第4話 平穏を守るために
校長からの頼まれ事の後、5・6限目の授業も眠りにつき、無事学校を終えた竜夜は帰宅するために荷物をまとめている。
「竜夜、帰ろうぜー」
「もうちょい待ってて」
友幸とは家が近いので時間が合えば大体いつも一緒に帰っているのだ。そして荷物まとめも終わって帰ろうとしたとき、教室のドア付近で二人を呼ぶ声がした。
「竜夜くーん、友幸ー、一緒に帰ろー」
二人を呼んだのは西尾 真奈美(にしお まなみ)だった。真奈美は友幸の幼なじみで友達だ。彼女も竜夜が霊能力者であることを知っている人物の一人であり、友幸と同じくそれを知っても友達になってくれたかけがえのない友人である。
真奈美の家も竜夜や友幸の家から近いため、一緒に帰ることがある。しかし、彼女はバドミントン部であり、しかもエースである。練習があるはずだが、今日は休みだったようだ。
「すまない、待たせた。」
「ううん、大丈夫。忘れ物はない?」
「大丈夫だ。ありがとう。」
「まったく、竜夜が帰り支度が遅いからだぜ。これは俺たちに何かお詫びをしてもらわないとなぁ、ぐっへっへ」
「お前には、真奈美の爪の垢を煎じて飲ませたい。真奈美を見習って少しでも優しい言葉をかけられないのか?」
「俺は、竜夜だったら面白い返しをしてくれるからこういうことやってるんだぜ。」
「はぁ、まったく先が思いやられる。」
「ふふふっ」
そんなことを話しながら3人は家路につく。この瞬間こそが竜夜の最も欲している平穏の代名詞ともいえるものだ。だからこそ竜夜はこの時間を大切にし、それを邪魔するものを容赦なく排除するために今も異形退治を続けている。だから今この瞬間も学校にいるときから絶え間なく三人をずっと見続けている異形の存在にも気がついていた。
しかし竜夜はそれを二人に悟らせないように動いていた。自分のせいで大切な友人に少しでも不安な感情を抱いてほしくないからである。
「そういえば竜夜、昼休み先生に呼ばれたのって何だったんだ?」
「あー、それはだな・・・」
竜夜は何事もないように二人に昼休みのことを話した。強弱や勢いを使い竜夜はいかに校長が非道な脅しをしてきたかを感情的に語った。その結果・・・
「まあ、しょうがないんじゃね?」
「竜夜くんの力が必要とされているんだよね?だったら頑張って!」
二人は校長側に付いてしまった。解せぬ。そんなことを話しているうちにいつも分かれ道になる十字路に付いた。
「それじゃあ、また明日な」
「おう、また明日ー」
「また明日ねー」
3人は十字路で分かれ、竜夜はそのまま二人が見えなくなるまで見送った。そして二人の姿が完全に見えなくなると、今歩いていた道を引き換えしていく。春先とはいえ通学路を往復すれば学校に着く頃にはすっかり日も落ちて辺りは夜の
そして竜夜は戦闘モードに意識を切り替える。それと同時に竜夜は闇に包まれた。しかしそれは決して危険ではなく、竜夜の足下から放出されている。これが竜夜が最強と呼ばれる所以になった固有能力「
また影の中は別次元の空間になっており、影で構成された家が存在する。空気や水など人間が生きていく上で必要となるものを取り込ませることでそこで生活することも可能だ。
そして闇が晴れると竜夜は戦闘用の狩衣を身に纏い、腰には一振りの刀が納まっている。そのまま竜夜は異形がどこに潜んでいるのかを霊力を用いて探りつつ、異形を逃がさないようにするために結界を張る。すると3階にある理科室から反応があった。竜夜は体を霊力で強化し一気に三階へとジャンプする。そして刀で窓ガラスを割って理科室に侵入することに成功した。どうやら反応はそこに置いてある人骨模型から発生しているようだ。
「おい、そこの人骨模型。お前が只の模型じゃないって事は朝から気づいていたぜ。正体を現しな。」
すると模型は小刻みに震えだし、そして隠す必要もなくなったとばかりに窓ガラスを割って外へ飛び出して自身の本当の姿を解放した。
そして現れたのは校舎よりも背の高い巨大な骸骨だった。その名前を
「まさかこの俺がよりにもよって霊能力者に見つかっていただと!しかし俺はこんなところで成仏するわけにはいかん。この学校の生徒達から生気を吸い取りもっともっと力を蓄えるのだ。邪魔をするな!」
「そんなことさせると思うか?お前はここで大人しく成仏しやがれ。」
竜夜が刀を構えると、餓者髑髏はその大きな両手を組んでハンマーのように振り下ろす。竜夜は後ろに飛んで躱したが、その巨体から繰り出される質量攻撃は地面をえぐり地震を引き起こした。体が硬直したその瞬間、今度は竜夜の両側から大きな手が壁のように迫ってくる。竜夜は隙なく飛来する攻撃を防ぐので手一杯の様子だ。後ろへ後ろへと押し込まれていく。しかしその目は微塵も諦めていない!
餓者髑髏の攻撃直後の隙を狙い竜夜は大きな手に刀で斬りつける。するとその衝撃で拳の骨の一部が吹き飛んだ。どうやら骨の強度はあまりないようである。それ気づいた竜夜は果敢に攻撃を仕掛ける。足、腰、腕、肋骨の順番で次々と体を粉々にされた餓者髑髏は頭だけになった姿で命乞いをする。
「ひぃぃぃ!!もう人間は襲いませんから命だけは!どうか命だけはお助けくださいぃぃ!!」
「いや、お前もう死んでるし。」
それを聞いた竜夜だったが何事もなかったかのように残った頭にも刀を突き刺し、とどめを刺した。
その後、組織に事の顛末を連絡し後始末を依頼すると、竜夜は玉藻が待つ家に軽い足取りで帰ってくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます