<Das achte Kapitel>

「把握した。俺の調べたことは無駄じゃなかったことが証明出来て良かった」

「……そうか」


 ここまでは、あくまで確認に過ぎない。

 もちろん穴だらけではあるが、これから別の見地も交えてディスカッションしていこう。

 ここから先は、和樹にも色々と語ってもらわないとな。見地の違い。これはすべてを知る上で重要なファクターになる。

 物事を俯瞰する時、一方の見方だけで判断した場合大きな違いが生じてしまうからだ。

 例えば、ごく一般的なエンピツを想像して欲しい。真横から見たエンピツを想像した人は、長方形の先端に円錐がくっ付いた形だ、と言うはずだ。


 では、裏側から見たらどうだろう? 六角形である。

 しかし、見る角度をズラしてみると先端の円錐が隠れて長方形に見えたり、正面から見たら角が削れた円に見える。

 俺がこれから始める話はそういう類の話だと前置きしておこう。

 ただ、これが本当に『エンピツなのかどうか?』

 そもそも前提が破綻している可能性も、無きにしも非ずだけどな……。



「俺からも1個補足がある。当時、広海の失踪を許した夜。俺はあの時、何かを嗅いだ気がするんだ」

「……匂い?」

「ああ。でも、嗅いだことの無い匂いだった。気になって東京で警察関連の資料を調べている時に、元鑑識だったじいさんと話をすることが出来たんだ。守秘義務はあったが、色々話してくれたよ」


 鑑識のじいさん。監察医の姐さん。そしてもう一人……。情報源は秘匿するが、こういったバックアップは心強い。

 例えば、世の中には未知の薬物なんてのはたくさんある。それは自分が知らないだけで、存在しない理由にはならない。

 その薬物の中で毒物ではないが、即効性でほんの数秒だけ意識をぼ~っとさせる薬物があるという。

 それは本来は無臭だが、分かる人には分かる匂いらしい。

 もしもそれがあったとして、それを嗅がせることが出来たなら……。本人は一瞬の出来事だから、さも気にも留めないくらいの時間に感じるだろう。

 ましてや気づかずに、何かぼーっとしてしまったのだと思う程度かもしれない。

 その間、何か異変が起こったとしてもそれは本人にとって空白の時間。脳に記憶されない、死んだ時間になる。

 それを使えば、この失踪のトリックは崩せる……?


「んん……。さすがにそれは、どうだろうな。確かに可能性を疑ったらキリが無いが、オレには眉唾に思える。こんな田舎にそんな危ない薬物があるとも思えない」

「…そうだな。ただ、どんな薬品も少量で即昏倒なんてことは無いと思う。だからこそ、どんな薬でも大量に摂取すれば危険なのは想像に容易だ。風邪薬しかり睡眠薬しかり。そこまでの量を摂取、もしくは吸わせるガスがあったとしても供述の『一瞬で』とか『忽然と』のような制約は崩せない。その間に異変に気づいてもおかしくないからな」

「その可能性を前提で考えるなら、ドーピング検査ってのも色々な可能性を考慮して行われるんだ。オレも国体に出場した時に検査したことがあるけど、風邪薬だって引っかかる。…まぁ、あとは非合法な薬とか……突飛過ぎるか?」

「いや、ドラッグ系にも色々あるらしい。日本ではあまり顕著じゃないが、海外の事件ではわんさか出てくる」

「そこで最初に戻る。未知の薬物だろうと、違法薬物だろうと、この村には無縁だよ」


 和樹のいうとおり、これはリアルじゃないか……。

 未知の薬物なんて、疑い出したらキリがなくなってしまう。

 とはいえ、鑑識のじいさんも冗談半分だったって訳でも無かったように思う。一概には否定出来ないか……?


