様々な共通点

遠藤良二

第一章 一話 習字を介しての活動

 ここは北海道の田舎町。僕の名前は成田幹人成田幹人なりたみきひと二十五歳。職業は百円ショップの店員をしている。これでも一応、主任。黒髪に黒縁眼鏡を掛けていて高身長。ちなみに、百八十センチくらい。体形は細身だ。


店長が言うには、「君は優しくて真面目で従順だ。だが、神経質なところがあって気が弱いのか精神的に疲れやすいところがあるな」という話だ。よく見てるなぁと思った。言われた通りかもしれないと思った。


今の職場は高校を卒業して三回目の転職先。最初に就職したのはスーパーマーケットの店員。ここは新卒者を正社員で募集していて何とか就職できた。でも、以前から疲れやすい僕は、正社員の従業員ならこなしている業務を疲労が蓄積し、こなすことが困難になり退職した。上司には「少し休んでから復帰してもいいんだぞ」とありがた迷惑なことを言われたが丁重に断った。嫌気もさしていたし。二社目は、パートでヘルパーの仕事に就いた。認知症老人の住むグループホームに。祖父母に可愛がられた僕は老人は嫌いじゃない。だけど、帰宅願望が強い老人やお風呂介助に手こずり、それでも一日四時間勤務だったから約三年続いた。でも、やはり疲労困憊でダウンした。パートだから可能だったのか暫く休暇を貰った。実家に住んでいたので母は「いつまで休むの?」と言われるのが苦痛だった。なので、その翌日から出勤した。疲れは少し軽減した程度だった。その三カ月後、また疲れてきてこれはもう無理だ、仕事が嫌にもなってきたと思った。なので、退職した。


 親には仕事が嫌になったとは伝えていない。割と厳しいので、下手なことは言えない。今の仕事に就いて一年たらず。新聞の広告チラシで見つけた仕事だ。


 僕の特技は書道だ。毛筆七段、硬筆五段。習字教室には今でも通っている。楽しい時間だ。初めて習字教室に行ったのは、小学校五年生の頃。最初の頃、内気な僕は通うのが嫌だった。今は慣れて、逆に楽しいと思っている。習字教室で知り合った生徒もいるし。その生徒というのは坂本愛さかもとあい、二十四歳。趣味は僕と同じで読書。僕は執筆もするけど。結構、愛ちゃんとは気が合う。でも、僕は恋愛感情はない。愛ちゃんはどうなのだろう。


彼女は大学を卒業して今はグループホームに住んでいる認知症老人のヘルパーをしている。彼女はとても優しい。老人のお世話をするだけのことはある。特技は愛ちゃん自身が言うには習字だと言っていた。でも、僕より段は低いらしい。確か毛筆が五段、硬筆三段。僕の方が上なのは早く習い始めているから当然と言えば当然だろう。


今のところ、愛ちゃんには彼氏はいないらしい。子どももいない。


他にも習字教室で仲良くなった生徒がいる。その人の名前は沢谷絵里さわたにえり、二十六歳。彼氏がいるので僕は習字教室でしか話せない。本人に訊いたところに寄ると彼氏は嫉妬深いらしい。だからそこ以外で遊んだりはできない。でも、愛ちゃんとは習字教室以外でも会ったりしているらしい。前に愛ちゃんから絵里さんとカラオケに行って来たと聞いたことがある。羨ましいと思いながらも仕方がないと諦めている自分がいる。


絵里さんは習字教室に来るようになって多分五年くらい経つだろう。前に何段? と訊いたところ毛筆は三段、硬筆は初段と言っていたはず。


彼女の職業は警備員。過酷な仕事だと思う。ずっと立ってなきゃいけないだろうし、トイレはどうしているのだろう。訊いたことないなぁ。でも、きっと子どもの為なんだろうなという思いに至る。


絵里さんは男の子どもがいる。愛ちゃんから聞いた話しだと、七歳になる子どもらしい。それと絵里さんが十九歳の頃、男に遊ばれて出来た子どものようだ。本人から聞いた話しではないから口が裂けても口外できない。信用問題に関わるから。もし、言いふらすようなマネをしたらせっかく積み上げてきた信用がガタ落ちだ。それは避けたい。


僕が通っている習字教室は月曜日から金曜日まで営業していて土日は休み。僕は主に金曜日に行っている。たまに別な曜日に行く時もあるけれど。金曜日が大抵休みなので、午後一時までに行って二時間くらい練習してくる。愛ちゃんも絵里さんも金曜日が多い。別に合わせた訳ではないのだが、彼女達の都合とちょうど合ったのだろう。


こんな感じで仲間と書道を介して活動している。

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