第二章 一話 受診の前日の心境
僕の病状は不安定だ。だから、病院に受診しなければというふうに考えてはいるけれど、なかなかその気にならない。
趣味で書いている小説や読書も止まってしまった。確か、愛ちゃんも読書が好きだと言っていた。どんなジャンルの作品を読むのだろう。いつも、会ったら習字の話しが多いからお互いの好きなことを話したことがほとんどなかった。
絵里さんの好きなものって何だっけな。煙草とお酒は好きなはず。彼女は本は読むのかな? そういうイメージはあまりないけど。
僕の病気というのかな、何ていうのかは知らないけれど、意欲が減退した。こんな恐ろしい病気ってあるのか。知らなかった。
でも、病院に独りで行くのは嫌だな、心細い。愛ちゃんに付いて来てもらおうかな。そう思い行く気の無いLINEを送った。
<愛ちゃん、こんにちは。頼みがあるんだけど聞いてもらえる?>
彼女は今、仕事だろうか。そう思っていると返事がきた。
<こんにちは! どうしたの?>
意外にも早い返信。いつもならもう少し時間がかかるのに。
<できたら病院に行くの付き合ってくれない? 何だか不安で>
<いつ行くの?>
<明日だよ>
返信までに少し時間を要した。それから、
<いいよ、お母さんに頼まれた用事あったけど、事情を話したら「行ってやんなさい」と言ってくれたから>
あ、それは申し訳ない。なので、
<本当にいいの? 何か悪いなぁ……>
<大丈夫だよ。独りで行かせるの可哀相だし>
どうやら同情されているようだ。でも、ありがたい。やさしい親子で。
<ありがとね。一時三十分までに病院に行くからその前に迎えに行くね>
わかったと返信があった。
愛ちゃんには恋愛感情は無いけれど、仲良くさせてもらっている。向こうも僕に対して恋愛感情はないだろう。いや、ない。そういう感情があるということを感じたことがないから。
愛ちゃんに明日会うから、シャワーぐらい浴びなきゃ。面倒だけれど。仕事に行く時も接客業だからがんばって浴びている。臭くてクレームがきたら嫌だし困るから。
僕は大抵がんばると思わないとがんばれない。なんでこんなにメンタル面がよわいのだ。病院に行かないといけないなんて思いもよらなかった。
ネットで調べてもやはり症状の名前は、幻聴・幻覚・妄想と書いてある。病名はいくつかある。うつ病、統合失調症の可能性があると。まあ、とにかく病院に行かないと薬だってもらえないし、病名もはっきりしない。
もしかして、父の遺伝か? と、ふと思った。今の段階ではなんともいえないが。
病院に行く前日の気持ちとしてはあまりいい感じではない。嫌な予感がする。
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