良くないものってなんだ?

「どうやらこの町になにやら良くないものが入り込んでいるらしい」

「良くないものですか? 」李さんの表情が変わった。

 ごんちゃんは続ける。

「うむ、鬼王様のお使いがその存在を見失ったそうだ」

「なんと! 」アメリカ人のボブが声を上げた。

「鬼王様のお使いが見失うとはよっぽどの事ですな」四賢人の一人、インド人のグンドルフさんが感慨深げに言った。


「不審者らしき人物はみてないなぁ」

「確かに、俺も見てない」

「私もだ」


 そこにいた全員が誰も見ていないと口々に語った。


 全員の顔が酔っ払いから一転して、鬼王神社影の氏子衆に変わった。鬼王神社影の氏子衆とは、ごんちゃんを総隊長にして、2000人ものメンバーがいる少々実践的な防犯協会だ。この会場にいるのは全員その一員で、組み分けされた部隊の部隊長でもある。

 鬼王神社影の氏子衆は──400年もの間脈々と続く組織で、影になりこの町の治安を守ってきたのだ。

 そのため鬼王様が、特殊な力を持ち、その力を受け継いだのが、神馬一族である事は、部隊長たちは知っていた。


『国際会議』とは、実は、部隊長たちの交流の場でもあった。


「うむ、それらしき人物は、誰も見ていないのだな」ごんちゃんは真剣な顔でそう言った。


 にゃー

 ──ボスが鳴いた。


「おばあちゃん、黒い六人組だっていってるよ」ボスの言葉を聞いたももが言った。


「えっ」


 にゃー


「時々しか見えないんだって、だからボスも大変だったって…」

「そうなの」

「うん」

「あなた、六人組の黒い集団らしいわ、今さっき鬼王様から…」

「そうか、みなさん六人組の黒い集団らしいので、見かけたら連絡を取り合いましょう。それと通常パトロールの強化をお願いします」ごんちゃんがそう言った。


『了解! 』


 全員の声が揃った。


 しかし、実はここにいるほぼ全員が会った事があった、ただ、誰も覚えていないだけだった。


 六人組の黒い集団──『からすだん』と自分たちで言っている、が、この町に来たのは八月に入ってすぐの頃、子どもたちが夏休み真っ盛りの時だった。

 物語りは少し前にさかのぼる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る