第一章 二話 体調不良
今日、仕事を十八時に終えた僕は何だか調子が悪い。
職場の中のバックルームに商品を取りに行った時、誰もいないのに声が聞こえた。最初、店内のお客さんが喋っているそれだろうと思った。
その日は気のせいだと思い店を出た。
だがだ。帰宅途中の車の中でも、カエレ、だとか僕の名前を呼ぶ、ナリタ、という声が聞こえた。それと共に具合いも悪くなってきたような気がする。いったい何なのだ。
自宅に着いた頃には気が抜けたからか、安心したからか謎の声は聞こえなくなっていた。僕は実家暮らし。帰宅してすぐに入浴した。その後、夕飯を食べた。母に、
「幹人。あんた、なんか顔色よくないね」
そう言われ、さっきのことを思い出したので話した。すると、
「いやだねぇ、狐にでも憑かれてるんじゃないの」
母は苦笑いを浮かべている。
狐に憑かれている? そんなばかな。きっと疲れのせいだろう。今日は日曜日でお客さんもたくさんいたので忙しかったから。
今は夜十一時――
いつもの寝る時間だ。でも、こんなに疲れているのに眠くない。どうしたんだ、僕は。今日はいつになく気持ちが高ぶっている。そのせいで眠れないのか。
気にする性格の僕はネットで調べてみた。すると、
【幻聴】
という言葉が出てきた。なんだろう。もっと読み進めると、心の病が関係しているようだ。確かに気持ちが疲れやすいところは昔からあると思う。でも、この僕が病気? しかも精神的な? まさか。信じられないのでネットを閉じた。一気に不快な気分になった。
両親に話してみた。完全否定した。僕も病気になんかなりたくないので、否定している。だからあの声は気のせいだと無理矢理思い込んだ。
だが、状態は日に日に悪くなっていった。味覚が変な味に感じたり、自分の悪口を言っている、見張られている、だまされているといったことを思うようになった。なぜ? まさか……いやいや違う! 病気じゃない。絶対違う! 僕は受け入れることはできない。
でも、両親は僕の顔色や行動を見て異変を感じたようだ。
「幹人。あんた何か様子がおかしいよ。大丈夫?」
「う、うん。大丈夫だ」
心配そうに見つめる母の視線が痛い。
「そんなに心配しなくても大丈夫だ」
「それならいいけどさ」
母はよく見ているなぁ。こんな状態で今週、習字教室に行けるだろうか。いや、行く!仕事もあるし。自分に負けてられない!
今は夜中の一時頃。まだ、眠れない。僕は不意に思った、呪われている。なぜ? 気持ち悪い……。
どんどんネガティブになっていく。僕は若干、危機感を覚えた。こんな状態で仕事や習字教室にいけるのか? 部屋には僕一人。電気を消して真っ暗にしている。
また、聞こえてきた。
シネバイイノニ
「幻聴」というやつか? それにしても、何故こんな言葉が聞こえてくるんだ。
幸いなことに日付が変わったので、今日の仕事は休みだ。怠いし、寝ていよう。でも、悔しい、病気であることを否が応でも自覚させられてきた。
休みだから病院に行くか? でも、何科にかかればいいんだ? 明るくなって親が起きてきたら訊いてみよう。
愛ちゃんや、絵里さんにも相談してみよう。グループLINEで。
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