「あれなんかどうだ? よくドラマなんかで、ハンカチに何か液体の薬物を染み込ませて相手を気絶させるのを見るけど、あの薬品とか」

「確かに、よく使われる手法だな。ただ、推理小説やサスペンスドラマで顕著だ。つまり、フィクションなんだ。あれはクロロホルムという薬品で、毒劇物に分類される。だけど、少量を吸引したくらいではすぐ気絶ってわけじゃないらしい。もちろん、毒劇物だから大量であれば死に至るくらい危険なものだ。あと、じいさんの話だとアレは揮発性がすごく高いらしくて、ハンカチに染み込ませようものなら、襲う前に犯人が吸引して頭痛や眩暈を起こすなんともマヌケな結末が待ってるそうだ」

「……過ぎたるは、猶及ばざるが如し。だな」

「クロロホルムは抜きにしても、薬の話はそこに帰結してしまうのが悲しいな。むしろ教訓だ。薬の線は、専門が居ないと難しいか……」


 もしくは、これも受け売りだが実際に意識がぼ~っとしたりする症状に似ているのは、突発性のてんかんも上げられる。

 その中に、意識減損発作というのがあるが意識が無くなっても倒れることは少なく、発作の時間も短いため自覚症状は殆ど無いらしい。

 例えば、よく授業中居眠りと勘違いされて問題児のレッテルを貼られたりするが、これもその一つで誤解を受けやすいケースの一つ。

 本人の自覚とは無関係に……。

 傍目から見たら、ウトウトしていたり目を閉じているように見えるのだろう。それが意識を失っていると露とも知らずに。

 他にも注意力が足りない、人の話を聞いていない、それらは全て病気であることを周りの人間は知らない。学校という閉鎖環境の中では、余計に塞ぎ込んでしまうのは言うまでも無い。


「てんかん、か……。考えたことは無かったな。でも、被害者の相方がみんなてんかん患者だったっていうのもかなりの確率じゃないか? 突発性のものだったとして、そんなに毎晩続けて、別の人間が、この村でてんかんを発症するなんて……にわかには信じがたい所ではある」

「そうだな。ただ、その人の話だとてんかんにも色々種類があって、詳しく説明するには専門的な知識がある程度必要だから可能性として考慮するってことで、掻い摘んで説明してもらったんだ。意識減損発作も数ある発作の一つでしかなくて、幼少期から思春期に掛けて起こることが多いらしい。あくまで統計だが、女性に多いことも上げられる。ただ、被害者の相方は年齢も性別のバラバラ。共通項は見当たらない」


