<Das Endkapitel>

「玖珠羽……」


 俺はしばらく呆然と立ち尽くしていた。

 玖珠羽が駆けて行った方向は、屋台賑わう湯雪祭り。まるで今までの時間が嘘か夢であったかのように、彼女の姿がとても遠くに感じられた。

 あるいは、玖珠羽が思い出の中に帰っていったのか…。玖珠羽の姿が完全に見えなくなった時、何気なく視界に足湯場が目に入る。

 俺は頭が整理できないまま、フラフラと足湯場に腰を下ろした。


 ズボンを膝丈までまくり、靴を脱ぐ。靴下も脱いで、椅子に力なく放る。足首をつけると、当たり前だけど温かい……。

 鬼仙の湯。効能は色々あって、昔の人たちの知恵が足湯という庶民の憩いの場として生まれ変わった。

 足湯の神様、か……。

 もしもそんな神様がいるなら、人を襲うような神様でないなら、信じてもいいか……。

 『神なんて認めない』そう、頑なに拒んできた俺の意地は足の温かさによって氷解されていく。


 ぼ~っと空を見上げた。まだ雪が舞い落ちている。

 でも、先ほど感じた幻想的なものは感じられなかった。心境が違うから、だろうか。

 ……そうだな。玖珠羽の、そして広海の言うとおりだ。


 ”俺の空”は、初めから青かったんだ。


 それを俺が、灰色に変えちまったんだ……。


 ”俺の海”はずっと、”ここ”にあった――。



 7年前、広海の失踪を許した――。

 無力さと後悔で、自分を引き裂いてやりたかった。でも、幼い俺には何をどうすることも出来なかったんだ。

 両親を失い、広海を失い、俺の心は壊れてしまった。広海の両親へなんと謝ればいいのか……。

 謝罪をいくらしたところで、広海を連れ戻すことは出来ない。

 それでも、幼い頃から今まで家族ぐるみの付き合いがあり、とても良くしてくれた広海の両親に謝らなければならなかった。


 警官の付き添いで、俺は広海の家へ向かう。

 茫然自失――。

 一言で言ってしまえば、そうだったと思う。傍から見れば家族を失って生気の失った少年に見えただろう。

 車中、付き添いの女性警官はずっと声を掛けてくれていた。なのに、それが励ましだったのか、勇気付けだったのか、俺は覚えていない。

 声は耳から入っても、頭に、心に届かなければ意味を成さないからだ。

 それでも何か、女性警官は伝えたいことがあったのだろう。返事もしない俺の手をずっと握ってくれた。


 広海の家に着いて、俺はすぐに目を見開いた。

 玄関の前であの優しかったおじさんとおばさんが、えもいわれぬ表情で俺を見ていたからだ。

 俺は怖くなって目を逸らしてしまう。それでも、女性警官に手を引かれて歩かされる。

 終始俯いていた俺は、女性警官と広海の両親との会話が耳に届くことは無かった。

 自分の娘が死んでしまったのだ。それも別の家族の旅行で。それはつまり、娘を連れて行かれて殺されたも同然。

 俺は殺されても仕方がないと、怯えていたんだ。


『……どうして君は、生きているんだ?』

『あなたッ! この子にそんなこと言っても……!』

『分かっている…! 分かっているが……ッ!』


 俺の耳に届いたナイフは、切っ先を走らせ血を滴らせた。


『隆さんと幸恵さんも、もう居ないんです! 翔平君を責めるのは、酷なことよ……』

『ならどうして……。どうして広海が死ななければ、いけなかったんだ……!』


 二つ目の刃は、俺の膝を抉った。崩れ落ちるように地面に両手をつき拳を握る。


『ごめんなさいっごめんなさい! ごめんなさいッ! ごめんなさいごめんなさい……』


 俺はうずくまる様に地に伏した。

 振り上げられたナイフを、俺は自らの胸へ突き刺していく。

 何度も、何度も、何度も……!

