第10話 息子の疑問、それと息子と父の関係
私こと松本あずさは、しんごの母。最近、息子が色々なことに疑問を持つようになった。正直、昨日の息子の発言は胸に刺さった。
「なんでそんなに年とってるの?」
という。
彼は何でそんなに疑問を持つようになったのだろうか。息子の成長と捉えていいのだろうか。わからない。でも、明日は土曜日なので夫が仕事から帰ってくる。話してみよう。一人で抱えておくのは良くない気がするから。
試しにネットで検索してみた。「子ども 疑問を持ちすぎる」というキーワードで。回答は、疑問をもつことを忘れたら感性もなくなる、と書いてある。
感性か……。難しいな。
翌日。私は生命保険会社に務めているが、今日は土曜日だから休み。夫の
「おかあさん、お買い物行かないの?」
また、質問か。
「何が欲しいの?」
しんごは笑顔になり、
「お菓子とミニカーがほしい!」
「お父さんが今日帰ってくるから三人で行こうね」
しんごは黙った、しかも真顔に戻って。どうしたのだろう。
「おとうさんこわいから、おかあさんとふたりでいきたい」
「そんなこと言わないの。おとうさん、普段、家に居ないからしんごと会うの楽しみにしてるのよ」
息子は黙っている。
「おとうさんの目がこわい」
まあ、確かに目付きは悪い。でも、私やしんごの為に一生懸命に働いてくれている。中々、夫はしんごと交流が持てなくて寂しいと言っていた。仕事だから仕方ないけれど。康太は転職も考えたらしい。しんごと会う時間を増やす為に。あれから約半年が過ぎた今でも転職はせず、長距離ドライバーを続けている。康太は仕事が忙しすぎて、ハローワークに行く時間がない。もし、行くとしたら仕事を休んで行かなければならない。
でも、康太にしんごの写メはたまに送っている。学校の図工で作った作品などを。返事は遅い時間帯になるが必ず返ってくる。返事もしんごには伝えてあるけれど、忘れているのか父の康太にはあまり懐いていない様子。康太はそのことに気付いている。愛息子に好かれていない父親の心情。複雑かもしれない。まあ、康太は男らしいけれど、しんごのことに関してはうじうじしてしまう。寂しい父親になってしまうのだ。
「あんまりおとうさんを嫌うんじゃない。しんごやおかあさんのために働いてくれてるんだから」
「そうなの? でも、はたらいてるところみたことないよ」
「まあ、トラックの運転手だからそうだよね。それに、お父さんの目が怖いと言っても怒ってる訳じゃないのよ。だから、今日は三人でお買い物しよ?」
「うん、わかった」
良かった! ようやくしんごがOKしてくれた。これで、康太も喜ぶと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます