA班のクラスメイト達の中には学年一の美少女と名高い、村西亜理紗がいた。


「この後は、君達の目の前にいる冒険者が指示を出してくれる。その指示に従うように」


 それだけ言ってギルドマスターはギルドの奥へと戻っていった。


「A班の皆こんにちは、僕はAランク冒険者のテイルだ。よろしくな! まず初めに今回の迷宮探索の目的は君達にこの世界での戦い方を知ってもらうための物だと考えてもらいたい」


 何となく予想していたが思ってた通りか。


「では早速、迷宮へと向かおうか。その道中でいろいろ話させてもらうよ」


 テイルと言う男はそれだけ言うと、ギルド出入り口に向かって歩き始めた。


 テイルの言葉に対して選択権のないクラスメイト達は後ろを着いてギルドから出て行く。


 それに俺にレナもこの迷宮探索を成功させないと冒険者になれないため着いていくしかない。


 それからしばらくして、街の外草原。


「まずはこの草原で冒険者としての戦い方について説明するね。あそこにいる生き物が見えるかい」


 テイルの指さす方を見ると、ゲームなどでよく見る生き物がいた。


「スライムですか?」


「そうだね。あのように普通の生き物と違う体内に魔力の核を持つ生き物のことを私達は魔物と呼んでいる。そして僕ら冒険者はモンスターを倒すことで手に入る魔物を核、別名魔力結晶とそのモンスターより手に入る皮などの素材を売って生計を立てているんだ。だからこそこの世界で生きていくため冒険者になる君達にはその戦い方をしてもらわないといけない」


「でも私達にそんな力なんてないです」


「そうだよ。だって私達ただの十六歳の高校生だよ」


 クラスメイト達の不安。それが声に出ている。


「そんなことを言われてもね。まあまずは僕の戦い方を見ていて」


 テイルはスライムに向かって行く。それに気づくスライム。


 やる気に満ちているのか左右に飛び跳ねながらタイミングを見計らっている。


 テイルは腰に下げていた短剣二本を逆手に構え臨戦態勢に入る。


「まずは近接戦の戦い方について説明するよ。たぶんこの中でも一番多い戦闘スタイルにはなると思うけど、まずは自分にあった武器を見つけることが大切だ。俺ならこの短剣二本のようにね」


 クラスメイト達はそれぞれにお互いの顔を見合わせている。


「まだよくわからないよね。そこで君達にはとっておきの物があるんだよ。この世界の者達は持っておらず、召喚された勇者のみが持っているステータスだよ。そのステータスの下の所には君達の持つスキルが表示されているらしいよ。だからそれを見れば君達の戦い方を見つけることが出来るはずだよ」


 その言葉に自身のステータスへと意識を集中する皆。


「でも今は僕の戦い方を見ててね」


 テイルは、スライムに向かってダッシュで近づいていく。


 それに対してスライムも真っ正面からの突進で立ち向かおうとしている。


 先に仕掛けたのはスライム。全力の突進。それに対してテイルは、


「アクロバティック」


 スキルを使い攻撃をひらりと躱してスライムの背後を取る。


 そして、右手の短剣で一太刀入れて戦闘終了となった。


 

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