 こんな痛みでは、彼らの悼みを理解できないことは分かっていた。でも、謝ることしか出来なかったのだ。


『ごめん、なさい……。ごめ……い……』


 涙声も血に染まり、やがて溺れていく。

 いっそ、殴り飛ばして欲しかった。気の済むまで俺を痛めつけて殺して欲しかった。

 だが、そうはならなかった。俺を殺しても、広海はもう二度と、帰っては来ないのだから。

 俺は胸倉を掴まれ、強引に立たされる。


『……なぜ君だけが、生き残ってしまったんだ……。こんなことなら、いっそのこと―――くッ!』


 投げ捨てるように、俺は地面に転がった。それを女性警官が慌てて仲裁に入り、事は静まる。


 ――広海の両親からは、もう二度と来ないでくれと言われた。

 それが、お互いのためだったのかもしれない。悲劇が起こってしまったことは、もう二度と、誰にも覆せはしないのだから。

 そして俺は、祖母の家に預けられた。それからの俺は、無気力に日々を過ごすことになる。

 世界が変わり、環境が変わり、日常は風景へと化した。

 今まで交流のあった友人たちとは、疎遠になった。広海の死が広まり、俺は奇異の目で見られるようになる。

 それが嫌で自分から誰かに干渉することを避けたのだ。

 見える世界は色彩を失い、同時に、聞こえる音は無関心な雑音になった。

 そうして―――。気がつけば中学を卒業していた。何の感慨もなく中学を離れ、俺のことを誰も知らない高校へ進学。

 心を躍らせるわけもなく、心機一転なんて気持ちもさらさらなく、中学と同じように俺は一人で居た。

 周りはそんな俺をからかうことはなく、居ない人として認知した。

 相互不干渉。全てのことに興味が失せた俺にとってその環境は煩わしくなくて良かった。


 そんな高校生活が続いた、夏の日。

 あの日からずっと苛まれていた悪夢が、顔色を変えた。

 毎晩繰り返される、広海を殺した夜の記憶。それが、あの言葉によって大きく塗り替えられた。


『……どうして君は、生きているんだ?』


 一度苛まれたら最後、俺の頭の中はその言葉で埋め尽くされていく。

 寝ても覚めても付きまとう呪音のような響きはまるで、生きているか死んでいるかをも狂わせた。


 どうして、俺は生きているんだ……?


 どうして、俺だけが生き残ってしまったんだ……?


 どうして、みんな居なくなったんだ……?


 どうして、広海が死んでしまったんだ……?


 どうして……。


 どうして―――。



 そして―――。

 僅かほど残っていたかもしれない心を、俺は自ら壊した。

 気がつけば風呂場は血の海で、付き立てたソレは俺の腹から無機質な輝きを放っている。

 遠退いていく意識。混濁していく思考。目の焦点が合わなくなる。身体から生気が流れていく。

 これが、死―――? 違う、こんな慈悲深い最期が、広海たちに与えられていたはず……ない……。

 もう、どうでもいい……。俺が生きている意味も。俺が生き残った意味も。

 すべてが、どうでもよくなってしまった……。

 さよなら、世界――。


 死んだら、広海と会えるの…か……な……。



 俺の腹部には未だに、その傷痕が残っている。

 だが、俺は死ねなかったのだ。祖母が早く気づき病院に搬送されたお陰か、俺の与り知れぬ所でまだ死ねない理由があったのか。

 病院の上で目覚めた俺は、後者を取った。お腹の傷が疼く度に、昔の俺に芽生えた使命感を蘇らせる。

 もう一度、あの村へ行こう―――。

 全てを解き明かそう。俺から全てを奪った奴、もしくは奴らを暴いてやる。

 それまで俺は、死ねない。

 そして……もしも真相に至ったなら……。そのときは―――。

 一体どこまで突き止めれば、あの日の真実へ辿り着けるのだろう。

 犯人を突き止めたら、俺は報われるのだろうか。

 真実を知ったら、俺はまた広海に会えるのだろうか。


 広海……。

 俺を好きだと言ってくれた、広海……。彼女はもう、居ない――。

 俺が、殺してしまったのだから――。

 どれだけの時間を、彼女と過ごしただろう……。

 俺は忘れない、二度と。空が青いことを教えてくれた広海を。

 海はいつも心の中にあることを教えてくれた広海を。

 だから、探さなきゃいけない。

 俺がこの村に置いてきてしまった、壊してしまった俺の、『心のカケラ』を――。



「遅いな……」


 10分は経っただろうか。いや、まだ5分くらいなのか。それとも、30分は経過しているのか?

 音も無く、誰も居ない一人はそれだけで時間の感覚を鈍らせる。

 俺は時計はしない主義だから、腹時計に任せている。しかし、今俺の腹時計は狂っていた。

 思い耽っていたせいか、何時くらいなのか見当もつかない。

 空を見上げると、いつしか雪は止んでいた。


「……約束……。玖珠羽の……」


 どうしても、これだけが思い出せない。玖珠羽との約束……。

 7年前俺は一体、彼女と何を約束していたのか。漠然と、そこに俺の心があるような気がしてならない。

 約束――。

 7年前の、最後の約束……。いや、『最初の』約束……?


 ふと背後に気配を感じて、やっと玖珠羽が戻ってきたと思った。

 先ほど駆け出してしまったのが気まずくて声を掛けられないでいるのか?

 俺から振り返って安心させてやらないと。しょうがないな―――。


「あれ、おかしいな……」


 すると、別の方向から物音がした。


「玖珠……え………」


 どう形容したらいいか分からない。


「だ、誰だよ……お前……」


 そいつは喋らない。ただじっとこちらを見据えている。

 誰、だって……? 違う、こいつは人なんかじゃ……ない……?

 馬鹿言え、人外な生き物なんていないって俺自身言ってたことじゃないか。

 じゃ、じゃあ今目の前にいる、こいつは―――。


 一体、ナンナンダヨ……。


 まるでこれは、デウス・エクス・マキナ。

 神が突然、降りてきたかのよう……。機械仕掛けでシナリオを細工して、人ならざるモノの介在を仕組んだかのようで。

 赤い、眼が赤い。おぞましい何かが瞳の奥から俺をその場に硬直させた。

 頭から異様な角が生えている。進化を経た人間に角が生えているなんて、考えられない。

 赤褐色の身体は、黒い死に装束のような衣装から見え隠れし、裾が風にはためいている……。

 文献で見た鬼のような筋肉が隆起した体格とは正反対だが、その見上げるようなシルエットは、ゆうに2メートルは超えようかとしている。

 その足元を見ると、静かに裾が揺らめいて……。足首が、ない……だと……? そんな馬鹿なッ! 浮いているっていうのか!?


 頭上から鈍色の光が目を掠め、俺は顔を上げた。

 そいつが握っていた刃渡り30センチはあろうかという小刀は禍々しく、刺せば人の身体など貫通させてしまうだろう……!


「り、リアルじゃねぇよ……」


 殺される―――そう思った。

 過去の事件を思い出してみろ。ナイフのような鋭利な刃物で心臓を一突きにされた跡があったって!

 あんなので刺されたら心臓どころか、俺の身体なんて貫通しちまう……!

 まさか、こいつが、鬼……? オニガミ……?

 ふざけんな、認めてたまるかよ! 咄嗟に逃げようと思った。

 しかし、足首に痛烈な痛みが走り抜ける。


「……がっ!」


 俺は、勢いで転倒し地面を舐めるようにして顔から地面に転がった。

 俺の足首から下が……無い!? 切られたってのか? なんだよこれ、何なんだよこれッ! 

 いつの間にこんなことになってんだよ!?

 今更ながら激痛に襲われた。浸かっていたお湯は今や血の海。俺の足首を飲み込んで、俺の血を吸い上げていた。

 最初に振り向いたとき? あの時もうすでに!?


「な、なんだよ! 一体……なんなんだよッ!」


 逃げるってのは足があって初めて逃げられるんだ。

 いや、もっと以前に人には足があるから、歩ける、走れる。自由に動き回れる! でもそれを奪われたら、どうやって『逃げる?』

 這うしかない、這って逃れるしかない! その間、そいつは言葉一つ発しなかった。呼吸すらしているか怪しい。ただ眼を赤く光らせ、鈍く光る小刀を握り締めるだけ。

 俺が滑稽にもがく様を見下ろすヤツはまるで、自分の毒で死に絶えるまで芋虫を見下ろす、蜂のようだった。


「そ、そうか……お前…なんだな。はぁ…はぁッ! 俺から全てを奪ったのはっ……答えろッッ!!」


 ぜぇぜぇと肩で息をしながら渾身の力で叫ぶ。もう、起き上がる気力もない……。

 大量の失血で気を失いそうになるが、元凶を前にしてむざむざ退場するわけにはいかない。

 地に這いながら、そいつを睨み付ける。


「へへっ……こ、こいつは驚いた……ぁッ! 足のせ、切断が先だったとは、な……ぅッ!」


 こいつが、全ての元凶……。こいつが俺の仇。両親の、広海の仇ッ! そう確信した。

 一度でも顔を拝めたら、殴ってやろうと思ってたんだ。俺の怒りが治まるまでなッ!!

 ……でも、もう立ち上がれねぇ。俺は真実を突き止め、元凶を殺してやるつもりだった。それがこんなザマだ……。

 笑ってやる、こんなのはリアルじゃねぇ。


【無知な人間はいつでも自分の理解できないことを称讃する。】

    ――― チェーザレ・ロンブローゾ ―――


「はは…はははッ。げほっげほげほッ! わからねぇ…。わからねぇよ……」


 これが、オニガミだって? 俺はこれから殺されるって?

 ははっ。すげぇよ、本当に訳がわからねぇ…。めちゃくちゃだ。

 オニガミが俺の目の前に現れて、俺の脚を切断して、今まさに俺の心臓を貫こうとしているなんて…誰が信じるんだよ……。

 俺は何か分かったつもりで、結局何も分かっちゃいない。すげぇよ。こんなの、俺には解き明かせねぇ……。


『もう、いいんじゃないか?』


 俺の、もう一つの心が囁く……。


『もう楽になっても、いいんじゃないか?』


 ああ、そうさ。俺はもう生きる気力を喪っていた。

 死に場所を、探していた。俺だけ生き残り、俺の全てを奪い去り、そんな世界に興味が失せていた。

 それでも自分を誤魔化し、復讐を掲げ、7年間真実を追った。もしも、真実に至れたなら俺はどうするべきか……。


 相手を殺すか?


 ……いや、俺を殺して欲しいと願った。俺も死ぬべきだったんだ。早く、広海のところへ連れて行ってくれって。

 だから、あいつらには会いたくなかった。挫けてしまいそうだったから……。復讐という名で塗りつぶした欺瞞を、ひと時の温かさで挫けさせたくなかったんだ。

 欺瞞という不安定な天秤を安定させるには、二つの心が必要だった。それは―――。


 臥薪嘗胆と、希死念慮。

 復讐という名で塗りつぶした欺瞞で、7年という歳月をただそれだけの為に生きてこられた。

 俺はあの時、みんなと一緒に『死ぬべき』だった。でも『死にたい』と思うことで、誰かが俺を殺してくれれば、俺は非難されないという、”罪”から逃げた。

 その両天秤のバランスが、俺をここまで生き永らえさせたのだ。

 しかしそれを、鬼神が強引にぶち壊した。


 これが、湯ノ足村のシキタリに関わったものの末路。

 鬼神という、不確定存在が書き換えた最悪のシナリオ。オニガミの介在によって、俺というコマの役割はもうじき役目を終える。

 なぜなら、これはもう”決まっていることなのだから”。

 俺は薄れゆく意識を何とか繋ぎ止め、残された力を振り絞って仰向けになった。


 首に下げてある広海とお揃いのネックレスを握った。両手で掴み、おでこに押し付ける。


 玖珠羽……。

 ごめんな、最後に泣かせちまって。約束思い出せなくてごめんな……。

 いつも笑顔で接してくれてありがとう。玖珠羽のそんな天真爛漫さが、俺は嬉しかった。

 いつまでも変わらない玖珠羽でいてくれよな……。


 和樹……。

 茜さんの気持ちに、きっと気づいてくれると信じてる。大丈夫。二人は、きっとうまくいくから…。

 豪快で、人懐っこくて、思慮深い。男として尊敬してる。励ましてくれてありがとうな、和樹。


 茜さん……。

 和樹のやつをよろしくな。いつまでも綺麗な茜さんで居てください。

 最後まで、茜さんの気遣いに耳を傾けられなくてごめん。でも、素っ気無い素振りを見せながらもいつもみんなを心配してくれる茜さんが憧れでした。


 希、望……。

 俺の馬鹿話に付き合ってくれてありがとう。

 二人と出会わなかったら、俺はここまで立ち直れなかった気がする。

 良い本を出してくれよな。二人ならきっと、多くの人を感動させられる。応援してるぜ。


 父さん、母さん……。

 なんで俺……俺だけ死にそびれたんだろうな……。

 どうして俺、生きてたんだろうな……。

 俺生きてて、良かったのかな……。


 7年頑張ってみたけど、やっぱダメだったよ……。

 ごめん俺、何にも出来なかった。ホントごめん……。


 広海――。

 やっぱり、怒るだろうな。なんで諦めたんだって。

 あぁ、怒ってくれ。こんな甘ったれ野郎を引っ叩いてくれ。

 そして、抱きしめてくれ……。


 みんな、ありがとう―――。

 こんな俺と出会ってくれて、ありがとう。

 最後まで、情けねぇ男で、ごめんな……。


「さぁ……殺してくれ」


 両手を広げ、大の字になる。俺は動かない。

 俺の視覚はすでに機能していなかった。目の前は黒。漆黒の、黒。

 目を開いているのか、閉じているのかも分からない。

 何かが俺のお腹に跨ったのが、感覚で分かった。

 でもそれは、風のようにふわりと軽くて、人の肌のように温かい。

 それが、先ほどまで恐怖していたオニガミのそれとは到底思えなかった。


 息を吸う音が聞こえた……。

 ヤツが得物を振り上げたのだろうと思った。


「さよなら……世界……」


 この世界に別れを告げる言葉を、囁いた。

 俺の声は、果たして音として発せられていただろうか。

 それももはや、どうでもいいこと……。

 二撃決殺。

 蜂の狩りは1撃では不十分。二撃目を加えて確実に殺す。足を切断され、胸を刺されるだろうことは想像に難くなかった。

 刺さる――。心臓を貫く。

 溢れ出した鮮血は、まるで彼岸花が咲くように舞い、投げ出されたぬいぐるみを染めた。

 ……そんな気がした。俺の耳も、そろそろ役目を終える。


「……ごめ…――さ―………」


 オニガミは、涙声で何かを呟いた。俺にはもう、何を言っているか聞き取れなかった。

 ただ、泣いている気がした。それだけのこと――。俺の頬に温かい何かが落ちる。

 温かい、生命の息づく証。……涙?

 そして、俺の顔全体をふわりと何かが覆う。


 ……あれ、この匂い……は……。




            そう、か……お前は―――。


  どうし、て……。




       どう、して……お前が―――。




 俺の意識は、そこで途絶えた―――。

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