烏団町役場に現れる
烏団の六人は町役場の受付に行くと、烏親方が受付嬢に名刺を渡した。
名刺には研究所の住所や電話番号、そして、
『気象庁異常気象研究班_外郭団体特殊調査班電子工学研究部天文現象及び人間工学及び特殊機材研究所所長 烏 破李阿』と書かれてある。
「先日アポイントを取らせていただいた…」
烏親方が自分の肩書きを言おうとした時、助手の酒田がすかさず準備にはいった。
なぜなら酒田には役目があるからだ。
それは、『気象庁異常気象研究班』まで言った時『とは無関係の』と言わなくてはいけない。
実は名刺にも虫眼鏡でみないとシミとしか認識できない大きさの級数で小さく小さく『とは無関係の』と書かれているからだ。
烏親方は、育ちが上品なので、嘘が嫌いだった──つまり気象庁とは何の関係もない。
「気象庁異常気象研究班…」
烏親方が自分の肩書きを喋りはじめると…
「とは無関係の」咄嗟に酒田がつぶやいた。誰にも聞こえ無いように…烏は何事もなかったように続ける。
「外郭団体特殊調査班電子工学研究部天文現象及び人間工学及び特殊機材研究所所長 烏 破李阿です」
「はいお聞きしております。気象庁異常気象研究班」
受付嬢がそう言った時も分からないように酒田は呟いた。
「とは無関係の」
受付嬢は躊躇なく続ける。「外郭団体特殊調査班電子工学研究部天文現象及び人間工学及び特殊機材研究所所長 烏 破李阿様ですね、本日14:00のお約束ですね、神馬町長は町長室におりますのでご案内いたします。ニ名さまとお聞きしておりましたが六名様ですか? 」
「いえいえ気象庁異常気象研究班…」
「とは無関係の」酒田が誰にも聞こえないように呟くと、烏親方が続ける。
「…外郭団体特殊調査班電子工学研究部天文現象及び人間工学及び特殊機材研究所の構成員1、2、3、4は用事がありますので、気象庁異常気象研究班…」
「とは無関係の」酒田が小声で言った。
「…外郭団体特殊調査班電子工学研究部天文現象及び人間工学及び特殊機材研究所所長の烏 破李阿本人と気象庁異常気象研究班…」
「とは無関係の」
「…外郭団体特殊調査班電子工学研究部天文現象及び人間工学及び特殊機材研究所副所長の助手の酒のみだけでございます」
「しょ、所長、酒田ですってば。ぶつぶつぶつぶつ…それに『さ』しか合ってねーし」むくれながら酒田が言った。
「ではご案内致します」
「構成員1、2、3、4は、連絡があるまで指令を遂行せよ」
『はい』
礼儀正しく元気に返事をすると構成員たちは役場の出口へ向かった。
なんともめんどくさい人たちである。
しかし、礼儀正しい。室内ではユニフォームともいえるシルクハットを脱ぎ、黒いマントも手に持っている。
でも、着ているものが白いワイシャツに黒いスーツなので印象はたいして変わらない… だが、揃いの赤いネクタイは異常に目立つ。
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