ver12/26

生姜湯のゆげのむこうにうちのかべ

愛よりも愛に似かよえこたつ布団

音無しのテレビにうつる寒昴

天狼の見えない窓に手を添える

まどろみに霜と近しい名をつけて

道しずか凍蝶一羽ゆうまぐれ

朝起きるだけでつかれた夜の雑煮

ねこ丸しみかんをのせて鏡餅

白鳥に梅おにぎりをうばわれる

雪うさぎ目はみどりでもかまわぬか

葉牡丹が食べられるかをかんがえる

まどろみを抜けてしまえば結氷期

檸檬忌にだれもころさずいきること

花の露やさしくなれる排卵日

霞む目の奥も霞ます菜花道

花篝かおを知らない句の師匠

花曇り月を探してから帰る

眠る間によいこととして桜散る

ぬばたまとよべない髪にからむ蝶

水ぬるむおたまじゃくしの尾にふれる

桜桃忌わたしは水に浮かないか

けだるさに垂らすミルクは梅雨曇り

五月雨やでんちのきれた腕時計

ねこ長しレモンの皮とマドレーヌ

慈雨の日の夢の水面の辺のみどり

マクガフィンその朝顔は何色か

病院の火災としての大もみじ

台風の目のなかプリン買いにゆく

キッチンでなにかが落ちて秋果かな

長月の引き金として栗を焼く

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