英雄!?
2大公爵家が大々的に宣言した事で謁見の間は騒然となった。
半分ほどの貴族がフォーマルを推薦したが、逆に言えば2大公爵の依子である貴族達を含めた半分はアーク王子に付いたのである。
これは王国を二分したと言っても過言ではないのだが…………
「何故だ!今までこれと言ってアーク王子を擁護していなかったではないか!?」
焦ったグレイス公爵は二人に詰め寄った。
「そうだ。昔のアーク王子様はともかく、今の立派になられた『アーク王太子殿下』様なら、我々の後ろ楯がなくとも、この程度の逆境を乗り越えてくれると信じていたのでな」
「そうだ。アーク王太子殿下なら民からの信頼厚く、国民全てが祝福するだろう」
さも当然のように言い放つ所は流石である。
「このような辺境の田舎貴族がなんだと言うのだ!我が最強の私兵にて滅ぼしてもよいのだぞ!」
平然と他家を攻め滅ぼす宣言に、普通なら顔をしかめる所だが、二人の公爵は大笑いをしたのだった。
「わっはははは!」
「ぷっ、くくくくっ」
いきなり大笑いされて唖然とするグレイス公爵だったが、すぐに我に返ると反論した。
「なにがおかしい!!!」
「何が最強の私兵だ。そんな雑魚私兵など、何百人居ようと、ここにおられる英雄カウス殿1人で全滅させられるわ!」
!?
「え、英雄だと?」
お父様が英雄なんて、わかっている方もいるのですね♪
「あらあら♪あなた、英雄ですってよ♪」
お父様も照れくさいのか鼻を掻いた。
「スカーレット公爵、英雄と呼ぶのはよしてくれ。俺は大した事はしていない」
「何を仰られるのです!単騎で、赤龍など狩れる者がどれほどいますか!」
!?
「赤龍だと!?」
ざわざわ…………
ざわざわ…………
最強種の龍種で、体格が大きく空を飛び、灼熱のブレスを吐く、災害級の魔物で誰もが知っている。
「そんなのは、デタラメ─」
「因みに、今回の支援物資の武具に赤龍の素材で作られた鎧兜や剣など貰いました。現物を持ってきております」
国王の側から綺麗に飾り付けられた武具が運ばれてきた。
おおっ!!!!
余りの美しさに、会場の目が釘付けになった。
「そ、そんなバカな…………」
フォーマルとグレイス公爵は茫然と見つめるしか無かった。
「さて、単騎で龍を狩れる王国最強の英雄に、大陸でトップ10に入る魔導師スピカ殿を妻に持ち、還らずの森の防衛に5千人の兵士を常備しているグリーンウッド辺境伯爵に、逆らえる者は居るのかな?」
国王の言葉にグレイス公爵は真っ青になった。
中央貴族の事は調べていたが、辺境の権力と程遠い貴族には興味が無かったので、詳しく調べたりしていなかったからだ。
「では、反論もないと判断し、今日この時よりアーク・ユグドラを王太子に任命する!」
パチパチパチッ!!!
パチパチパチッ!!!
すでにフォーマル陣営だった貴族達もアーク王子を王太子になることを認めた。
すでに、2大公爵家が支持し、まさかの王国最強の軍を持っているグリーンウッド辺境伯までアークを支持したのだ。すでに勝敗は決した。
ならば、末端の貴族はフォーマルからアークに乗り越えるだけである。
それが貴族の処世術なのだから。
「さて、私は大切な長男が死んでから次の王太子を今まで決めて来なかった。それは、次期王太子となり、次の国王になるものの行動を見守る為であった。国王になれば国の為に尽くさねばならぬ義務が生じるからだ。私利私欲に走れば、数年で国は荒れ他国に侵略され滅びるからである。そして、ここ1年で見事に王族として行動したのはアークであった。グリーンウッド殿が支持しなくとも、私はアークを王太子にしたであろう!」
国王の言葉にフォーマルは驚愕した目を向けた。
「さて、フォーマルよ?お主はこの1年で何を成した?」
国王の言葉に答える。
「わ、私は各貴族の協力を求め奔走しました!そのかい合って、半数の支持を取り次げました!」
「うむ、確かにそれも1つの成果と言える。だが、お主に任せておいた直轄領地の状況はどうだ?」
「別に、上手くいっておりますが………?」
フォーマルの言葉に国王は酷く落胆した。
「ほぅ?通常の5倍もの税を取り立て、民は食うのもやっとで、身売りする者が増加し、直訴した民を処罰している現状が上手くいっていると………本気で思っているのか!!!!!」
国王の突然の怒り声に、多くの貴族が震え上がった。
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