第一章 二話 心の闇

 夜中になり、俺は佳織を車のトランクに積んだ。


ぐったりとした佳織は重かった。


部屋のフローリングにべったりと付着した佳織の血を雑巾で拭いた。


生まれてくる赤ん坊には悪いが、母になるはずだった佳織と共にあの世に行った。


別に子どもなんかいらない。


ギャーギャー騒いでうるさいだけだ。


そういえば、知り合いの女に子どもができたらしい。


出産祝いなんかやるものか。何が祝いだ、何もめでたくない。


ひねくれていると知人は俺に言う。


確かにそうかもしれない。


でも、人の幸せを本気で喜ぶ奴なんかこの世にいるのか?


俺はいないと思う。


この、金が全ての世界に。


金があれば、女だって買える。


金が全ての世界だから俺は生きていける。


金の為に働く。


金さえあれば、他に何も要らない。


愛だの恋だのそんなの馬鹿馬鹿しい。


家族? 恋人? くだらねえ!


そんなの偽善者の集まりだ。


女なんか、ヤれればいいんだ。性欲のはけ口にしか過ぎない。


二十七になる俺はいつからこういう人間になったのだろう。


両親の喧嘩、あげくの果てに母が自殺。


父はチンピラに因縁を付けられ殺された。


俺には妹がいた。


妹は知らない男に目を付けられていたようで、ある時レイプされた。あの時、俺は妹だけはかわいいと思っていた。


だが、そんな妹もレイプのショックで自殺した。


その辺から、俺の人柄は変わってきた気がする。


暗い方の人間に。


でも、別に暗くたっていいじゃないか。


生きてさえいれば。


何が楽しくて生きているのか分からないが。


 翌日、俺は出社した。


土木作業員をしている俺は気に食わない奴が何人かいる。


 そいつらとは以前、喧嘩をしたことがある。


今でも俺は執念深くそのことを覚えている。


いつか、あいつらも抹殺してやる!


ボコボコにして、謝っても許さないで殴り続けてやる!


そんなことを俺は考えながら仕事をしていた。


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