神馬不動産にて
学校帰りに幼稚園でさくらのお迎えをしたももは神馬不動産に来ていた。応接セットのソファに座って、パパの茂と話をしている。
この頃ママのかえでがいちごちゃんと「よっ、はっ、とっ」なので、おやつはパパのお店でとるようにしている。
茂もそれが少々嬉しくて、毎日おやつの準備に余念がない。
今日もたった一人いる従業員の刈谷は外回りで茂が一人で店にいた。
「パパー今日のおやつなぁに? 」
さくらがニコニコ顔で聞いた。
「おいしーのだあ」
「えへへ、楽しみー」
「ももサイダーあるよ、冷蔵庫から持っておいで」
「はーい」
ももは店の奥の冷蔵庫に行った。
「そうだ、パパ、今日ね幼稚園行くとき、狸と狐にあったの、なんだか言葉しゃべれるの」
「え!? 」
「えーとね、えーとね、ポン、なんだっけ…えーっと」
と、そこにサイダーのペットボトルを持ったももが戻り、ソファーに座った。
「ポン三郎とコン姐でしょ」
「そうだ、それそれ」
「もしかして妖狸のポン三郎と九尾狐のコン姐か!? 」
「えーパパ知ってるの? 」
「鬼王様のお使いだと聞いた事があるが、会った事はない」
「ふーん」
「お前たち、もしかして妖と話せるのか?」
『うん! はなせるー』
「(絶句)」
「前にボスが教えてくれたもん」
ももが言った。
「ボスってあの猫又のボスか…」
「やっぱ知ってる? 」
「猫のおやすみ通りで、子どもの頃良く見かけてたからな、話したことはないけど」
「ゆーめーじんなんだ」
「違う違う有名猫! 」
ももが楽しそうに言った。
「…」
「そうそうその二人がパパに言付けって頼まれた」
「言付け…? 」
「えーっとね、良くないものがこの町に来ているから気をつけてっていってた」
ももが答えた。
「良くないものってなんだ」
「えーっとね」
『分かんなーい』
「…そうか、後で鬼王神社に行ってみる」
「うん」
ぎゃんぎゃんぎゃん!
キキー!
店の前で何かがとまった。
三人はドアを見つめる。
ガチャガチャ!
ガラン!
店のドアを開けて入って来たのは、藍色のヘルメットを被り、藍染の着物を着て、白足袋に下駄のおばあちゃんだ。
さっ!
黒い革手袋で、ヘルメットのシールドをあげると手に持ったビニール袋を差し出した。
「ふふ、もも、さくら、おやつがきたよ」
「うめばあちゃんだ! 」
「うめばあちゃんのお煎餅だーいすき」
さくらはそう叫ぶと、ドアにかけて行った。
「そうだろそうだろ」
ワン!
うめばあちゃんの後ろからポチが尻尾を振って飛び出すと、さくらに飛びついた。
「きゃーポチ、久しぶりですねー」
店の前には愛用の電動車椅子と電動機付きスケボーが停められている。
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