国際会議にボスが来た

 しばらくすると、茂が芝生広場に入ってきた。盛り上がっているみんなと軽く挨拶を交わすと上座に座っているごんちゃんの元へと行った。


 ──すりすり…

 あれ、なあに? さくらが足首に違和感を感じて足下を見ると、岩石のような厳つい顔をしながらも高貴な雰囲気を漂わす真っ白な猫、そう、ボスがすりすりしていた。


「ボスにゃーだ」


 おなかすいた…なんかくれにゃー

 ボスは不審者の張り込みで疲れていたのだ。

「ちょっとまってて」さくらはボスを膝に抱っこすると、隣に座っているももに耳打ちした。

「ねえお姉ちゃん、ボスがお腹空いたって」

 と、ももはさくらの膝でフニャフニャしているボスを見た。

「あーボス、久しぶり」


 ふにゃーこんばんにゃー


「ちょっとまってて」


 ももはそういうと隣に座っていたすみれおばあちゃんに耳打ちした。

「あのねおばあちゃん、ボスがきたよ」

「ん? どこに、ボスって鬼王様のお使いだろ」

「さくらのお膝の上、お腹すいたって、言ってる」

「えっ! ももはボスの言葉が分かるのかい!? 」

「うん、さくらも分かるよ」

「そうかいそうかい、猫又と波長を合わせられるのかい」

「えへへ」

 にゃー、ボスが鳴いたがすみれおばあちゃんには「にゃー」としか聞こなかった。

「なんでもいいから食べさせてっていってる、ね、さくら」

「うん」さくらはニッコニコだ。

「はいはいわかりました、後で出そうと思っていた、とびっきり上等なお刺身を差し上げましょう、ね、もも」

「うん」


 ──シュパッ!


 次の瞬間冷蔵庫から、近江のマグロの太い塊が取り皿の上に現れた。勿論赤身だ。すみれおばあちゃんはそのお皿を取ると、ももに渡した。

「鬼王様のお使いです、粗相のないようになさい」


「はーい」


 ももがマグロの載ったお皿を芝生に置くとボスはさくらの膝からおりてがっつき始めた。


 にゃー


「恐れ入りますっていってるー」


「いつもありがとうございます、これからもよろしくお願いします」

 すみれおばあちゃんがうやうやしくにこやかに応えた。


 一方、ごんちゃんは茂の話しを聞くやいなや表情が引き締まった。


「なーみなさん、ちょっと聞いてほしい」

 ごんちゃんがそう言うと、その場にいた全員がごんちゃんに注目した。


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