第9話 おかあさんとのおはなし

 学校から家にかえってからぼくは、おかあさんとおはなしをした。

「ねえ、おかあさん」

「うん? なあに」

 おかあさんはいつものように、やさしいえがおをうかべている。

「あしたね、先生になるためにおんなのひとがくるんだって」

「へぇー、それは楽しみね」


 いま、お外は雨がふっている。まるで天国にいる人が泣いているみたい。これじゃあ、だいすきなお散歩もできない。ざんねん。おひさまに当たりたいよう。


「おかあさん、ぼく、おひさまにあたりたい。なんで雨ふってるの?」

「それはね、お空がないているの」

「そうなんだ」


 ぼくは、おかあさんの言っていることがすぐにわかった。お空も生きているんだ。だから、かなしくてないているんだ。でも、なんでかなしいのかな。

「ねえねえ、おかあさん。なんで、お空はかなしいの?」

「うー……ん、それはおかあさんにもわからないな」

 おかあさんはわらっている。なんで、わらっているんだろう。


 おかあさんはいくつなんだろう? それを訊いてみると、

「えっ、何でそんなこと訊くの?」

 おかあさんは、また笑っている。何で?

「いくつかなと思ったから」

「30歳よ」

「へー。なんでそんなに年とってるの?」

 おかあさんは笑うのをやめた。なんでやめたのかな? それからおかあさんは息をはいた。ためいきっていうのかな? 何かいやなことでも思い出したのかな?

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