第6話 霊能力者新人試験 (いよいよ試験開始)

会場に入るまで一悶着あったものの、竜夜は霊能力者新人試験の会場に無事入場することができた。外で気絶してしまった少年二人は、設置されていた救護場所に放置してきた。どうやら外での一件は会場内にいた人たちにしっかりと伝わっていたらしく、少年たちをおいて夏美たちがいる場所に行くとそこかしこから畏怖と羨望のまなざしが向けられた。参加している人数は中々に多そうである。どうやらあの二人が知らなかっただけでちゃんと彼の名前と姿は認知されているらしい。


「竜にぃ、大人気だね!」


「みたいだな。しかし俺が来ることは直前まで内緒にしておかなくて良かったのか?」


「まあこの際仕方ありませんよ、竜夜お兄ちゃん。もうばれてしまったのですから。」


3人で楽しげに話していると突然どこからか視線を感じた。それも竜夜だけに対してである。竜夜がその視線の主を探していると新人が集まっている場所から一人の少女が竜夜を見つめていることに気がついた。


年齢は竜夜と同じ高校生くらいだろうか。スラリとした体格にキュッと引き締まったウエスト、腰のあたりまで真っ直ぐに伸びたロングヘアーはプラチナのように輝き、大きな瞳は南国の海を思わせる碧眼だ。しかし、つばの広い帽子をかぶりゆったりとした装束に身を包む姿はまるで魔女のようである。そんな絶世の美少女という言葉がふさわしい少女は何をするでもなく手に持っている杖を握りしめ、ただジッと竜夜のことを見ている。


しかしそんな彼女も竜夜と同じように注目されているらしく、そこかしこから彼女に視線が向けられていることを竜夜は感じ取っていた。一部の男達はその彼女の気を引こうと話しかけに言っているがくだんの彼女はそれを無視して竜夜の方だけをただただ見つめていた。


それを見ていた竜夜も彼女の方を見返す。二人の視線と視線とが一瞬重なり彼女はハッとしたように目を背けそのままその場所を離れて行ってしまった。


竜夜が彼女を追いかけようとしたとき、新人試験を行うためにやってきた組織の一員であろう女性が竜夜たちに早速試験を始めるための開会式をやってほしいとお願いしてきた。


断りたいのは山々だがこれも仕事のうちである。3人で会場の前方にあるステージに上がり開会の宣言をすることになった。といっても、基本は夏美と冬華が喋るため竜夜はただ突っ立っているだけでいいらしい。


3人が壇上に上がると会場全体から歓声が湧き上がった。どうやら参加している人たちはこの試験を心待ちにしていたことがわかる。その熱を逃さないためにも夏美たちは早速しゃべり出した。


「はーい、全員注目!これから霊能力者新人試験の開会式を始めるよー!」

「皆様、本日はお忙しい中ありがとうございます。」


その言葉を皮切りに二人はテンポ良く試験についての説明をしていく。今年は去年までの試験を一次試験、竜夜との模擬戦闘を二次試験をして行うとのことだった。


「な、な、なんと今日はこの新人試験のためにSMO最強の御影竜夜が来てくれました!」


「今回は竜夜さんを相手とした模擬戦闘を行ってもらいます。」


二人から紹介をもらった瞬間、会場のボルテージが一気に上がった。それほどまでに

”御影竜夜”という名前はたくさんの人に知られている事がわかる。いつもはそれが重苦しく感じるが、今は不思議と嫌な感じはしない。どうやら自分も知らず知らずのうちに新人たちとの試験に静かに興奮していたようだ。


そしてその後も説明は順調に進んでいき、ついに夏美のかけ声とともに新人試験の開始が告げられた。


「それじゃあみんな頑張っていこう!ファイトーオー!!」


いよいよ新人試験が始まる。しかし竜夜は盛り上がる会場の中で、またもや自分だけを射貫くかのように見つめる少女に好奇心と警戒心を抱くのであった。

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