第3話 GUN=GNIL

 デスクの上に、ゴトッと重火器が置かれた。


「反重力反応銃GUN=GNILグングニル……反物質世界に住む奴らに対抗するために開発された兵器。非常に危険な武器だからな、プロテクト解除までに複雑なプロセスを要する。たしかにこれを扱えるのは、俺だけだ。それで……隠密に処理したいというわけか」


「もちろん、ただとは言わないわ。報酬は100万ギャラクシー、あなたの娘さんの治療費には十分な額だと思うけど」


 娘はアンノウン正体不明ウイルスに侵されている。治療方法は解明されていない、生命を維持するだけで莫大な費用がかかるが……これだけあれば、五年はなんとかなる。


「娘を救うために少女殺しをしろということか。それで……この娘はどこに落下した?」

「太陽系第三惑星」


「地球か……。棄てられた星。あんなところに何か用事でもあるのか?」

「それはわからないわ、それより……大事おおごとになる前に片付けておきたい」


 地球はすでに環境破壊が進み、乾燥した大地が広がるだけの荒廃こうはいした星だ。この数百年で人類のほとんどは他の惑星へ移住している。

 あんな僻地へきちに住み着く住民は犯罪者か、よほどの変わり者だ。


「わかった、この仕事受けよう。それにしても……こいつ人型か、あまり気分のいい仕事じゃないんで、前金に50%を振り込んでくれるか?」


「OKよ、残りはミッション完了後ということで。地球への入星証にゅうせいしょうを渡しておくわ」


 差し出されたカードを受け取ろうと腰を上げたところで膝がぶつかり、デスク一面がコーヒー色に染まった。

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