第14話 田舎者、人の悪意に触れる
高所に登れればいいのだが、木と違って住宅だと登る為の足を引っかける場所や登れそうな場所がない。
都会の綺麗な建物が、今の状況においては非常に不利な状況に働いていた。
(くっそぅ。家の屋根に登れねぇ……。地上でやるしかなさそうだべぇ)
リュートは内心舌打ちした。
矢筒を叩いて矢の本数を確認する。
音からして木の矢は四十~四十五本、鉄の矢は節約しているから三十本あるようだ。
沢山収納できる矢筒を持ってきてよかったと安堵した。
(とりあえず、この家に入ってちょっと様子見るべか)
音をたてないように近くにあった家の扉を開き、身を屈めて侵入した。
全身を研ぎ澄まして人の気配を探るが、どうやら誰もいないようだった。
身を屈めた状態でゆっくりと建物を散策すると、リビングと思われる場所でおぞましい光景が視界に飛び込んできた。
そこには若い女性と、その女性の子供であろう二人の亡骸があった。
二人とも首を斬られているのだが、その後に恐らく二人の遺体を好き勝手したのだろう。
子供は両目に短刀が二本突き立てられていて、女性に関しては全裸で白い体液が体中にかかっていた。彼女の遺体からはイカ臭い香りがした。
殺した後に慰み者にされたのだろう、死体にはすでに抵抗がないリュートも若干気持ち悪くなってしまった。
(なんだこれ、都会ってこんな事起こるんか?)
次に建物の二階へ向かう。
二階は寝室になっていて、そのベッドの上には恐らく一階の女性の旦那だろう男性が惨殺死体が置かれていた。
同じように首を斬られているのだが、腕を肩の部分から切断されていたり、男の股間部に斧を振り下ろして突き刺さったままの状態だった。
純白のシーツが、男性のあらゆる場所から出ている血で赤く染まってしまっている。
(なんだこれ、なんだこれ、なんだこれは!?)
ついに胃液が逆流してきた。
リュートは声を出さないように出来るだけ努めながら、胃液を床にぶちまけた。
胃液が喉を軽く焼いてしまい、咳込みそうなのを腕で抑えて音を小さくして咳を出す。
何の為にこんな惨い事をするのだろう?
必要最低限しか殺害しないリュートにとって、このような惨殺する理由が全くわからなかった。
獲物に関しても村が必要としている分しか確保しないし、密猟者を殺す際でも一撃で仕留めるようにしていて、不必要に苦しめる事は一切しない。
だから何故このような事をするのかが理解出来なかった。
吐いた事によって気持ち悪さが無くなって、何とか動けるようになった。
思考もクリアになってきたおかげで冷静に判断出来るようになってきた。
この町の静けさからして、他の建物も同様な状態なんだろうと予想した。
(……ち~っと、ここの輩は許せねぇっぺよ)
襲ってくるようなら、遠慮なく
同じ人間だろうと容赦しない。
ここを襲った連中は、魔物以下の只の畜生だ。
リュートは静かに怒りながら、二階の窓の淵から他の建物の様子を覗き込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます