当然の結果!

フォーマルは突然の国王(父親)から怒気と殺気を向けられ尻餅をついて震えた。


「各貴族の賄賂を送る金銭の捻出に、領地の税率を王国の法定以上に上げ、民は困窮しているのだぞ!貴様が国王になれば、国中の民が困窮するわ!」


ガタガタ…………

ガタガタ…………


「国は民無くして成り立たない!一時の贅沢を満喫しても、民が居なくなれば国は衰退し、他国に攻められ滅ぼされる。故に、上に立つものには責任と義務が生じるのだ!民を外敵から守り、民の財産と生活を守るからこそ、領民は貴族を敬い、我々が成り立つのだ。これを『ノブレス・オブリージュ』と呼ぶ。権利のみ受けとり、義務を果たさない者は貴族、王族を名乗る資格はないと知れ!!!」


フォーマルは完全に腰が引けて立つことが出来ないでいた。


「これはフォーマルのみではなく、ここにいる貴族全てに言えることだ。今一度、民の為に、自分の領民の為に、国の為に原点に立ち返り、己を見直すのだ!」


バサッ!!!


国王様がマントを靡かせて、手を前に出して言い放つと、謁見の間にいた『ほぼ』全ての貴族が片膝を付いて胸に手を当て、最敬礼をした。


「………まったく、この親父を超えないといけないとはな」


アーク王子は苦笑いをしながら、小さく呟いた。


「ふっ、貴様と意見が合うとはな。お互い、偉大な父親を持つと苦労するな?」


お兄様とアーク王子はお互いを見て笑った。


「…………そんなバカな」


ワナワナと震える人物がいた。


「さてと、フォーマルにも罰を与え無ければならないが、それ以上に罪が確定している者を処罰しよう」


罪が確定している者?


国王の言葉に、多くの貴族が首を傾げた。一部の貴族はフォーマル王子から貰った賄賂に付いてではと、青くなる者もいたが国王は名指しした。


「衛兵よ!彼の者を捕らえよ!」


呼ばれた衛兵達は、即座にその者を組伏せた。


「ぐわっ!何をする!?」


捕らえられたのはグレイス公爵だった。


「………グレイス公爵よ。私が何も知らないと思っていたのか?」

「こ、国王様!これはなんのマネですか!私にはやましい事などありませぬ!」


国王様はゴミを見るような眼でグレイス公爵を睨み付けた。


「…………黙れ」


びくっ!


地の底から響くような低い声で言った。


「貴様が公爵なのは、貴様の祖父である前公爵が、かつて帝国が攻めてきた時に、国の為に自らを囮にして、命を賭して帝国軍を追い払った事に対する忠義に報いるためだ。それなのに─」


国王様は一度、間を置いて言った。


「それなのに、貴様は王国の情報を他国に売った!許しがたい所業である!」


!?


ざわざわ!!!

ざわざわ!!!


えっ、どういうこと?


「1年前、私の長男である王太子が遠征に出掛けて事故死した件………出発の日時や、巡回ルートを他国に伝えたな?」


!?


「大方、現王太子では扱えないとわかり、自分の言いなりに出来そうなフォーマルを王太子にするつもりだったのだろう?」


「ち、違います!そのような事はしておりません!」


ここで認めると死罪が確定する。なんとか誤解を解かなければと、必死に弁解する。


「別に貴様の言い訳など、どうでもよい。すでに、貴様の屋敷に騎士団を向かわせているからな」


!?


「証拠もないのに、そんな事まかり通るとおうもいか!?」

「急遽、グリーンウッド殿が来ることで、急に各貴族を城に集めたのだ。貴様の屋敷に隠されている裏帳簿や裏取引の機密書類を片付ける暇は無かったはずだが?」


国王の言葉に、絶望し力が抜けたグレイス公爵であった。


「探査系魔術に特化した宮廷魔導師も同行している。証拠が出てくるのも時間の問題だろう」


国王はグレイス公爵を地下牢へ連れて行くことを命じた。


こうして、波乱の王太子の任命式は幕を降ろしたのだった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る