 チックやトゥレット障害もこれと同義。知らないことが弊害を及ぼし、その陰で人が泣いているのを俺たちは忘れてはいけない。


「それこそ、お前自身はどうなんだ? 翔平。自分がてんかんの発作を起こしたなら、何かしら身体とかに異変を感じなかったのか?」

「……そこなんだよ。俺自身、てんかんの話を監察医の姐さんに聞くまで知らなかったくらいなんだ。自覚も異変も、まったく身に覚えないから分からなくなる」


 余談だが、俺たちはひとえに体調が悪いときなど、『風邪』だろうと思う。

 しかし、医学的に風邪は『かぜ症候群』であって、色々な症状・疾患の総称としている。

 その原因や感染源、ウィルスなどあらゆる可能性から、あらゆる症状・疾患が考慮される。

 つまりてんかんも、そのくらいの認識はあったかもしれない。

 しかし何が原因で、どんな症状が起こって、てんかんと呼ぶのかは、釈然としない部分が多い。

 あの夜の出来事は、俺に混乱と屈辱を与えただけだった。

 あとは、交通事故の要因が不注意であるのは顕著だが、意識減損発作など、てんかん患者も多いことを忘れてはならない。

 本人に自覚があったにせよ、無かったにせよ。事故を起こし加害者となれば、それは罪だ。


 話が逸れたが、犯罪事件を追っていてもこういった事件から子供の閉鎖環境までを目にすることが多々ある。普通の精神じゃいられなかった。

 俺たちはテレビの向こう側で起こる事件を報道のニュースや新聞で目にするだろう。

 だがそれは、自分の世界とは何ら関わりの無い別世界の出来事で……。どこか他人事のように話の種にする。

 それが自分の子供だったなら……。

 それが、自分のかけがえの無い人だったなら……。

 犯人に対して殺意を抱く。目の前の世界から色が失せる。自分の身に起きたことには、狂気が心を支配する。


「宗教とは、例えそれが愛の宗教と呼ばれていたとしても、その外に居る人には、過酷で無情なものである……か」

「ん? 誰かの言葉か?」

「フロイトっていう心理学者のおっさんだよ。…俺はずっと、独りよがりだった。誰かにこの事件のことを知って欲しくて、もっと真剣に考えて欲しくて巻き込んできた。でも、俺は当事者だから諦めないが、逆の立場の人たちはそこまで必死にはなれないんだ。遠い田舎の、事件でしかない」

「……認知的不協和だな。オレたち人間は、常にバランスを取りたがる。自分が思ったことと逆の立場の人が居たとき、それは矛盾としてストレスに感じる。そこでとる行動は、二つ。自分が正しいことを証明する証拠を揃えるか、頑なに主張して他を払いのけるか、どっちかだ」

「そうだな。見えてる世界が違うのに、それを近づけようっていうんだ。無駄な努力だと言われても仕方ない」

「そこで、妥協点とか妥協策なんて言葉が生まれる。先に言っておくと、もしもオレが翔平をコーチするなら絶対に妥協なんて許さないからな。オレは嫌いだ、妥協なんて言葉。一人ででも、ここまで調べてきたんじゃないか。まだまだ見直す余地も、掘り下げる余地も残ってる。やれるところまでやってみろよ。……とはいえ、こんなときは気分転換に身体を動かして汗をかくのが一番なんだけど、まだ頭は元気だよな?」

「……お、おう」


 ここで和樹に後押しされるのは、少し意外だった。

 さりとて、この事件には大きく分けて二つの思惑が交錯している。

 犯行を知らしめたい思惑と、それを止めたい…もしくは悲しんでいる思惑。それが複雑に絡み合って、さらに別の思惑が顔を出そうとしている。

 だがその前に、もう一つ確認しておきたいことがあった。


「そういえば、ここ2,3日の事件もまったく同じなのか?ええと、新聞は……」

「ああ、7年前と全く同じ手口。同じ遺体状況。鬼神様の再来なんて言われてる」

「……遺体は両足首を切断。死因は刃物による心臓一突き。切断は殺害後と見られる。7年前と酷似した犯行に、地元のメディアは鬼神様の再来だと主張。…なるほどな。何でもオニガミ様になっちまうわけだ」

「昨夜の犠牲者は織水市の人だった」

「どうしてこう、犯人は村人以外のやつばかり狙うんだ?唯一村人なのは、玖珠羽の姉ちゃんだけだ。別にこの村は余所者に排他的って訳でもないし、むしろ観光地でもあるよな。……俺の見地から言わせてもらえば、オニガミとやらを知らしめたい犯行、と読み解ける」

「……オレは村の人間だから、それについて言及出来ないな」

「俺はそういうスキーマが嫌いなんだよ」

「スキーマ……自分の過去や経験から連想される、関連付けられたその対象。確かにそうかもな」

「A型なら几帳面、B型なら天然、O型なら大雑把。そういう概念と同じだ。不吉な事件が起きればオニガミ様、人に出来ないことならオニガミ様。誰もがそう言うから蔓延しちまう」


 俺は一つ、ため息を吐く。

 それを見た和樹は、諦めとも肯定とも取れる表情をした。


「集団心理効果―――」

「え?」

「この村の土着神だってのもある。小さい頃からオレたちはそう教えられてきた。だから、鬼神様を信じて疑わない。例えばある日、事件が起こる。それが人には出来ないような理解不能な犯行だったとする。すると誰かが鬼神様と囁く。それが次第に広がって、あの人が言っていたからきっとそうなんだと思う。いつしか、鬼神様に違いないと10人が10人同じことを口にする」


