第7話 霊能力者新人試験 (模擬戦闘)
夏美のかけ声で新人試験の開催が宣言された後、新人達はまず体育館の会場を区切って作られたテストスペースで一次試験を受けていた。今年は新人の数が多いようでいくつかに分けて一次試験を行う必要があったようだ。
一次試験は昨年と同様に、組織の教官役が呼び出した低級霊や危険性の低いが数が多い妖怪を制限時間内にどれだけ倒すことができるかという戦闘力を測定する試験や呪いが掛けられた花瓶や皿と行った無機物に取り憑いたものを解呪する祓いの試験を行う。
そこで霊能力者の基本がどれだけできているかを見極めて今後の依頼をどのように割り振っていくか組織の人間が決めていく。また、SMOは霊能力者にランク制度を設けている。ランクはDからSSランクまで存在しており、ランクは依頼を一定数こなしたり、強力な呪物の解呪に成功したり、強力な異形を討伐するとだんだんと上がっていく。この一次試験は新人達の最初のランク付けにもなっているのだ。
そして今年から導入された二次試験は実際に依頼をこなしている霊能力者と戦い、自分には何が足りていないのか、今後どうすればもっと強くなることができるのかを知ってもらうという目的がある。また自分自身のみならずそれを観戦している他の霊能力者も能力のもっと有効な使い方や発想の仕方、相手が仕掛けてくる攻撃に一つでも
”未知”をなくすことなど、学べることは多くあるはずだという説明がされていた。
そして順調に一次試験は進んでいく。その中でも頭一つ抜けていたのは3人。
一人目は先ほど会場の入り口で竜夜に突っかかってきた赤羽という少年だ。彼は教官が呼び出した霊に対して拳に自身の霊力を使って生み出した炎を纏わせて対抗した。霊を次々と殴り倒していく様子は演舞をしているかのように軽やかにかつアクロバティックな動きを見せ会場を沸かせた。しかし一方で解呪の試験では呪物を一つしか解くことができなかった。繊細な霊力のコントロールが必要になる解呪は彼との相性が悪いようである。
二人目はこれも先ほど竜夜に突っかかってきた青山という少年だった。入り口でライバルのような会話をしていたことからもわかるように実力は赤羽と同等くらいだろう。しかしこちらは解呪の試験では三つの呪物を解呪することに成功したが、戦闘力では赤羽に一歩劣るようであった。青山は刀を使ったのだが刀に纏わせた霊力の量が少なかったようで何度か切り裂くことでようやく倒す事ができる状態だったのである。
しかし三人の中でもさらに圧倒的だったのが、先ほど竜夜をじっと見つめていた少女だ。彼女は教官が呼び出した低級霊を持っている杖の先から放たれる光弾で次々と打ち抜き、その場から一歩も動くことなく淡々と仕留めていった。また、解呪の分野でも一気に5つもの呪物の解呪を成功させ見ていた他の新人達の度肝を抜いた。しかし他の新人たちとは決定的に違う点があったのだ。
それは彼女が霊力ではなく魔力を使っていたことである。日本以外の国々でも異形は出現している。しかしそれらは日本のSMOのように国が極秘に作った組織により対処されており、そしてその多くの組織では霊力ではなく魔力が一般的だ。霊力を使うのは日本と日本に近いアジア圏の国々だけであり、世界全体を見れば能力者は魔力を持つ者が多い。そんな彼女は圧倒的な殲滅力や解呪の正確性などからまさに魔女といえるほどの能力を持っており、海外ならば特別待遇で組織に迎えられるほどの実力を持っているもののなぜか今この日本の組織の新人試験に参加している。
そしてすべての新人たちの一次試験が終了したのは昼の12時を少し過ぎた頃であった。しかし二次試験はそのまま休みなしで行われる。二次試験は実際に依頼をこなしている霊能力者との模擬戦闘、つまり竜夜の出番というわけだ。
「面倒くさいかもしれんが、一人一人をちゃんと見てやるんじゃぞ。」
「わかってるって。」
玉藻はそんなことを言い残して夏美たちがいるところまで飛んで行ってしまった。
「さて、ちゃっちゃと済ませたいけど試験だし。しっかりと見極めるとしようかな。」
二次試験を行うために外に出て行った竜夜はその言葉の通り新人たち一人一人にアドバイスを投げかけながらその人の弱い部分を的確に指導していく。それに新人たちも適うはずはないが必死で食らいつき倒された後のアドバイスもしっかりと聞き入れていた。試合後の新人たちの表情は悔しげではあったもののどこか誇らしげで達成感に満ち満ちていた。
そしていよいよ竜夜は一次試験で早くも頭角を現した三人との試合に近づきつつあった。二次試験は一次試験での成績を加味して実力のある者は最後に行われる決まりになっているため、必然的に三人は最後の方になる。
まず最初に竜夜の前に立ったのは赤羽だった。彼は一次試験では装着していなかった小手を装備し炎を纏わせた状態で竜夜と対峙した。
「驚いたぜ。まさかあんたがあの御影竜夜だったなんてな。」
「その前に俺に何かすることはないか?」
「謝罪ならしねーぜ。どうしてもさせたいんだったら俺を倒してからさせてみやがれ。」
「よしわかった。倒したら謝罪するんだな。よーくわかった。」
その会話を皮切りに会場全体に緊張が走る。それと同時に審判から試合開始の合図が出された。先に動いたのはやはり赤羽だった。素早い動きで竜夜に近づくといきなりラッシュを仕掛けてくる。しかし竜夜はそれをすべて躱していく。
(こんなわかりやすい軌道のパンチがあたるわけがない。)
しかしずっと躱されていてもラッシュを続けている赤羽に竜夜は相手の片方の拳が引いた時を見てカウンターを合わせる。間一髪、咄嗟に後ろに飛んで避けた赤羽だったが背中には脂汗をびっしりとかいていた。
(すごいスピードだった・・・一瞬遅れていたらモロに食らってた)
それで頭が冷えたのか、パンチがあたらないと判断した赤羽はいったん距離をとり拳に纏わせていた炎を増幅させ放っていく。しかしこれもまた竜夜にはすべて躱されていた。
その後も赤羽は様々な手を使って竜夜を倒そうとした。しかし竜夜はそれをすべて真正面から受け止め、躱し、時には素手で消滅させて相手の戦意を徹底的に喪失させていった。それを観戦していた新人たちは竜夜の様子を見て「御影竜夜って・・・・意外と大人げない?」と目を半開きにした。
「はぁ~。負けず嫌いなところは何にも変わっておらんのう・・・竜坊」
頭痛がしてきた玉藻は頭を押さえる。
「いいじゃん。竜にぃのいいところだと思うよ!」
慕っている男のかっこいい姿を見ている夏美ははしゃぎながらそう言う。
「にしても、限度があるものじゃ。まったく・・・」
玉藻のその言葉のすぐ後に、赤羽は竜夜の攻撃を食らって気絶し医務室に運ばれて行ってしまった。運ばれていく途中の赤羽をその場にいる全員がかわいそうな物を見る目で見ていた。それに何よりも竜夜の強さに改めて尊敬の念を覚える。人間はここまで強くなれるのだと一層気持ちを奮い立たせながら。
その後、青山も赤羽と同じくらいボコボコにいじめてから医務室へと送った竜夜は
ついに最後の少女と対峙するのであった。
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