第二章 三話 実家に行く

 セックスが好きなユリは俺のアパートにやはりやって来た。来ると思ったんだ。俺は笑ってしまった。


 ユリが帰ったら佳織を埋めに行こう。あまり、うかうかもしていられない。腐ってしまう。そうなったら最悪だ。


 この前俺の家に来た幽霊みたいな女は、ユリが死ぬ、と言っていた。でも、なぜ? 本当だろうか。




 

 ユリを抱き終えた俺は彼女に、

「この前、薄気味悪い女が来てよ、お前が死ぬって言った後、姿を消したんだ」

 驚いた様子のユリは、

「えっ! 怖い。何それ」

 彼女は怯えている。

「なぁ、怖いだろ? 俺も気持ち悪いから帰れ! と言ってやったんだ。気付いたらもうそいつはいなかった。その女がいた場所が水浸しになってた」

「水? 体液ってこと?」

「分からない、雑巾で拭いたらドロドロしてた。だからバケツに水入れて外に流したんだ」

「不思議ね」

「だろ? ホラー映画みたいだ」

 ユリの表情は青ざめていた。

「これからもここに住むの?」

「住むよ。これくらいで引っ越さないよ」

「あなたって強いのね」

 オレはフンッと鼻を鳴らした。


 佳織を実家の庭に埋めなきゃ、でも、今はユリが来てるし。そこで俺は、

「なあ、ユリ。俺、ちょっと用事があるから悪いけどまた今度来てくれないか?」

 え? という表情で俺を見た。驚いたのかな。

「う、うん……。いいけど、用事が終わったらまた来ていい?」

 暇な女だな、俺以外の男はいないのか、そう思ったがさすがにそれを言う訳にはいかず、

「いいぞ」

 そう言っておいた。


 ユリが帰って俺は煙草と財布とスマホを上着とズボンのポケットに入れて家を出た。一応トランクを開けて確認した。刺殺したのは昨日。今の季節は春。北海道はまだまだ暖かいとは言えない。だから、腐ってはいない。


 実家は車で四十分くらい走ったところにある。意外と冷静な自分に驚いている。とりあえず穴だけ掘っておこう。埋めるのは予定通り夜中にする。


 トランクを閉めて、俺は車に乗り発車した。何だか雲行きが怪しい。雨でも降るのか。とりあえず、天気が夜中までもってくれると有難い。雨の中で死体を埋めるなんて嫌だ。まあ、作業する音が雨音で紛れるかもしれないが。


 国道は雪が解けて走りやすくなったお陰か交通量が多い。平均したら六十キロくらいしかスピードが出せない。それだけ混雑しているということだろう。


 実家は誰も住んでいなく、両親は俺が二十歳の頃、交通事故で即死した。その頃、俺は両親と織が悪く、行き来していなかった。そんな中の突然の死。俺はなるべく平常心を保つように我慢した。だが、通夜の晩、目からは溢れる涙が止まらなかった。周りにいた身内は俺との仲が悪いのは知っていた。それ故、涙を流している俺をみて驚いていた。


そのようなことを思い出しながら運転していた。


二階建てのそれは、いずれ解体しないといけない。その費用は一体誰が払うんだ。まさか俺か? 


既に悲しみは癒えているものの、実家に着くと否が応でも両親のことを思い出す。

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