第二章 四話 死後硬直
実家に到着した俺は、早速庭を掘る為に物置きに行きスコップを持って来て作業を始めた。俺が掘っている所は、ブロック塀に囲まれた箇所で結構地盤が固い。
仕事上、スコップは使い慣れているがそれにしても固い。この辺りを水浸しにしたらどうだろう、と思いまた物置きに行ってバケツを一つ持って来て家の中に入り蛇口をひねった。だが、水が出ない。それもそうだ。この家には誰も住んでいないから役場に行って水道を止めてもらったのだ。すっかり忘れていた。
そうだ、畳をはいでその下を掘ろう。佳織は身体が小さいので掘る面積が少なくて済むからその分楽だ。それに見つかりにくいと思うし。空き家だから尚更。
俺は早速、部屋の一部分の畳を剥ぎその下のコンパネという板も剥がした。途端にむわっとした温かく湿った空気が上がってきた。湿気っぽい臭いもする。臭い。それを我慢しながら穴を掘り始めた。
五十センチくらいの深さを掘った。奥行は約百六十センチくらい。幅は約五十センチ。汗だくになった。車に行き、ティッシュで汗を拭いた。
車のトランクを開けて再度、佳織を見ながら身体を押してみた。硬い。俺は詳しいわけではないが、「死後硬直」というやつだろうか。何だか気味が悪くなってきた。ただの物体と化した佳織を早く埋めてしまいたい。家の裏口から入れれば見られる心配はないかもしれない。よし、そうしよう。
俺は再び車の所に行き、トランクを開けた。ブルーシートに包まれた佳織を持ち上げた。ずっしりしていて重い。でも、持てない程ではない。ゆっくりと裏口から運んだ。落とさないように、ぶつけないように気を付けてはこんだ。と、その時ーーーー。
佳織の腕がぶらんと垂れ下がった。やばいと思いすぐに下した。腕が万が一ちぎれて落ちたら厄介だから。
ブルーシートで佳織を包みなおし、俺は例の部屋まで何とか運んだ。
そして、そろりそろりと佳織をブルーシートごと穴に入れ、完全に入ってからゆっくりとブルーシートを抜いた。それから、スコップで佳織に土をかけて、完全に埋めた。いわゆる土葬という奴。
もし、見つかるとしてもこの家を解体する時かもしれない。いつのことやら。
生と死 遠藤良二 @endoryoji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。生と死の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます