第一章 三話 仕事と返信がこないLINE
僕は調子悪い中、仕事に行った。すると、
「君、大丈夫か? 何だか具合い悪そうだぞ」
と、店長に事務所で言われた。
僕は無理矢理、
「大丈夫です!」
強い口調で言った。
「そうなのか、無理し過ぎるなよ」
「はい」
そう答えて出勤のタイムカードを切った。
バックルームに行くのが少し怖い。なので、従業員に頼んだ。
「皆藤くーん。ちょっとバックルームから持って来て欲しいものがあるんだけど」
彼は、不思議そうな顔をしながら僕を見ている。まるで、自分で持ってくればいいのに、というような表情。
「はい、なんですか?」
「ハンガーを十個持ってきてくれる?」
「わかりました」
彼は
彼は太っていて背が低い。肌も黒いし。これらがコンプレックスになっているのか、もともとの性格なのか、大人しく気が小さいと僕は感じている。
以前、皆藤君とお昼休憩を一緒に入った時、彼の大食いには驚いた。大盛りのカレーと大盛りの中華丼を注文し、更に甘いコーヒー二杯と、カルピス一杯、ジンジャーエール二杯飲んでいた。これじゃあ、太るのも無理はない。本人には言ってないけれど。
まあ、皆藤君は飲食が好きなんだろうな、と思っている。
彼が戻って来て、
「足りない商品を補充するから、皆藤君どんどん持ってきてもらえる?」
「わかりました」
何だか不満気な表情だ。でも、僕の状態を店長にも話してないのに、皆藤君に話すわけにはいかない。だから、隠している。他の従業員もあと三人いるけれど、皆藤君と同様だ。
いつまで隠し通せるかな。とりあえず帰宅したら、愛ちゃんと絵里さんと僕の三人でグループLINE開けたらいいなぁ。相談したいから。
仕事を終えたのが夕方六時頃。今の時期は秋から冬に向かっているので、陽が沈むのが早い。いわゆる季節の変わり目というやつ。この調子の悪さはもしかして、季節的なものもあるのかな。分からないけれど。
疲れたし、調子も悪いので早速グループLINEで話を聞いてもらおう。何も言ってないから、もしかしたら二人とも都合が悪いかもしれない。
愛ちゃんと絵里さんにそれぞれLINEを送った。<今、三人で通話できる?>と。
僕は辛いので自室にあるベッドの上に横になった。
(調子わるい……疲れた……)
と、心の中で呟いた。LINE通話をするのも面倒になってきた。でも、もう二人に送ってしまった。仕方ない、話せるかどうかは分からないけれど、聞いてもらおう。
約一時間後、母が、
「幹人―、ご飯だよー」
と階下から聞こえる。食べたくない。お昼ご飯も少し食べたくらいで、それから何も食べていない。なので、ゆっくりと起き上がり部屋から出て、
「母さん、僕ご飯食べたくないからいらない」
母は黙った。そして、
「仕事してきてお腹空いてないの? やっぱり体調悪いんじゃないの?」
心配そうな表情に母の顔は変わった。
「少し休めば大丈夫だ」
「後ででもいいから食べた方がいいよ」
僕は何も言わず自室に戻り横になった。
LINEはまだこない。
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