 ……なるほど。俺が思っているより、オニガミってのはここの人たちにとっては根強いらしい。

 じゃあ、そもそもオニガミって何なのだろう。

 神様なのか、鬼なのか。それとももっと違う何者か……。


「和樹、この村に古くから云われるオニガミって何なんだ? 実在したのか?」

「ああ、それなら……こいつを見てくれ。文献がある」


 和樹は持ってきた数冊の文献の中から一つを抜き出し、絵つきのページを開いた。


「古くからこの地域では、あちこちに源泉が沸いてたんだ。村の人たちはそれを温泉から、気軽に使える足湯へと変化させた。足は第2の心臓とも言われてて、足ツボなんか押すところによって、身体のどこが悪いかまで判断できるらしい」

「あぁ、それは聞いたことがある。マッサージではよくあるよな」

「そうだな。でだ、その源泉の名前は『鬼仙の湯』って云うらしい。この鬼仙の湯の効能は、所々違うが筋肉疲労、関節痛、皮膚病、冷え性などなど様々なものがあったんだ」


 鬼仙きせんの湯――。それが名前の由来。

 昔から人は、何かをあやかるという意味において神からの賜りしものと捉えることが多い。

 ここの人たちも、その足湯からの効能をあやかり感謝したという。いつしかその神は、鬼仙の名から頭文字を取り、鬼神となったそうだ。

 その文献の絵には、足湯に浸かる人々の上に、美しい女神が見下ろしながら見守っているような、そんな図が載っていた。


「なるほどなぁ……足湯の神様か。でも、それが今の畏怖の象徴みたいになるなんて、ちょっと信じられないぞ」

「……だろうな。だから、違う文献も用意した。見てくれ」


 そういって広げたもう一つの文献は、まるで正反対の絵だった。

 まさに地獄絵図……。形容し難いその惨状は鬼が人を襲い足をはね、食べているところだった。

 桃太郎のように、鬼を退治するというお話があるように。鬼に食われてしまうというお話も諸説ある。それはインパクトとしては、後者を用いたものが多い。

 村の信仰だったり、掟だったり、悪い子はいねぇがーだったり。

 前者であれば、ファンタジーとして万人受けするお話が点在する。


「そう、人食い鬼だったという説がある。逃げられないように足を削ぎ落とし、食す。そんな人食いの宴があったらしい」

「なるほど……これはヘヴィだな。つまりこっちが、今の村人にはインパクトがあって根強いってことなのか」

「そう。ただ、ある意味ここが面白いところでもある」

「面白い?」


 和樹は鼻を鳴らす。


「宗教や信仰、歴史の過去を紐解くと一つの世界に二つの解釈が同時に存在することが出来る。……まぁ、これは茜さんの受け売りだけどな」


 少し照れるように頭をかく和樹。


「シュレディンガーの猫箱か……」


 興味深い。今ではそれが畏怖の象徴として受け継がれ、村人を恐怖支配している存在、か……。

 足首を切るなんて逃げ道を立たれるどころか、人にとって歩けないことは健常者からは想像もできない絶望だろう。

 人食い鬼の宴……。その恐怖たる鬼の名を冠した事件。本当に、鬼神とやらが起こしているのか……?

 馬鹿な、リアルじゃねぇ。きっと、それに似せた狂信者が起こしているに違いないんだ。

 とはいえ、一つの矛盾が頭を過ぎる。

 これは語り継がれている話、民話や怪談などにも顕著なことだが、鬼に食われてしまったのならそのお話が残るはずが無いのだ。

 なぜなら、人はみな死んでしまったのだから。

 仮に、全てが終わった惨状を目撃した人、作者となる人『X人目』の人物はどこからやってきたのか。

 そして誰もいなくなった世界のその後は語られること無く、物語は結ばれる。

 俺が腑に落ちないのは、ホワイダニット(動機)が見えない物語を、なぜ『こいつ』は遺そうとしたかだ。


 ……話が逸れたが、もちろんこれに対する反論も少なからずあるだろう。

 古来から空想を好む人が生み出したフィクションだと言われればそれまでかもしれない。

 ただ俺は、人が関与してる全てのことには動機があると思っている。それを蔑ろには、絶対にしない。


「そういう系の話ならオレも一つ知ってるぞ。有名な話だけど、雪山で遭難した5人の登山者たちが小屋の中で一晩を乗り切るために考えた方法。それはよく考えると不可思議な現象だって思いつくんだ」


 登山者たちは天候が荒れた吹雪の中、メンバーの一人は落石を頭に受け死んでしまった。残された4人は、死んだ仲間を担ぎ小屋を見つけるが暖房も食料も無い小屋だった。

 暖も取れず、次第に眠気に襲われるメンバーたち。

 しかしここで眠ってしまえば、みんな死んでしまうのは明らかだ。

 そこで思いついた方法。それが、小屋の4隅に一人ずつ座り、順番に右の人のところまで言って仮眠してる人を起こす。

 肩を叩かれた人は、次の人の所までいって起こしてそこに自分が座って仮眠を取る。これを繰り返せば、定期的に起きることが出来て、朝まで凌げるだろう…。


 そうして、登山者たちは翌朝無事に下山したのだった。


「でも1番目の人が居なくなったら、そこはもう無人なんだ。4番目の人は目的地に辿り着いて、そこに腰を下ろす。そうすると、そこで移動する人は居なくなり全員死ぬんだよ」

「これは諸説あるが、その死んだ5人目の仲間が加わったとか、4人目は二人分移動したとか色々あるよな。その題材を扱った時代や作者によって話は変わってくる」

「まぁこの辺は茜さんの分野だからな。茜さんの方がもっと詳しいと思うぞ」

「……分かった。後で茜さんとももう一度話をしてみる」

「村の人間であるオレでも、こんなことくらいしか分からない。少しでも役に立てたなら良いんだけど」


 茜さんか……この流れなら、不自然ではないよな。


「和樹、率直に聞きたい。第6夜の茜さんについてだ」

「第6夜って言うと……緒瑠羽さんの日か。……ん? どうしてどうしてそこで、茜さんなんだ?」

「とある人からの情報で、その夜失踪した緒瑠羽さんと一緒に居た最後の人間が、茜さんだって言うんだ。何しろ第6夜と第7夜に関してはほとんど情報が無い。そんな中出てきた名前が、茜さん……。何かの因果を感じてならないんだ」

「それは……」

「俺はこの事件を紐解く最初の鍵は、茜さんが持ってるんじゃないかと思ってる……」


 俺は小声で和樹を凝視する。対して、和樹は――。


「…いや、そこはオレにも分からない。茜さんから、その夜のことは聞いたことが無いんだ。でも翔平、その情報は本当に――」


「おはよう。翔ちゃん、かっちゃん」


「っ!?」


 俺は突然の背後からの声に、心臓を鷲掴みにされる。


「…あ、もうこんにちわ、ね。かっちゃんが図書館にいるなんて珍しい」


 次に声色からその人を想像し、背筋が凍った。

 どうして、このタイミングで茜さんなんだ……?

 偶然にしては出来すぎたタイミング。


 もしかして、和樹が茜さんにも声を掛けていた?

 いや、それなら近くで話を聞いていたということか?


 矢継ぎ早に俺の頭に疑問符が満たされていく……。


「あ……茜、さん……?」


 図書館に顔を出した茜さんは、いつもどおり綺麗な着物姿だった。


『今この日、あなたがこの村に帰ってきたことを、ひどく後悔することになるから』

『湯雪祭りの前に、帰りなさい』

『これは警告よ、でないと……』


 なんだ……これ……。フラッシュバック……?




        これが、警告……?

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