第133話 中ボス突入!


 各々のテントでしっかり睡眠を取ったリュート達は、昨日確保した熊肉の余りを朝食にして腹を満たした。

 そして朝の眠気を取った後、テントを回収してついに中ボスがいると思われる部屋へ突入する事になった。

 城門のような巨大な扉が、目の前に立ちはだかっている。


「よし、行くぞ」


 ガンツが突入の合図を出す。

 見るからに重そうな扉を全員で押そうと扉に触れた瞬間、目の前に青い半透明な四角形の何かが急に現れた。


「うわっ!?」


 驚く一行。

 それもその筈、半透明な四角形の何かには、この世界の文字がぎっしりと書かれていたからだ。


「何だ、これ?」


 得体の知れない物体に、未だにおっかなびっくりな状態のガンツ。

 リュートも既にいつでも矢を放てるように、標準を物体に合わせている。

 すると、物体の正体を教えてくれる人物がいた。


「おっ、これウィンドウじゃないかな」


「う、ういんどう?」


 教えてくれたのはショウマだった。

 どうやら、前の世界でこのような物体を表示する物語が沢山ある為、初めて見るが何となくそうなのではないか、と思ったようだった。


「つまり、攻撃性はない、という事だな?」


「ああ。だからその文字を読んでも大丈夫だよ」


 ガンツは安全性を確認したが、ショウマは問題ないと返す。

 まだこのウィンドウを安全だと認識できないが、とりあえず文字を読む事にした。


「えっと、『我がダンジョンへようこそ。突然このような物体を出した事にさぞかし驚かれたと思う。が、ただダンジョンを攻略するだけではつまらないので、少し趣向を変えてみた』だとさ。えっ、これ超常的存在が出しているのか?」


「……そのようですね」


 ガンツの疑問に、カズキが頷く。


「……とりあえず続きを読むぞ。『まずは意思確認をしたい。貴様達は我の世界を跨ぐ能力が目当てで挑戦する者か? そうだった場合は"はい"を、違う場合は"いいえ"に触れよ』だとさ。当然ながら"はい"でいいよな?」


 全員が首を縦に振る。

 それを見たガンツは、迷わずに"はい"に触れる。

 感触は一切無いが、ぴこんと音が鳴ると、書かれていた文章の内容が変わる。


「内容が変わった……。『それではルールを説明する。我のダンジョンは十階層毎に通常の魔物より強い魔物を配置した。これを中ボスと仮称する。挑戦できるのは十階層毎に一組のパーティだけだ。もし討伐した場合は、以降のボス戦には参加できない』か。つまりパーティ毎に挑んで、無事に切り抜けたらそのパーティは以降のボス戦に参加できないんだな」


「……だと思うのですが」


「どうした、カズキ。何か引っかかるのか?」


「まぁ。とりあえず全文を読みましょう」


「ああ。『既にこちらで貴様達のパーティは把握している。尚、パーティの変更は不可能とさせてもらっている』。って、これ!!」


 ガンツが読み上げた次の文章には、自分達のパーティのリストが表示されていた。


・リュート

・カズキ

・《黄金の道》

・《竜槍穿りゅうそうせん

・《鮮血の牙》

・《ジャパニーズ》

・《烈風》

・《灼華》


「くそっ、リュートとカズキがソロとして認識されている!!」


 ガンツが苦虫を噛むような表情で吐き捨てる。


「しかし、どうやって俺達パーティを認識したんだ? これ、前の《遊戯者》みたいに内通者がいるのか?」


 ハリーがそのように言うと、身体が強張る《黄金の道》の面々。

 前回の《遊戯者》のダンジョンの時は、彼等のパーティに内通者がいた。

 まさか、今回も疑われるのか?

 そう危惧していたのだが、ガンツが否定した。


「いや、そうではないらしい。『我のダンジョンには、人間の記憶に接触してパーティの振り分けを認識する仕組みを作ってある。内通者がいる訳ではない、安心せよ』って書かれている」


「どういう仕組みだよそれ」


 発言した後に「何でもありすぎるだろ、超常的存在」という言葉も吐き捨てたのはウォーバキンだ。


「それは超常的存在たる所以だ、気にしても答えは出ないだろう」


「だな、ガンツの兄貴」


「さて、これが最後だな。『我は強者との戦いを望む。思う存分、心ゆくまで楽しもうぞ。準備が出来たら、下の"はい"に触れよ。扉が開く』」


 このダンジョンの支配者はどうやら戦いに飢えているようだ。

 さて、どうしようかと考えている時、カズキが手を挙げる。


「……発言してもよろしいでしょうか」


「ああ、問題ない」


 ガンツがカズキに続きを促した。


「ありがとうございます。正直予測の域を出ませんが、この文章に落とし穴があるような気がします」


「ん? 落とし穴?」


「ええ。ちょっと引っ掛かる文言がありまして……」


 カズキは語り始める。

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