国際会議がはじまった
この町は誰が来てもこばば無い、だが守るべきルールが二つある。ごんちゃんが町長になるずっと前から、代々の町長、その昔は領主であった、神馬家が決めたたった二つのルールを守ればいい、出身や人種など関係ない。
その二つが──
『町は家族』
『子どもは町が育てる』
『国際会議』
それは1ヶ月に一度開かれる。日本人も含めた各人種の代表が集まり、文化の交流と文化の違いを超えて家族になる為に話し合う会議──簡単に言えば、人種を超えた飲み会だ。誰もがみんなこの日を楽しみにしている。
だって、みんな、一番好きなのがすみれおばあちゃんの作る和食なんだから!
五十人が超長テーブルを挟んで、超長椅子に座った。まとめ役のごんちゃんは上座のテーブルの端に、自分用の椅子を持ってきて座っている。
『かんぱーい』
──この町の公用語である日本語でごんちゃんが音頭をとって、乾杯が行われた。
超長椅子の一番端にいちごを抱っこしたかえで、隣にさくら、もも、すみれが座っている。ももとさくらはジュースで乾杯した。
「じゃーみなさん、この町の新しい家族、孫のいちごでーす」
ごんちゃんが乾杯が済むとそう言った。
おおおー、パチパチパチパチ!
──拍手喝采だ。
「ありがとうございます、みなさんよろしくお願いします」
かえでが抱っこしたいちごをみんなにみせた。
「おめでとう」
──いろんな国の言葉でおめでとうが言われるが、ももとさくらにはちんぷんかんぷんだ、「えへへ」笑うしかない。
かえでとすみれとごんちゃんも同じようなものだが、一応分かったフリして頷くのだった。
するといちごが嬉しそうに目をあけた、そして…
「きゅふ」
小さく笑った。
「おおーべっぴんさんだ」李さんが大声をあげた。
わはは!
そこにいた全員が嬉しそうに笑った。
──と、ことことこと…テーブルにあるお皿が料理ごと、ことこと音を立てて揺れた。
「えっ」
ももとさくらがそれに気がつくと、
「くふ」
いちごが再び笑顔になる。
『あはは! 』
顔を見合わせたももとさくらは大笑い。
──そろーり、そろーり…テーブルに置かれた全てのお皿が浮かび上がる。1ミリ2ミリ3ミリ…1センチくらい浮かんだところで、かえでが気がついた。
「だめ、だめ、いちごちゃんだめ」小さな声でいちごにいった。
「きゅふ」いちごは再び笑顔になると浮かんでいたお皿が、カチャン…小さな音を立ててテーブルに戻った。
『ふふふ、あはは、くくく…』ももとさくらは笑い声を堪えていた。
「それじゃみなさん、いちごはおねんねの時間なので失礼します」かえではそういうとスタコラサッサ会場を後にした。
「もも、さくら、いちごちゃんなんかやった? 」二人の様子に気がついたすみれおばあちゃんが小声で言った。
『くふ、な、なんでもない、うふふ…』
「そう、なんでもありありね」
「う、うん」
「まあいいわ──さてみなさん! 今日はいっぱい差入れもあるし、おばあちゃんがんばっちゃったから、お腹いっぱい食べてね」
『おー! いったっだっきまーす』
宴会が始まった。
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