第116話 懐かしい人達と再会、そして勧誘


「とりあえず、まだ協力者が確保出来てねぇ……。ハリー達とウォー達はどうだった?」


 リュートはショウマに二つのパーティを勧誘できたかを訊ねた。


「ああ、協力してくれる事になったよ。和樹さん、すまないけど協力者にも《職業付与》はやってもらえないか?」


「ええ、私も確実に元の世界に帰りたいですからね。喜んで付与させて頂きます」


「よろしく! んで、リュートの方は?」


「……あんまよくねぇだよ。皆、実入りが無さ過ぎて受けて貰えねぇ」


「……だよなぁ」


 いくら向上心が芽生えたからと言っても、ボランティアで協力してもらえる訳がない。

 ラストアタックも譲って貰えない可能性が高い、今回のダンジョンアタックは、「はい喜んで」と協力してくれる冒険者は非常に少ないだろう。

 一瞬カズキの《職業付与》を餌にしようかと考えたが、要らぬトラブルを呼び寄せそうなので一瞬で却下した。


「オラの方で明日も頑張ってみるけんど、ダメならギルドに相談してみるだよ」


「頼む。俺達はほら、流れ者だからさ、お前達位しか交友関係がないんだ」


「わかってるだ。なんとか頑張ってみるだよ」


 こうして一度解散し、また明日の夕方辺りに集合する事となった。

 ハリー達とウォーバキン達に職業を付与する作業もあるので、時間も必要だ。

 そこの説明は《ジャパニーズ》達に任せたのだった。


 ギルドの個室から出たリュートは、明日はどのように動こうかと頭で計画を立てながら歩いていると、ふと声を掛けられた。


「おっ、リュートじゃないか!!」


「ん?」


 声がした方を見てみると、何処かであったような三人組が立っていた。

 三人の顔をじっくりと見て記憶をほじくり返すと、ようやく思い出した。


「おっ、おめぇら、まさかガンツ、リック、カズネか!?」


「覚えてくれていたか、嬉しいよ!」


 二人は駆け寄り、固い握手をする。

 彼等はリュートが村を出てすぐに会った冒険者達だ。

 商人であるマクベス護衛の依頼を受けており、ゴブリンに襲われていたところをリュートが弓で助太刀したのがきっかけで知り合ったのだ。

 そこまで深い仲ではないが、短い間だが彼等には色々な事を教わっており、恩人の一人でもある。


「噂には聞いているよ、《孤高の銀閃》。たった半年で金等級まで駆け上がるなんて、やっぱりお前は凄かったんだな」


「ふふん、オラ、とっても頑張っただよ」


「ふっ、自信に満ち溢れていて、冒険者として貫禄も出てきているじゃないか」


 嬉しそうにリュートの肩を軽く叩くガンツ。


「だけんど、オラはガンツ達を一度も見かけなかっただよ。何処に行ってただ?」


「ああ、実はあれから活動拠点を王都から帝国に変えていてな。そこで武者修行をしていたんだ。だけど、おかげで俺達は今、《超越級》に成り上がれたんだ」


《超越級》。

 まさに人外と呼べる実力とギルドに認められた存在である。

 まさかガンツ達が《超越級》になっているとは、思いもしなかった。


「すっげぇでねぇか! オラ、めっちゃ尊敬するだよ」


「へっへ~ん、僕達滅茶苦茶頑張ったんだよ!」


「おお、リックでねぇか! ……ちゃんと働いてるだか?」


「何で僕だけそういう訊ね方するかなぁ!?」


 小柄で軽薄そうな印象があるリックを、とりあえず軽くいじるリュート。

 リックが袖をめくって「やるかぁ!?」と喧嘩腰でリュートに突っかかり、それを軽くいなしてじゃれ合っていた。


 そして――


「お、お久しぶりです、リュートさん」


「おっ、カズネ……随分変わっただな?」


 カズネもガンツ達のパーティに所属している魔法使いだ。

 以前会った時は素朴な印象だったのだが、髪をきちんと整えており、露出がかなり抑えられていた服装は、脚のロングスカートにスリットが入っており、見事な脚線美を描いた太腿が動く度にちらちらと露になる。

 程良い大きさの胸も、谷間が見えるまで切り込みが入っており、半年前のカズネとは雲泥の差で女性の魅力が押し出されていた。

 しかし、やはりまだ若干気が弱いのか、おどおどしているな、という感想を抱くリュート。

 これは完全な誤りで、恋焦がれていたリュートに会えたので、ただ緊張しまくっているだけである。


「そ、その……。変、でしょうか?」


「うんにゃ、とっても綺麗だと、オラは思うだよ」


「はぅっ!! あ、ありがとうございます……」


 リュートに容姿を褒められ、顔から蒸気が出る程高揚し、つい下を向いてもじもじしてしまう。


「りゅ、リュートさんも、とても、素敵に、なりましたね」


「そおけぇ? オラは特に変わってねぇと思うけんど。でも、ありがとぉ」


「ふぐぅっ!?」


 カズネがリュートの容姿を褒めたら、即死級の笑顔を向けてきた為、彼女のみぞおちに渾身のボディブローが入ってしまったかのような声が漏れてしまった。

 この笑顔、心臓に悪い。


「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅっ!」


「で、でぇじょうぶか、カズネ?」


「だ、大丈夫ですっ!」


「……そっか」


 全く大丈夫に見えないが、本人が言っているから大丈夫なのだろう。

 

 半年振りに会った知人に舞い上がり、懐かしむように雑談をしていたのだが、ふとリュートの頭の中で「彼等なら協力してくれるかも」という考えが舞い降りた。


 しかし彼等とはそこまで深い仲ではない為、協力してくれるかは全くの不明だ。

 だが、頼み込めば協力してくれるかもしれない。

 今は藁にもすがりたい思いなのだ。

 一か八か、必殺のあれ・・で頼んでみよう。


「……ガンツ達、一つ聞いて貰いてぇ事があるだ」


「ん? どうした?」


 リュートは深呼吸をして、必殺のあれ・・をガンツ達に繰り出す。


「どうか、オラを助けてくんろ!!」


 そう、必殺の土下座であった。

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