第4話 環境再生科学者 ブーリ

 照りつける太陽、干からびた大地、見える風景は倒壊して砂漠に埋もれた過去の建造物と、水を求めて彷徨うトカゲの姿。


 環境再生の研究をしている私は、あえてこの土地を選んだ。子供の頃に学んだ、人類発祥の地、地球。かつて起こった伝説の世界をこの目で確かめてみたかった。


 現実はひどいものだった、こんなところで文明が発展したとは想像もつかない、ひどい有様。しかしここでの再生技術が成功すれば、今起きている宇宙環境汚染を食い止めることができるかもしれない。

 

 人類は地球の環境破壊だけでは飽き足らず、植民惑星でも同様のことを繰り返していた。大気汚染、エネルギー枯渇、生態系破壊。そのたびに新たな植民惑星の開拓……


 人工光合成組織を組み込んだ植物プラント工場を街外れに設営した。酸性雨の成分を分解し、水を生成できる植物。これによって、水と食料の供給が可能となる。

 今も少しだが、ポトリポトリとコップの中に水がしたたり落ちている。

 私はそのコップを手に取り、ゴクリと一口飲み込んだ。


「うん、おいしい。やっとコップ一杯の水を作ることができるようになった。改良すれば、もっと効率が上がるかもしれない」


 独り言……聞く者は誰もいない。スラム街に戻れば、住民はいくらかいるが、私は変人扱いされているから、声をかけてくる者などいない。


「今日はいつもよりは過ごしやすい天候だな」


 ボーっと空を眺めていると、キラリと光るものがゆっくりと落下してくるのが見えた。椅子から立ち上がり、その物体の軌跡を追った。

 そのうち、ドーンという音とともに大地に激突し、大きな砂埃すなぼこりを上げた。


「な、なんだ?」


 私は急いでサンドモービルにまたがると、落下地点へとモービルを走らせた。


 近くまで到着すると、大きなクレーターとともに、その中心に銀色に光る幾何学構造をした物体が落ちていた。


 恐る恐る近寄り、その物体に触れてみる。

 その瞬間、頭をつんざくような衝撃が走り、目の前が、ぶれたようにかすんだ。


 ぼやけた視界を、目をこすり、もう一度はっきり確かめようとした。

 すると、そこには一人の少女が倒れていた。


「き、君! 大丈夫か?」


 急いで少女を抱き寄せ、声をかけた。銀色の髪、しかしよく見ると、彼女は……


「ユ、ユミル?」


 少女は目を開けると、私のほうに視線を向け、一言だけ言葉を発した。


「ユ……ミ……ル」


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